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はっけんの水曜日
 
ウミヘビで元気いっぱいに
ヘビだ。

沖縄の市場を歩いていると原付のタイヤみたいなものがまとめてぶら下がっていることがある。最初なんだかわからなかった。

だけどあれ、よく見るとヘビだ。

しかも食材らしいので食べてきました。

安藤 昌教



ウミヘビなんです

これ、じつは燻製にされたウミヘビなのだ。エラブウミヘビという沖縄近海に生息するウミヘビで、沖縄ではイラブーと呼ばれている。生きている姿はこんな感じ。ウミヘビには魚類のものと爬虫類のものがいるが、このエラブウミヘビは爬虫類の方に入る。要するに海に住むヘビなのだ。

生きているエラブウミヘビはコブラの10倍以上の猛毒を持っているらしいが、燻製になるともちろん毒はない。イラブーはかつては琉球王朝の高貴な人々しか食べることができなかったと言われており、現在でも高級食材として取引されている。たとえばこのタイヤみたいなやつ、一匹8000円とか大きいのだと15000円くらいの値段が付いている。


とにかくつやがすごい。
こちらは杖みたいです。
バンバン。

燻製にされたイラブーは吊るされて売られていることが多い。ぐるぐるに巻かれたものとまっすぐのままのものがある。どちらも魔女の薬作りに使われそうなインパクトだ。店頭に吊るされたやつをしげしげと見ていると、店の人がやってきて解説してくれた。なぜか小声だった。

「お兄さんお兄さん、イラブー、よく効きますよ(小声)。こうやって削った粉を僕も毎日飲んでるんですけどね、そりゃもうバンバンですよ。」

小声だったのでバンバンなのかパンパンなのか聞き取れなかったが、まあどちらにしろそんな感じらしい。そう、イラブーはいわゆる強壮剤として用いられているのだ。

 

おもいっきり大衆食堂ですが。

イラブー料理、食べてきました

そんなバンバンの店員さんが教えてくれたイラブー料理の食べられるお店へ行ってみた。ごく普通の定食屋なのだが、メニューを見ると確かに書かれている。

イラブー汁 1500円

この1500円という値段、だいたいゴーヤーチャンプルの定食でも500円くらいで食べられてしまう沖縄の定食屋において、かなり高いと感じる。さすがかつての王宮料理だ、値段からして期待がもてそう。注文してみた。

一見普通の汁ですが。

そして出てきたイラブー汁がこちら。どうしますか、寄りましょうか。

具はヘビ。

寄るとほら。ヘビだ。

予想はしていたが、やっぱり見た目すごくヘビだった。ヘビというかワニというか、とにかくこのウロコだ。ちなみにヘビの下には豚足が隠れている。

汁からは昆布だしの良い香りが漂っているのだけど、いかんせんヘビが入っている。でも滋養強壮だからな、というか正直1500円するからな、という点で自分を納得させ、箸をつけてみた。

皮はゴムっぽいですが、中身はやわらかいです。

燻製にされたカチカチのウミヘビを食べるには、まずお湯で戻してさらによく煮込む必要がある。その過程でウミヘビはやわらかさを取り戻し、強壮エキスをじわじわと放出していくのだ。汁に入ったウミヘビはすくうだけで皮と身がはがれるくらいにやわらかくなっていた。でも正直はがれなくていいですから、とも思った。

スープと一緒にヘビ肉を。

恐る恐るスープを一口すすってみる。

・・・

あ、これすげえうまい。

昆布だしの中に何かおもいっきり力強い生命体から抽出したであろうエキスの存在を感じるのだ。いくつものアミノ酸が複雑に絡み合って昆布と一緒に攻めてきた、そんな感じの味。もちろんこれこそがウミヘビから出ただしなわけだ。一緒に煮込まれている香草のおかげか、嫌な匂いもまったくない。ウミヘビ自体も食べてみたが、とにかく小骨が多く、食べられる部分はほとんどなかった。

 

うるせえよ。

うまいけどヘビです

僕がうまいうまいってウミヘビを食べていると、後ろを通りかかった外国人観光客らしき団体が覗き込みながら「・・マイガーッ」とか「ジーザス」とかつぶやいていた。あの人たちは、まだ本当の沖縄料理を知らないのだ。

と、今回はウミヘビの汁を飲む、それだけのレポートになってしまったのですが、実は他にも取材していたので見てください。


 

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