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ロマンの木曜日
 
身分証明書を作る

前回ボクが書いた記事「入っちゃダメっぽいところめぐり」で、自分で勝手に自分の身分証明書を作成したのだが、その完成度というか、「身分証明書らしさ」が低かった。
そこで、もっとよりリアルな、説得力のある自作身分証明書を作りたい、そう思ったのだ。
前回の身分証明書に足りないものは何だったのか、探りながら進んでいった。

工藤 考浩



本人確認書類を本人が作る

本来、身分を証明するのが本人であってはいけないわけで、官公庁や企業、学校などの、社会的信用性がある組織が発行しなければ、身分証明にはならない。
つまり、自分で身分証明書を作るということは、「オレだよ、オレオレ、だからオレだってば。」 と言っているのと同じことだ。

しかし、ときに人生には、自分で自分を信じるしか乗り超えようのない出来事がある。
そんな時のために、自分の身分証明書を自分で完成させたい、そう思い立ったのだ。


前回の企画ではあまり意味をなさなかった

前回自作した物。やはりちょっと殺風景な身分証明書だ

 

写真がダメなのだろう

というわけで、前回作成した身分証明書をもとに、より本物を目指して作成してゆくわけだが、果たして前回の身分証明書の、いったい何がいけなかったのだろう。
思うに、写真だ。
身分証明書で一番重要といってもよい顔写真がこれではいけない。
ぜんぜん証明写真ではない。
まずは写真から手直ししてみた。


青くした

 

背景をきちんとしてみた

この写真を撮影したのは、デイリーポータルZの企画で行った北上市のホテルだ。
そのため、背景がふつうのクロス貼りの壁である。
そこがいけないんだと思い、背景を青にしてみた。
どうだろう、証明写真っぽくなっただろうか。
確かに証明写真ぽくなったが、まだ何か足らない気がする。

そうだ、ネクタイだ。


ネクタイを合成してみた。

 

ワイシャツとネクタイ

クローゼットからワイシャツとネクタイをひっぱり出してきて、着用して写真を撮り、先ほどの写真に合成した。
かなりの証明写真っぷりになった。
大満足だ。
写真的には本格的な身分証明書に近づいたが、まだまだ足りない物がある。

名前の上に肩書きが必要なのではないだろうか。
今回の企画にあたって、友人たちの社員証を見せてもらったのだが、その全てに所属部署なり役職なりの肩書きが名前の上に記されている。

なので、肩書きを入れよう。


肩書きを入れた

 

さらにぐっとリアルに

デイリーポータルZでのボクの担当曜日は「ロマンの木曜日」なので、それを肩書きとした。
いわゆる所属部署だ。

肩書きを入れることによって、身分証明書度がさらに増したのではないだろうか。
肩書きを持つことによって、その人が肩書きに見あうように成長するなどとビジネスの世界では言われているようだが、身分証明書も肩書きをつけると成長するのである。


色をつけた

 

細かいところを修正する

写真と肩書きとで見栄えはだいぶよくなったが、いまいちまだもの足りない。
友人に見せてもらった身分証明書を参考にに(ちなみに、企画で使うから身分証明書を貸してくれと言ったら断わられた。ケチな友人たちだ。)、ディテールをさらに詰めていった。


有効期限を入れて
ハンコを押した

 

完成に近づいた

パソコンの前で作業すること半日、試行錯誤の上、やっと自分で満足のできる身分証明書に近づいた。
さっそくプリントアウトして、切り抜いてみよう。


なれない作業は大変だった

慎重に裁ち落として

できた

 

訪問販売の人みたいだ

でき上がった物をIDケースに入れてみたのだが、やはりどうにもうさん臭い。
ときどき家にやって来る、あやしげな訪問販売の人が身に付けている身分証明書みたいになってしまった。
ふとんとかクリーニングしそうだ。
しかもキレイにならないクリーニング。

でも、満足はしている。
いくらうさん臭くても、悪徳商法っぽくっても、身分証明書は身分証明書だ。


たくさん印刷しちゃったので

たくさんコレを買ってきて

超まんぞく

身分証明し放題

とりあえず、外の光に当てた
この企画を発案して、制作作業をして、いま原稿を書き終えて、とても楽しかった。
自分で身分証明書を作るのは想像以上に楽しいことである。
しかし、この楽しさが読者の皆さんと共有できたのか、うっすらとした不安も抱えてはいる。
なぜなら、自分の身分証明書を作るというのは、楽しい反面、非常に内向的な作業でもあるからだ。
それはつまり、長い時間、自分と向き合い続けなければならないということを意味する。
けれども、でき上がった身分証明書を自ら胸に下げた瞬間の感激は格別だ。
楽しさを共有できなかった皆さん、皆さんもぜひご自分の身分証明書を作ってみてはいかがだろうか。

 

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