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ひらめきの月曜日
 
刺身のツマの自立を助ける


ひとり暮らしの贅沢アイテム

「刺身のツマを食べる人は出世する」と言っていたのは、どこの飲み屋のママだったか。…思い出せない。

ツマ(妻)を大事にする男は家庭も仕事もうまくいく、ということが言いたかったのかもしれないが、なるほどなぁ、と思わせる名言である。

しかし、逆もまた真なり。愛人をたくさん持ち、あまりツマを大事にしないように見える男性が大出世を遂げる例が多く見受けられるのも、また事実だろう。

とにかく、出世うんぬんに関わらずツマは大事にするべきだ。人間の妻も、刺身のツマも。というわけで、今回は刺身のツマをことさら大事に扱ってみました。

高瀬 克子



ツマという立場

まずは、スーパーで普通に売られている刺身パックを見てみよう。閉店間際には50%引きになるのだが、この日は中途半端な時間に行ったせいか30%引きどまりだった。

あまり閉店ギリギリに店へ行くと「あら、お刺身もう売り切れ?」ってなことになる可能性もあるし、このあたりの駆け引きは非常に難しいところだ。


彩りがキレイですねぇ

青シソの緑が刺身の色を際だたせていて、大変に美しい。刺身ひとつ売るのに、この気の使いようである。改めて「日本人のなんと繊細なことよ」と思わずにいられない。

青シソ効果をより感じるため、試しに刺身だけを取り出して白い皿に並べてみた。


黒い皿に並べたところで、そっけなさに変わりはない

黒い皿に並べたところで、そっけなさに変わりはない

どんな色の皿に並べたところで、たいした違いはなかった。刺身がただ置かれた様子は「ポツネン」という表現がピッタリなほど何やらうら寂しく「何かが足りない…」と思わずにいられない。

やはり、刺身にはツマが必要不可欠なのだ。そして青シソという彩りが、2人の間を取り持っている。

…ああそうか、刺身が「ダンナ」で大根のツマが「妻」ならば、青シソってのは「子ども」の役割を担っていたんですねぇ。(このへんテキトーです。本気にしないでください)


父親に出ていかれた子どもたち
そして、子どもも独り立ちした後の妻

主役である刺身がいなくなった家庭(刺身パック)は、目も当てられないほど荒廃してしまった。ひとり取り残されたツマの、わずかにマグロの汁に赤く染められた部分に未練が見てとられ、もの悲しさに拍車がかかる。

代わりになる誰か(刺身)を乗せれば再びツマの座に納まることは可能だろうが、いまや女性が自立する時代だ。ダンナに依存せず、一人でやってみればいいのだ。


ツマを水洗いしてシャキッとさせてみました

「いつまでもウジウジしてないで、まずはパートにでも出てみなさい!」と、嫌がるツマを洗ってみたところ、ビックリするほどカサが増えた。「こんなに大量の大根が、あの平べったいパックによく収まってたものだ」と感心するほどである。

洗ってキレイになったツマは瑞々しく、このままドレッシングでもかけて食べたら立派なサラダとして通用するだろう、と思わされるくらいだ。

「アンタまだまだ現役よ。大丈夫、やっていけるって」


ツマを励ましつつ、箸でつまんでみたのですが。

…これだ。ほんの何本かをつまんだだけなのに、ズゾゾゾーと絡まり合いながら大量のツマが一緒に持ち上がってしまった。「私も! 私も一緒に連れてって!」とツマに大挙して押し掛けられた格好だ。

ダンナへの依存を断ち切らせるために相談に乗っていたら、今度は私に寄りかかられてしまった関係と言えるだろう。これはまずい。真の自立になってない。

常々「なんで刺身のツマは無駄にベローンと長いんだ。食べにくいったらありゃしない」と思っていたので、ここはショック療法とばかりに、刃物に登場してもらった。


ええい、こうしてやる!
サッと、食べたい分だけ取れるようになりました

適当な長さに切られたツマはだいぶ自分を取り戻したようで、すっかり観念した様子を見せている。

「そうよねぇ、私たちだって、別の場所に行けば大根サラダとしてやっていけるのよねぇ」と言うツマは、自信を取り戻したかのように生き生きとし始めた。よかった。

 

いろいろなツマ

いきなり話は逸れるが、なにも「刺身のツマ=大根」と決まっているわけではない。海藻や茗荷や穂紫蘇など、ツマの立場にもいろいろとある。

実家の母など「パックに入っている大根のツマは薬品まみれに違いない」と決めつけて廃棄し、代わりにキャベツやニンジンの千切りを添えていた。


これが我が家でのツマでした
こんな時もあった

たとえ母と言えど、商売抜きで人が作ってくれる料理に文句を付けたくないので、いつも刺身を食べながらキャベツやニンジンを黙々と食べていたが、やはり相当異色だろうと思う。

でも、世の中にはこういう家庭もあるのだ。いろいろなツマたち。ツマになりうる野菜たち。

そんな野菜たちを一堂に集めてみた。さあ、いよいよツマたちの反乱ならぬ、自立の時です。大団円を迎えます。


ツマ数種をガーッと混ぜて
おお、青シソも戻ってきたぞ!

アンタ、今までどこ行ってたのー!
ポン酢しょうゆとゴマ油をまぜたドレッシングをかけて、よーく混ぜ合わせます

子どももオヤジも戻ってきた家庭(くどいようだが刺身パック)だが、もう以前のような形態ではない。ツマは敷かれているだけの立場を脱却したのだ。女としての自信を取り戻し、余裕の表情さえ浮かべている。

そんなツマに、刺身は「今度は違った形でやって行けそうだな…」とつぶやき、青シソも「母さん、変わったね」と満足そうだ。


新しい家族の形。というか、これはただの刺身サラダだ

ドレッシングに入れたゴマ油がいいアクセントになっており、ちょっと中華風で大変おいしい。

「中国の学生をホームステイさせてるの」

母さんが嬉しそうに話すのを、笑顔で見つめるダンナと子どもであった。

誰か止めてください

なぜこんなに食べ物に感情移入してしまうのか、自分でもわからない。

えーと、普通の刺身に飽きたら、たまにはこういう刺身サラダもいいですよ。

取って付けたように、まともなことを言って締めたい。

ビールにも日本酒にも紹興酒にも合うと思います

 

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