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ひらめきの月曜日
 
路上で本を売るということ


過ぎ行く午前

よーし! と腕まくりをしてみたはいいが、さて、どうやって売ればいいんだろう。

あくまでもここは路上である。本屋ではない。道行く人も普通通行人の方々だ。今日は腹を据えて、興味のない人に向かって訴えていかねばならない。

なんだなんだ、これ芸の世界みたいだぞ。


やたらに暑く、汗だくになりながらうろたえる

勇気を出し、公園を走るランナーのみなさんや、先をいそぐ人々に向かって、ひるみながらも、恐る恐る声を出してみた。

「本でーす」

何をどうアピールしていいか分からない結果、そんなことを言っていた。

うん、本である。見れば分かる。隣でかわいいダンボール製の置物を売っていた女の子が笑ってくれて、少し救われた。

路上で本を売るということは・4
興味のない人をひきつけなければならない。大変だ。


午前中はずっとランナーがひっきりなしに走ってゆく

午後、助っ人登場

どうにも過ぎ行く人をつかまえられないまま時間だけが過ぎてゆく。本は売れていない。

このあたりで品物をよく広げるという方によると、ぶらぶらと散歩ぐらいの速度で歩く人が増えるのは午後3時を過ぎてからだそうだ。そういう人たちは並べてある本や作品に興味を持ってくれるという。

そうなのか。感心しながらボーっとしたところに助っ人が。木曜ライターの土屋さんである。じつは1人での出店が余りにも不安だったため、来ていただくようお願いしていたのだ。


やけに堂々とした雰囲気の土屋さん

そしてノウハウが炸裂

土屋さんは個人的に色々な豆本を製作しており、これまでに大きな自主制作物の展示即売会(デザインフェスタとか!)に出た経験があるのである。

私がひとり体育座りでボケボケしていたのとは違い、サクサク豆本を広げると、通りすがりの方々に気軽に声をかけていく。おおー。


「どうぞー、気軽にみていってくださいねー」

どうやら、私のように闇雲に声を上げるのではなく、近づいてきてくれた方に個別に声をかけていくのがよいらしい。

それって、普通の洋服屋さんなんかと同じだ。いつのまにか店員さんがついてきて「お似合いですよ」とか言ってくれるあれじゃないか。

路上で本を売るということは・5
路上とはいえ、接客は店のように行うとよい


さらに、帽子のつばを上げて→ 怪しさを軽減したり

見本誌を明確にするなどアドバイスしてもらう そしてお客さんがいないときは自らサクラに

いろいろと教わりながら、土屋さんの豆本も見せていただいた。1冊1冊手作りの、えらくオシャレでエッジな本だ。

そして、豆本の中には期せずしてポエムの本もあった。やっぱり路上で売る本はポエムや小説と相場が決まっているのだ。


かわいくてオシャレな豆本各種

手にとっていく方続出……きー!(悔しがっている音)


別に、売りたいだけじゃない

その後は順調に目の前を行く方々に声をかけ、興味を持ってくれた方には本の内容を説明したりしてバタバタすごしていった。

でも、なかなかに売れない。

「売れないっすねえー」と私がぼやくと、土屋さんは、別にあんまり売る気もないかなー。というのだった。

土屋さんの豆本は安くて1冊5000円、高いものは8000円ぐらいする。1冊作るのに2日以上かかるものもあるので自然と高価になってしまうそうなのだ。

「だから、最初からあんまり売る気もないのかもしれない。そりゃ売れるとものすごい嬉しいけど」といっていた。


そして土屋さんはイカを食べ始めた

そういえば私も、自費出版で本を出すというのを決めたとき、印刷したり通販で申し込みのあった本を発送したりする手間にこそワクワクしていたのを思い出した。売ってお金を得るよりも、なんか楽しそうだという感じ。

やばい、これって「モノより思い出」というあれか。

ちなみに土屋さんの本と違い私の本は1000円で、どう考えても売りたさは100%なのだけど。

路上で本を売るということは・6
やっぱり、ロマンに近いことなのかもしれない



 

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