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ちしきの金曜日
 
都市河川の水飲み比べ〜東京うまい水〜
東京のうまい水を求めて

以前、イワナ釣りの名人が、焼いたイワナを食べるとその味で、どの川で取れたイワナか当てることができると言っていた。川それぞれに特有の味があるというのだ。
東京にもたくさんの川が流れている。
きっと川の水の味もそれぞれ違うはずだ。
はたして、どの川の水が一番うまい水なのだろうか。
魚の味を比べられる自信はないが、直接飲んでみたらどうだろう。味の違いがわかるだろうか。

工藤 考浩



東京の川めぐり

東京の川の水を飲み比べるにあたって、まずはそれぞれの川に行き、水を汲んでこなければならない。
今回飲み比べの対象に選んだ川は、江戸川・荒川・多摩川・神田川の4本である。
いずれも東京都内を流れる有名な河川だ。
まずは江戸川の水を採取すべく、寅さんで有名な葛飾柴又へと向かった。


柴又付近の江戸川の水

 

江戸川の水は濁っている

江戸川の河原は、休日ということもあり草野球などを楽しむ人でにぎわっていた。
この日の東京の気温は34度以上と、真夏らしい暑さだったのだが、川べりに近づくと水面を伝った優しい風が吹いていて、心地よい。
江戸川の水はやや濁っており、都市河川特有の「どぶ臭さ」もただよっている。
川の水は冷たいが、この濁りでは中に入って泳ごうという気にはならない。


2Lのペットボトルで採取

 

ひと通り採取した

その詳細は省略するが、炎天下8時間ほどかけて東京都内を東へ西へと巡って、4つの川から水を汲んできた。


左から、江戸川・荒川・多摩川・神田川

 

ろ過しよう

さすがに汲んできた川の水をそのまま飲んでは、おなかを壊しかねないので、携帯用浄水器なるものでろ過してから飲んでみることにした。
本来は災害時や衛生状態の悪い地域などでの飲み水のろ過に用いられるこの携帯用浄水器は4千円弱で購入できる。川の飲み比べには強い味方だ。

こういう折り畳み式のタンクも付属しているが、
ろ過器を直接ペットボトルにも取り付けることができる

 

キレイな水になった

川によって水の色や浮遊物の量にも大きな差があったのだが、ろ過することによってどれも透明でキレイな水になった。これならば飲めそうだ。
少し心配なのは、ろ過すると、味やにおいまでも取り除かれて、無味無臭になってしまうのではないかということだ。
その場合は、しかたがないので川の水を直接飲まなければなるまいがそれはいやだ。


500mlのペットボトルへろ過します

ホントに飲んでもだいじょうぶかな

 

さっそくテイスティング

各河川の水を、におい・やわらかさ・味の3つを5段階で評価してみた。
「におい」は飲んだ時のにおいで、おもにどぶ臭さの少なさが評価のポイントとなっている。においがもっとも少ないものが5点だ。
「やわらかさ」は舌ざわりの良さやまろやかさに関する評価である。
「味」に関しては、そのまま「味」を評価した。いい味か悪い味か、そのままずばりである。

 

かなり濁っている。藻やミジンコが浮遊している
におい:4、やわらかさ:5、味:4

江戸川の水(採取地:柴又)

葛飾柴又の水、である。
河原にはゴミが散乱していて、きれいではない。飲み水の採取場所としては不合格だろう。

最初のひと口目ということもあり、慎重に口に含んだのだが、意外にすっきりとしていて安心した。
しかし、ほんの少しどぶ臭さが感じられる。
舌ざわりはやわらかで、高く評価したい。
しかし、味にはやや苦味のような、えぐみのようなものが感じられる。

テイスティングコメント:
年老いた猫が近所の人に物乞いをしているような、力の弱い病的な水。

 

江戸川ほどではないが濁っている。浮遊物も見られる
におい:4、やわらかさ:4、味: 1

荒川の水(採取地:桜中学裏)

採取地はテレビドラマ「3年B組金八先生」のロケ地としても有名な堀切駅付近の荒川だ。
河原は江戸川に比べるときれいだが、それでもあちこちにゴミが散乱している。ここの水も積極的に飲みたいとは思えない。

