先日、沖縄では県知事選挙が行われた。今回立候補していたのはいずれも新人の3名。各候補は直前までかなりのデッドヒートを繰り広げていた。
接戦ならば選挙運動もおのずと熱を帯びる。しかしその過熱ぶりが沖縄ではちょっと普通でないのだ。僕はこれまでいくつかの県で選挙を経験してきたが沖縄くらい「熱い」選挙戦を繰り広げる場所も珍しいのではないかと思う。
その様子をちょっとだけ見てみましょう。
(安藤 昌教)
三日攻防
沖縄の選挙活動には三日攻防という言葉がある。投票日直前の三日間、最後の追い込みで票の行方が大きく変わる、ということだ。この言葉自体はじめて聞いたのだが、確かにこの三日間、各陣営のがんばりはすごかった。
選挙運動といえば街頭演説がまず思い浮かぶ。これは沖縄でも同じで、選挙期間中は主要交差点で朝から各候補がマイクを握っていた。一つの交差点の対角線上で演説をしていることもあった。
しかしこれで終わらないのが沖縄の選挙だ。まずこの候補の選挙事務所から見てみよう。屋根に熊がいる。
選挙に勝つにはまず目立つことだ。さてどうしたらいいんだろう、そうだ、熊だ、屋根に熊を置こう。そんな感じだろうか、確かに目立つ。
町中の電柱にはポスターやらステッカーやらがべたべたに貼られる。特にこの三日間で貼り紙は急増した。
ダンボールやベニヤで作った台紙にポスターを貼り、ビニール紐で電柱や街路樹に縛る。とにかく数多く貼る。朝起きるといきなり増えているので、たぶん夜中に誰かが貼り歩いているのだろう。これに関しては軽犯罪法に抵触すると思われるのだが、そこは追い込み期間中。叱られても目立てばよいのだ。沖縄の選挙活動が直前三日間に集中するのは、短期間でやったもの勝ち、ということなのかもしれない。
道から見えるのならば、木でもなんでも、とにかくアピールに使う。写真は木に張られたポスター。街路樹でもなんでもなく、山に生えている木だ。
道路標識やパーキングメーター、ポストなんかも当然のようにアピールに使われる。選挙関係のポスターやステッカー類は期間中ははがしてはいけないのではないか、と思われがちだが、選挙管理委員会が設置したボード以外に張られたものは基本的に違法なのではがしてもよい。実際、貼られた選挙ポスターに市町村からの「剥がしなさい」という警告ステッカーが付けられていることもある。
電柱だって電力会社の持ち物なので本当はちらしとか勝手に張ってはいけない。だけどこの時期、手のつけられていない電柱を探すほうが難しい。
カフェや不動産の広告、エロチラシらと同じ並びで、町中に選挙ポスターがあふれかえる。しかし選挙戦も終盤に差し掛かると、ただポスターを貼ればいいというものでもなくなってくる。
次は一歩進んだアピールの数々を見てみよう。