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ちしきの金曜日
 
ダンメンを鑑賞する
こういうやつ


ふだん見落としている街の素敵なもの。一見なんてことないつまらないものに見えるけど、ちょっとした鑑賞のコツがわかると違って見えてくる、そういう瞬間を ぼくは愛していてそういうものをいつも探している。

そういうもの自分で発見するのも楽しいけれど、人に教えても らうのもとても楽しい。今回は「町屋が壊された後に隣の建物に残る跡」を収集・分析している方にその喜びを教えてもらったので、それをご紹介する。いつに もましてわけわからない喜びですが、まあちょっと見てみてくださいよ。素敵だから。

(text by 大山 顕



■「ダンメン」とは

言葉で説明しても分からないと思うので、どういうものかまず写真で見ていただきたい。


投影図のように残った町屋の跡

どうだろうか。ぐっとこないだろうか。こういうものがたくさんあるのだったら収集して回りたくなら ないだろうか。ならないかふつう。いや、なろうよ。長い人生だもの。

このように取り壊された建物の跡が隣の建物 の外壁に残っている様子を「ダンメン」(断面)と名付けて収集・分析しているのは吉永健一さん。一級建築士で「吉永建築デザインスタジオ」の所長さんであ る。だいじょぶか、その会社は。


筆者(左)に断面の鑑賞法を指南する吉永さん(右)
吉永さんのサイト。「ダンメン」がずらり。

吉永さんは「キョート*ダンメンロシュツ」というサイトで京都における町屋の「ダンメン」を紹介している。その数なんと約2500件。だいじょぶか、吉永建築デザインスタジオは。

そんな吉永さんに実地でダンメンの鑑賞をご教授いただくため過日京都へ赴いた。期待に胸が高まる。「そうだ、京都、行こう」とはよく言ったものである。

 

■ところでなぜ京都の町屋なのか


京都の市街地地図にダンメン鑑賞でめぐったコースを書き込んでいる

みっちりと建っている京都の町屋。右の建物がとり壊されたら、赤い部分にそのダンメンが残るはず。
はやく取り壊されないですかねえ。

町屋とは簡単に言うと町中にある店舗と住宅を兼ねた古い住宅のこと。その建物の特徴は間口が狭くて細長い奥行。そして隣家と外壁が接するように隙間なくみっちり建てられている。だから取り壊されるとその跡が隣 の外壁に残るのだ。

京都の町屋といえば古都の街並みを構成する要素としては欠かせないもの。その風情ある建物にダンメンを見いだすとは、そのオルタナティブなナナメっぷりが小憎らしい。と思っていたらそういうことではないようだ。むしろ京都の町屋だからこそダンメ ンなのだとか。

「東 京にも大阪にも町屋はあるけど、京都の町屋はそのなかでも極端に間口が狭くてものすごく細長い。いわゆる『ウナギの寝床』って言われる、まさにあれ。で、その奥の方にどんどん増築したり、ひっそりと中庭(町屋はみっちりくっついて建っているので室内に光や風を取り込むためにたいてい中庭を持っている)に増 築したりしてる。でダンメンにはそういう跡が地層のように残るんですよ」

つまり、京都の町屋にこそダンメンは光 り輝くのだ。だいじょうぶか、吉永建築デザインスタジオは。


地層のように現れる京都町屋ならではのダンメン(「キョート*ダンメンロシュツ」より)

 

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