そして、酒解禁
そうこうしているうちに2時間が経過しようとしていた。飲んでばかりいた私にとっては一瞬だったが、他の方はどう感じただろうか。
とにかく「お腹いっぱい」な状態であろうことは間違いない。飲み会後半に頼むような炭水化物をどんどん頼み、そのうえせっせとお茶も飲んでいたのだ。
土屋さんにいたっては茶漬けだけで3杯食べていたし、林さんも「ごはんセット」なるものを頼み、ツマミをおかずにしてガッツリ食べていた。
残り5分となったところでビールを注文し、届いたビールをテーブル並べた状態でカウントダウン、スタート。上戸の皆さんは「ついに酒が飲める!」と、ゲートに押し込められた競馬馬のように、完全に前傾姿勢になっている。
携帯のタイマーを見ながら私が「…3・2・1、終了〜」と声をかけ、こうして、ひとりだけ飲み会が終わった。
もう一人だけはイヤだ
強く押さえ付けたバネほど高く跳ね上がるが、私が酒を飲み続けているあいだ、飲むのを我慢していた皆さんのバネは、太く、強くなっていったのだろう。彼らのここからの瞬発力はすごかった。
さすがに腹はいっぱいらしく、ビールを1杯飲み干した後は、いきなり焼酎のボトルを入れていた。
言うまでもないが、下戸チームは今までと同じペースで淡々と飲食を続けている。つくづく思った。彼らの酔っ払いを見る目は、本当に優しい。頭が下がるほど、優しい。
今回の企画をやって一番に感じたことは「下戸の皆さんは飲み会で、どんどん声や身振りが大きくなったり、同じ話を何度もしたり、ロレツが回らなくなる酔っ払いの姿を、しっかり見ているんだなぁ」ということだった。
…おそろしい。これは本当におそろしいことですよ。
酒飲み同士ならば、同じテンションでどちらもバカになれるから恥ずかしくはない。でも、下戸のみなさんは違う。とても冷静で、見たことや聞いたことの記憶をなくすこともなく、そして割高な会計を払わされるのだ。
正直、やってられないと思う。それなのに、いつも飲み会ではニコニコと人の話を聞き、流すべきところは流す。時には飲み過ぎた人の介抱に駆り出されることもあるだろうし、よく知らないオヤジに「オレの酒が飲めないのか!」と理不尽に絡まれることもあるだろう。
それでもこうして酒の席に出てきてくれる方というのは、本当に人間が出来ているのだなぁ、と思った。
というわけで「大勢のなかでポツンと一人だけが飲んだらどんな気分かな。疎外感とか感じるのかな」という単純な発想で始めた今回の企画だが、もろもろ含めての結論はこうだ。
「疎外感は酒で解消されたとしても、一人で飲むのはとても悲しく、そしてバカが浮き彫りにされる。お酒はみんなで楽しく飲みたい」
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