■消えゆくダンメン
ここにあったんです、と吉永さん。
「ダンメン収集の難しさは、なくなってしまうということです」と吉永さん。今回のツアー中も何回か「あれ、なくなってる」とがっかりする場面があった。
もともと取り壊したあとにできるダンメン。そこに新しく建物が建ってしまえばもう見ることはできなくなるし、ダンメンを持った建物のほうが取り壊されることもあるだろう。ダンメンとは基本的に「消えゆくもの」なのだ。 ぼ くも団地を写真にとって集めているけれど、建築物を写真に収めて回るというのは、いわゆるコレクションとはちょっと違う。写真というのはそれ自体コレク ションするに足るものになりうるが、本当はダンメンそのものを持ち帰りたいんじゃないだろうか。吉永さんのやっていることは「記録」とも「コレクション」 ともちがうなにかもっと別なもののような気がした。
■ダンメン方丈記
「でも、一方でまだまだダンメンは増えてる。町屋が取り壊されればそこにいままで見れなかったダンメンが現れるわけですから」
生まれては消えていくダンメン。それは言うなれば「よどみに浮かぶうたかた」のようなものか。京都だけにダンメン方丈記だ。
すっかりダンメンに魅せられたぼくは吉永さんのその言葉になにか深遠なものを感じかけたが、よく考えてみればダンメンのはなしだ。人は年をとるとどうでもいいものに人生訓のようなものを見いだしがちなので気をつけたいと思う。