簡単に説明

今回の実験はペーパークロマトグラフィーというものだ。
なんだそりゃ、と思われるかもしれないが、とても簡単な原理なのだ。なにしろ原理は障害物競走なのだから。

網の目をくぐりながら進むとすると、小さい物ほど早く、大きい物はつかえながらゆっくり動く。
それを分子サイズでやるのが分析なのだ。
今回の場合は、水彩ペンの色の分子が水で移動し、紙という障害物を通りながら大きさ別に色分けされるというものだ。

つまり、紙に色をつけ、水で滲ませて色の移動を見ようというもの。街でみかける雨で文字が崩れた看板にも科学が潜んでいるのだ。

紙は何が良いか

程よく水をしみ込ませ、網のように色をふるいにかけられる紙となると何が良いだろう。
実験で使う濾紙が適しているのだが、家にそんなものないし。

• コーヒーフィルター（確実なセンとして
• 紙ナプキン（吸水性という点で採用）
• レースのお菓子を乗せる紙（見た目に華やかだし）
• キッチンペーパーもよかろう。
• 画用紙（印刷もしたいが、印画紙より水を吸いそうなので）

いざ実験

まずは紙ナプキンでやってみよう。
広げたナプキンに放射状に色をつけ、真ん中に水を垂らす。
本当は端を水につけて、水が登ってゆくのと同時に色が移動するのを観察するのが良いのだが、紙が丸く、折り目があるのでこの方法にした。

もう一度最初の色と移動後の色を見比べてみよう。

右上の黒は複数の色が混じっており、その中の青は移動しにくく、赤がよく移動しているのがわかる。
隣の紫や青もほとんど移動しておらず、動きにくい色素ということがわかる。
右下の青〜緑のゾーンでは、青は移動しにくく、黄色がよく移動している。緑になる程青が少なく、黄色が動いていて色が薄く見えている。
左側では、右側のことを踏まえてみると、黄色や赤がよく移動しているのがわかる。

つまり、色によって移動距離が決まっており、複数の色素でできた色も、こうするとその元の色の移動距離によって何色で出来ているかがわかるのだ。

しかしもっと激しく、もっときっちり色が綺麗に分かれないものか。
違う紙で試してみよう。

レースペーパー

というわけで、次、お菓子を乗せるレースの紙。
これも放射状に色を乗せて、同じように真ん中に水を乗せる……のせ……

えー、叫んでも良いでしょうか。

水を！　吸わない！　成り立ちません！

……ふう。深呼吸したところで、さくさくと次に進みましょう。
なにしろ目標はモナリザの色を分けることですから。

お次はコーヒーフィルターで

濾紙に似た、この実験には最も適している紙だ。期待も高まる。
方法も基本通り、下から水を吸い上げるようにした。

しかしなぜこうも実験とはうまくいかないものなのだろうか。
まず水の入ったグラスを倒した → やりなおし
色を付けたフィルターをグラスに落とした → やりなおし

上で「実験とはうまくいかないもの」なんて大きく出ているが、単に自分がドジだということもわかっている。それくらい愚痴をこぼしてもいいじゃないか。
で、やっとできたのが下の写真だ

この左端の黒の暴走ぶりはどうしたことだろう。紙の作りの問題か、何かからの逃走か。

先の紙ナプキンでもわかっていたように、黒は多くの色が混じってできており、青い色素が移動しにくく、上の方にほんのり赤い色素が移動している。やはり青は移動しにくく、緑と黄緑では緑と黄色の色素の量が違うことがわかる。やはり黄色は移動しやすく、隣のオレンジは彗星のように伸びている。赤についてはほぼ単色で作られていることがわかる。

はたしてモナリザはどんな結果になるのだろう？