2本目のテイスティングなので油断して口に含んだのだが、瞬間的に吐き出した。しょっぱいのである。
これだけ上流の川の水が、まさか塩辛いと思っていなかったので、口に入れた瞬間は何の味だかわからず、生命の危険を感じてしまった。
この水を採取したのは午後3時位で、この日の東京湾の満潮が午後4時24分。海水が逆流しているのだろうか。
そんなわけで、味に関しては点を辛くつけざるを得ない(文字通り)。
においは、こちらも「どぶ臭さ」がある。
塩分が含まれているせいか、舌ざわりはやわらかだが満点の評価はできない。

テイスティングコメント:
雨に打たれた鮭のような、それでいて反社会的な猛犬のような向こう見ずな水。

 

かなり透明で、浮遊物も少ない
におい:4、やわらかさ:2、味: 4

多摩川の水(採取地:調布市)

デイリーポータルZの、数々の企画のロケ地としても有名な多摩川の水である。
今回採取した調布市付近は世田谷区ともほど近く、周囲には高級な住宅も建ち並んでいる。
そのせいか、いやちがうのか、川の周囲は比較的きれいで、ゴミの量も少ない。
河原には犬を散歩させている人のほか、名前の知らない細長い動物を散歩させている人もいた。

多摩川の水は濁りが少なく、見た目はとてもおいしそうだ。
口に含んでもっとも気になったのは、その固さだ。
高いミネラルウォーターを飲んだ時のような渋さがある。
味に関しては、合格点だろう。不快な味は全くしない。舌に残る後味も悪くはない。
残念なのがにおいだ。どぶ臭さは感じない反面、水道水のカルキ臭のようなにおいがある。

テイスティングコメント:
都会で飼われる散歩中のイタチのような、フェレットのような、落ち着いた水。

濁りも浮遊物も少なく、限りなく透明に近い透明だ
におい:5、やわらかさ:4、味: 5

神田川の水(採取地:久我山)

神田川は、井の頭公園の井の頭池から隅田川へと流れる、東京生まれ・東京育ちの川だ。
そのイメージから、とても汚い川のように思っていたが、今回取水した川の水の中ではもっとも透明だった。
もちろん、見た目が透明だからその川がきれいだということにはならないだろうが、なんでも見た目が肝心だ。採取した杉並区久我山付近は閑静な住宅街で、神田川はコンクリートで垂直に護岸されている。なので、地域の人が直接水と触れ合うことができないのは残念だ。

さて、肝心の味であるが、神田川の水は、今回調査した4つの川の水の中でも最もおいしい水だ。
どぶ臭さもカルキ臭さもなく、味も市販のミネラルウォーターと区別がつかないほどである。
採取地が源流から近いせいか、舌ざわりにまろやかさが欠ける感じががややあるが、飲み水としては充分合格点だ。

テイスティングコメント
大空を舞うツバメのような、あるいは青年の汗のようなさわやかで味わい深い水。

 

グランプリは神田川

大自然の恵みである水だが、意外なことに大自然とは最も関係が薄そうな神田川の水が一番おいしかった。
神田川と聞いてまず思い浮かぶのは、4畳半フォークの暗いイメージだったが、今後は神田川といえば「おいしい水」というイメージに変わってしまうくらいに、予想外の調査結果になった。
これからは、コンビニで「神田川特製弁当」などを見かけたら、きっと吸い寄せられるように購入してしまうに違いない。

まとめ

皆さん、今回の記事はどうでしたか?
なにかもの足りなかったでしょう?
というのも、実は、川の水を汲みにいった時の写真のデータが入っているSDカードを折ってしまったのです。ぽっきりと。
写真を途中まで読み込んだところでカードを認識できないというエラーが出て、どうしたんだろうとカードリーダーから抜こうとしたら、ぱきっという音とともに、SDカードが真っ二つ。
僕の魂が全部抜けた気がしました。
なので、一番苦労した河原巡りの写真が全然ありません。
わざわざ金八先生の土手にいった写真もありません。
8時間かけて撮影した写真がありません。

というわけで、皆さんSDカードの取り扱いには注意しましょうという企画記事でした。おわり。

データ復旧に19万円といわれたが、一瞬、その位なら払おうかと思った

 

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