ニンジン、しいたけ、糸こんにゃく、ゴボウなどの具が、醤油のスープに浮いている。肝心のせんべいは、割られた状態で底の方に入っていた。
知らない人が見たら「ちょっと風変わりなワンタン?」と思うような風貌である。せんべいは汁を吸ってシナシナの状態だが、溶けてはいない。さっそく食べてみる。
これは…。他に似たような食べ物がなく、何かに例えるのが難しい。フニャッとしてるのに芯が残っていて、せんべいの場所によって歯応えが微妙に違う。真ん中は柔らかいのに、端の方はモチッという感じだ。
なんせ初めての食感なもので「おお?」だの「ん?」だの「ほほう」だのと思いながら食べているうちに、あっというまになくなった。あっさりした醤油のスープが、とてもおいしい。思わず「もう一杯ください」と言いたいところだが、なんとか我慢。他の店のも食べて数をこなさなくては。
お店の方に「初めて食べましたがおいしかったです」と伝えると「あらー、良かった。どちらからですか?」「秋田からです」などと旅先ならではの会話に発展、これ幸いとせんべい汁についての話を伺おうとしたところで、お客さんが入ってきてしまった。仕事の邪魔をするわけにもいかず、店を後にする。
なんとなく、知り合いの家にお邪魔してゴハンを食べさせてもらったような、そんな優しい味だった。
よし、初体験は無事に済ませた。これなら1日に5〜6杯は食べられる。さっそく次なる店を目指そう。 |