あの店は、もつ焼き屋だった
駅から5分ほど東に歩くと、ガード下に赤ちょうちんが見えてきた。 ボクが電車の窓から見たのはこの店だ。 看板には、「もつ焼きあぶさん」とある。 あたりには、調理場からおいしそうな炭火焼きのにおいが漂っている。 初めての店に一人では入りづらいが、思い切って入店してみた。
豚軟骨に圧倒される
ちょっとしたオープンカフェ(あるいは立ち飲み屋)風になっている店内のカウンターの丸イスに腰掛けると、金髪の店員さんが注文を取りに来た。 この人が電車に手を振っていた店員さんだろうか。 ビールを注文し、おすすめの豚軟骨というのを焼いてもらう。 ビールを飲みながら待っていると程なく、豚軟骨が焼き上がった。
煮込んだ豚軟骨は以前に食べたことがあったが、くし焼きの豚軟骨は初めてだ。 見た目はややグロテスクだが、非常にうまい。 旅先で偶然入った店で、こういうおいしいものが食べられるとうれしい。
旅先じゃないけど。
すっかり上機嫌
お店の看板でもある「もつ焼き」もとってもおいしくて、ビールがどんどん進む。 おいしい料理とおいしいお酒。
いやー、旅っていいよな。
誰に手を振る
気分よく飲んで食べているが、そうだ、肝心なことを忘れていた。 電車に向かって手を振るのはなぜかを聞きたいのだった。 金髪にピアスという見た目とは裏腹に、とてもフレンドリーな店員さんに思い切って質問してみた。 「どうして電車に手を振ってるんですか?」 「お客さんを呼ぼうと思って。手を振ってると、それを見たって言うお客さんが来てくれるんですよ。この店の人は何で手を振っているんだろうって。」 なるほど、うまいこと考えるものである。
店長のこだわり
店長さんに、この店の一番のこだわりを聞いたところ、返ってきた答えが、 「こだわりは特にないですけど、サワーのジュースがポンジュースだってところっすかね。」 だった。 それは確かにこだわりだけど。
という店長はとても照れやさんのようで、そのあとはにかみながら、 「お客さんの笑顔を思い浮かべながら料理することですね。」 と。
そんな暖かい店長の人柄からだろうか、お店の雰囲気もとても良い。 たっぷり飲んでたっぷり酔っぱらってしまった。
もつ焼きあぶさん田無店
住所: 東京都西東京市南町3丁目3-1 電話: 042-464-1180 営業時間: 16:00-24:00くらい
※お店で「デイリーポータルZ見た」と言うと、酎ハイの焼酎を濃くしてくれるそうです。
ホテルに帰った
この日はたくさん飲んでかなり酔っぱらってしまったのだが、そんな状況でもうっかり家に帰ってしまわずに、ちゃんとホテルに戻れたのは、本当に奇跡に近い。 これも、旅気分特有の緊張感のなせる技ではないだろうか。
この日はとても楽しい一日で、近所の魅力も発見できたが、何でホテルに泊まったのかわからない。 二日酔いでふらふらしながら徒歩で家に向かったが、つらくてむなしくて途中からタクシーに乗った。 やっぱりホテルに泊まる必要はなかったと思う。