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ロマンの木曜日
 
闇アルキ。月アソビ。(闇ガイドとゆく月夜の里山)

ひっそりと主張する天笠山の看板
熊より、闇より、自分の体力がなにより恐怖
ああ、こんなにすぐなら弱音を吐かなければよかった……

人体の不思議:目が慣れる

足元を懐中電灯で照らしても、3mほど先はもう影もかたちも見えません。
闇に怯える間もなく、はぐれないようについて行くのがやっとだった私たちも、林道が終わる頃にはすっかり目が慣れて、人体の不思議に唸りました。

「月明かりの、なんと明るいことよ!」

これがウワサのムーンライトウォークでしょうか。

 

そして山へ。道なき道へ。

ゆるやかな林道がおわるころには鼻歌もでるほど余裕がでてきました。

天笠山の山道へ足を入れたとたん、己の体力に対する恐怖が襲いかかります。日頃の運動不足に加え、木々に覆われ月明かりも届きません。

急斜面があっても、すぐにはそれとは気付かないおそろしさ。今度は本当に手も足も使って山を登ります。こんなところでムーンウォークではなくスパイダーウォークをするとは思いませんでした。しかし急いでなどいられません、慎重に、慎重に、おいていかれてもいい、滑り落ちるよりは。

「ああ、もう、ダメだ」「私ダメだ」「もう、40才、だから、ダメ」といちいち同情を引くようなセリフを、ゼエゼエという息と一緒に吐きだしました。人の声というよりも、獣のうなり声のような私の弱音とゼエゼエだけが、ただむなしく山に響いている気がしました。

 

ぽっかり浮かぶような夜景

これ、いつまで続くんだろう……酸素缶持ってくればよかった……ああ酸素缶……などと思った瞬間、天の声が聞こえてきました。

「山頂でーす」

え?もう着いたの?こんなに早く?なーんだ。

人体の不思議と、己の単純細胞の神秘を痛感した山頂に到着です。ああまぶしい!

 

山道を下る。尻が落ちる。

20分ほど夜景のまぶしさを堪能したあと、今登ってきたあの山道を下ります。

すっかり精気を取りもどした私はカメラを構える余裕もありましたが、心のスキは惨事を招きました。

足をすべらせ、尻もちをついたのです。それはもうマンガに出てくるような見事な出来映えでした。
私が他人なら大笑いするところですが、ここは闇の中。無様な姿をさらすことなくなんとか立ち上がりました。

おかげで同行のツマさんから奪い取っていた、懐中電灯をブチ壊しました。 もちろん尻もち画像はありません。あるわけねえだろう。


フラッシュをつけたら見えますけども
実際の肉眼ではこんな感じです(どうだすごいだろう)

 

林道にてムーンワープを体感する

行きに通った林道を下り、湿原をめざします。
山道とは違い、ここは平坦な道。まっすぐに歩けるよろこびを踏みしめます。

「なんか江戸時代みたいだねー」
と同行のツマさん。さきほど懐中電灯を壊されたこともすっかり忘れて呑気に闇歩きを楽しんでいる様子でまったくよかったです。

参加者のお一人も「追っ手から逃げている昔の人のようだわ」とおっしゃっています。
そう、私たちのそう遠くない先祖たちは、こうして闇夜を歩いていたに違いありません。というよりも、はるか昔にどこかでこうして歩いていたような、むしろ今が何時代なのかさえわからない。ムーンワープでしょうか。

中野さんもご自身の著書「月で遊ぶ」(アスペクト)で、この不思議な錯覚について言及していらっしゃいました。

時代劇の青暗くてなにもない夜に迷い込んだみたいで、思わず一人称が拙者になる。



意気揚々と闇に飲まれる拙者たち


少しでもカメラを構えると、みなのシルエットさえ見えなくなるほど遅れをとりますが、今はもう少し前の私ではありません。
スパイダーウォーク&パーフェクト尻もちをクリアした拙者こと私はもう、月明かりさえあればひとりでどこにでも行けるような気がしてきました。気がするだけです。



※クリックで、肉眼でみた光景と同じ状態になります。

 

君さえいれば。(画像クリックで闇画像に。目をこらしてごらん下さい)

 

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