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ロマンの木曜日
 
町中を猛ダッシュで。
どこから見ても猛ダッシュ


子どもが町中で、猛ダッシュしている姿を見かけることがある。
急いでいるのかもしれないが、なんとなく意味はないように思う。
そのたびに私は、歓声をあげたり声援したりジャマをしたりするのだ。

きっとあれは、うらやましいのではないかと思うんだ。

なにかに遅刻しそうなとき、私たちは走るが、はたして本当に猛烈なダッシュでもって走っていると言えるか。
心の底から、真剣に、全力で疾走していたと言えるのだろうか。

私には、言えない。それはくやしい。

その昔、陸上部だった私と友人の2人で、町中を猛ダッシュでかっ飛ばしますよ。

(text by 土屋 遊



アスファルトでタイムトライアル

かつて「猛ダッシュ」は、私の日常だったように思う。
陸上部だったから、だけではない。
ほかにも

・登校途中の地下鉄までの猛ダッシュ
・駅から校門までの疾走
・学食の席取り
・グランドの常連、露出狂の男を追う
・校内で生活指導の先生から逃げまわる

など、実用的なトレーニングライフを送っていた。

死活問題でもあったため、おかげで足は速くなった。

あれから20年。
旋風を巻き起こすと言われた私の俊足は健在だろうか。
そして、「腹で走る」と言われていた同部員、伊藤さんの突進力は衰えていないか。
たしかめるために、路上タイムトライアルに繰りだすことにした。

記録は目的ではないが、猛ダッシュの目安にはなるだろう。

どんな逆境においても中央を陣取る伊藤さん(中央)
他人のジャマに全力を尽くす部長こと土屋遊。成長なし。


おーい!こんなに遠いぞおー

驚異の50メートル

私のベストタイムは公式記録で100mが12.6秒だ。
伊藤さんは13秒前半。(覚えていないらしい)

意気込んでアスファルトにメジャーをおろしたのだが、50mのところであまりの長さにおどろいて足を止めた。

私は200m走者だったし、50mなんてスタートダッシュそのものだったのになんだこの長さは。年をとるということは、距離も伸びるということか。互いの目を疑い、その疑いはメジャーにも向けられた。

「このメジャー狂ってんじゃないのー?」

そして私たちは、50mを走ることに決めた。
100mの半分だし。


時速19km 9.1秒(50m)
20年前 100mに青春をかけていたため失念
時速およそ20km 8.96秒(50m)
20年前 6.8秒

アスファルトの上で記録をとるなどはじめての体験。それにしても、数字を確認した瞬間はかるくショックだった。
かつての部長とサボり部員の伊藤さんとの差が、0.14秒しかないことも悲しい。

地面を蹴りあげる感触はそう悪くはなかった。ただ、一本目にしてすでに全身が痛む。とくに太モモには筋肉が裂けるのではないかと思うほどの痛みがあった。
ストレッチも準備運動もなしにいきなり走るのだから肉離れをおこしてもおかしくはないかもしれない。
でもガキのダッシュに、準備体操などあるはずもない。これならいけそうだ、そんな気もした。



飛んでる時間が長い人、ゼンマイ仕掛けの人
きっちりと50m(5mメジャー×10)

対極のスプリンター対決

伊藤さんは元気だった。
午前中からはりきって準備していたこともあるかもしれないが、息も私ほどきれていない。

そんな伊藤さんと私の走法は対極にある。

少し専門的なハナシになるが、伊藤さんの場合は「ピッチ走法」といって、足の回転が速い。
ピーク時はゼンマイ仕掛けのオモチャのように走っていた。

私は「ストライド走法」だ。歩幅が大きく、滞空時間も長い。
細かなケリが必要なスタートは苦手だが、ラストは強かった。

この私の走法は人混みではたいそう不利だ。でも反復横跳びはプロフィールに載せるほど自信がある。

私のバネと伊藤さんのゼンマイパワー。

次のステージではどちらが有効なんだろう。

 


買い物客の多いアーケードの商店街パールセンターに向かう。
私たちは「犯人を追う女刑事(デカと読んで下さい)」の設定で猛ダッシュをしなければならなかった。歩行者から苦情がこないための配慮だ。

「こら待て〜」
ではわざとらしく語尾も弱すぎる。
短距離走者は走っている間、一度も息をしない(100mまで)ので、これではあとが続かない。

検討の結果、
「いたぞっ!」
をスタートの合図とした。
これはかなりいいダッシュが期待できる。

 

以下の二枚はマウスオーバーでゴール記録が出ます。


パールセンター
パールセンター

ネクストステージすずらん通りはゆるいカーブ。
人も少なく、走りやすかった。
伊藤さんが途中からいきなりパフォーマンスゴールをみせたので、それを目撃した私は全身の力が抜けた。

そうだった。試合にはなによりも適度の緊張感とリラクゼーションが大切だったじゃないか。


 

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