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はっけんの水曜日
 
腐るか否か、手作りナンプラー
この瓶でナンプラーを仕込みます


 前々から果実酒の瓶を使って、なにか時間が掛かる物を作りたいと思っていました。そんなおり、今年も梅酒の季節がやってきました。行きつけのスーパーでは入り口から果実酒用の瓶がお出迎えしてくれます。

 「今年こそ何か作ろう」。そう思いました。だから、ナンプラーを仕込む事にしました。

 今回の記事は未完です。結果が出るのは1年後です。今回はその結果に向けての導入編となります。

(text by 松本 圭司

ナンプラーとは?

ナンプラーとは、魚の内臓や身を発酵させて作る調味料です。作られている地域によって材料や製法、名前は異なりますが塩漬けの魚を発酵させ、その液を長期熟成させて作る部分は共通しています。

日本では「はたはた」から作る秋田のしょっつるが有名。東南アジアでも広く作られ、ベトナムではニョクマムと呼ばれ、タイではナンプラーと呼ばれています。

それらを総称して、魚醤と呼びます。ナンプラーは魚醤の一種です。


タイフードフェスティバルで買ったナンプラー

ろ過、熟成されたナンプラーはこの様に澄んだ赤褐色の液体になります。美味しそうですね、美味しそうです。

 

ここで場面は実家に飛びます

僕の実家は、千葉県南房総は鴨川市にあり、干物屋を営んでいます。父で3代目か4代目の、それなりに歴史のある干物屋です(松本商店応援ブログ)


父です。松本健司といいます。いいちこで良い気分です

干物屋という商売柄、干物を作るためにさばいた魚の内臓が大量にゴミとして出ます。それらは産業廃棄物として業者に引き渡して処理します。ナンプラー用にその内臓を貰うため、実家に行って親父(以下、健司)に相談しました。

健司 「おう、圭司、仕事はどうだ。本は売れてんのか」
圭司 「まぁまぁ。よくわかんないけど」

健司 「ナンプラーっちゃ、魚醤の事だっぺ。秋田で作ってんだよな」
圭司 「流石、よく知ってるじゃん。だから内臓ちょうだい」
健司 「おー、アジの内臓があっかい(あるから)それで作れお」
圭司 「ありがと。じゃあとで作るよ」

章子 「あんたホントに仕事してるの?変な事ばっかりしてるみたい」
敏江 「章子さん、あたしそろそろ寝るから」
章子 「あ、お義母さん、お風呂のスイッチ切っちゃって下さい」
健司 「圭司、いいか、人間テングになったらおしまいだぞ」

グダグダになってきたので作業は次の日に持ち越しです。

 

それでは仕込みに入ります

翌朝、やや二日酔いになって9時頃起こされました。

健司 「おー!!圭司!!いつまで寝てんだこの三年寝太郎!!冷凍室から出しといたかいはややれさー!!(出しておいたから早くやれよ)」

階下から房総弁で親父の怒鳴り声が聞こえてきました。早くしないと内臓の鮮度が落ちてしまうので作業に取りかかります。ううっ、やりたくない。


アジの内臓です。あんまりなんでモザイク掛けました
店の作業場に行ってみると、内臓が入ったタルが置いてありました。

健司 「おー、そっだ。はややれ。(それだ、早くやれ)」

親父にせっつかれながら、果実酒の瓶に塩と内臓を詰め込みます。父ちゃん、生臭いよ。

 

塩と内臓を瓶に投入

ナンプラーの材料は塩と内臓です。比率は調べたところ、塩2:内臓5との事でした。塩1kgにたいして内臓が2.5kgでちょうどになります。容器の上と下に塩の層を作るそうなので、その情報を信じて作業を始めました。まずは塩を500g投入。

塩500gを瓶の底に敷きます

次に、内臓2.5kgを瓶に入れます。釣りエサの容器ですくって重さを量りながら瓶に入れていきます。2.5kgってかなりの量です。入れても入れてもまだまだでした。

クリックすると、モザイクが外れた拡大画像が開きます

やっと2.5kgの内臓を瓶に入れ終わりました。

内臓の上にまた500gの塩を入れます。

内臓を入れ終わったら、今度は塩500gでフタをします。これでナンプラーの仕込みは完了です。あとは自分の家に持ち帰り、一年間ひたすら発酵と熟成を待ちます。

前衛画家の絵みたいな模様。5kgくらいあります。重いよ・・・

 

それから二週間・・・・

・・・以上が、二週間前のお話です。

5kgの内臓瓶を浦安に持ち帰り、部屋の片隅に置いて発酵を待ちました。フタを閉めてるせいで匂いはありませんが、やはり不気味さを感じます。言ってみれば腐った内臓が入った瓶ですし。

ここらでちょっと様子を見てみましょう。


層が出来てます。なんだこりゃ

ガラスの瓶なので中身がよく見えます。下には溶けきってない塩とおぼしき白っぽい層、その上によく分からない液体の層、そして溶けた内臓っぽい層、上澄みの層となっています。上から順に、

1.上澄み
2.溶けた内臓
3.謎の汁
4.溶け残った塩

というわけです。おそらく。


凄い色です

 

フタを開けてみました

折角なので真上からも中身を見てみたい。外蓋と内蓋を取って中を覗いてみようと思います。


抗菌っていってもなぁ

 

白く半透明のフタを開けると、ポン!と音がしました。発酵して出たガスが溜まってるようです。その、漏れたガスの匂いを嗅ぐと・・・。

あ、意外に臭くない

くさやです。くさやの匂いがします。

腐った玉子的な匂いがするのかと想像していました。メタン系かアンモニア系の強烈な匂いを覚悟していました。が、くさいながらも遠くにアミノ酸的なうま味の匂いがします。

そういえばくさやは、ムロアジの内臓を発酵させた汁(くさや汁)に、ムロアジをつけ込んで干した物です。くさや汁はナンプラー的な方法で作られる訳ですから、同じ匂いがするのも納得できます。

一年後の完成が楽しみになってきました。


脂とか色々浮いてますが、赤褐色の汁になっています

来年、完成編をお送りします

 ややナンプラーっぽくなってきましたが、発酵はまだまだ必要ですし、ろ過して瓶詰めして熟成させるという工程も残っています。来年完成編をお届けすることをお約束して、今回は終わりとさせていただきます。

実家のマツカサウオが言葉を覚えました
 

それでは一年後、果たしてナンプラーは完成するのか。それとも単なる腐り汁になってしまうのか。上手くいったら人を呼んで手作りナンプラー試食会をやりたいと思います。

 もし、一年経ってもナンプラーの記事が載らなかった場合は「デイリーポータルZ編集部 ナンプラーはどうなった係」までお便りをお願いします。本気で忘れてしまっているかもしれませんから。


 

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