ちょっと待ってください
それでは帰ろうかと振り返ると、なんと小学校の隣にビール工場があるではないか。そうか、だからビールくさいなんて言われていたのだ(実際はくさくなかったのだけれど)。この立地ならばもしかしたら製造過程の関係で、ある時期には本当にビールくさくなることもあるかもしれない。
せっかく来たので工場見学を申し込んだ。すみません、予約とかしていないんですけど見られますでしょうか。
「お一人様でしたら今入られた老人会の方々の後ろに付いて周っていただいて結構です。」と。なんだこのデジャヴュ、と思ったら以前見学に行ったハム工場でも同じようなこと言われたことを思い出した。
見学ルートから見える工場では、出来立ての新鮮なビールが次から次へと瓶詰めされていた。
試飲もできます
見学を終えると「ビールの試飲ができます」という券がもらえた。いやそういうつもりじゃないですから、とは思ったが、無下に断る理由もないので一杯だけ頂くことにした。
とにかくうまい
それがこのビールがうまいのなんのって。泡が細かくて炭酸がやわらかくて、ついぐっと一気飲みしてしまうのだけれど、それでも味と香りがしっかりとのどに残るのだ。銘柄はいつもスーパーとかで缶入りのを買ってくるのと同じはずだ、なのになんだこの圧倒的なうまさは。
なんだこのきめ細かい泡は。僕は普段、ビールは缶からグラスに移さずに飲んでいたのだが、これからはちゃんと泡を楽しむ余裕を持ちたいなと思った。
なになに、泡を楽しむ余裕?二杯目も思わず飲み干してしまったので僕は泡を楽しんでいなかったんじゃないか。係りの人に無理言って、もう一杯だけ飲ませていただいた(たぶん本当は一杯だけだと思います)。
うめえ。もう学校がビールくさいとかどうだっていい。いいじゃん、ビールのにおいのする学校なんて入学したいよ。
一緒に見学を回った老人会の方々も口々に「ここのビールはいつも飲んでるやつと違うねえ。」と言っていた。みんな笑顔だ。これだけたくさんの見学者に無料でビールを試飲してもらうというのは、企業としては採算が取れないのかもしれない。しかしこの場は確かに小さな幸せであふれていた。人を幸せにする仕事っていいな、と思った。
計算済みでした
と、いかにも取材のついでにビールを飲んできたような書きっぷりだったが、実はこれを見越して今回は2時間くらいかけてバスで来ている。最初から飲む気満々だったのだ。だけど飲んだら乗るな、だ。バスでも片道1500円くらいかかった。途中で「往復3000円払うのなら居酒屋でたらふく飲めるよな」なんてひねくれたりもしたが(片道2時間は長いのだ)うまいビールを飲んでそんな思いも吹っ飛んだ。すごい得した気分だ。
においはしませんでしたが
見学中にビール製造過程で発生する廃棄物の処理についての説明パネルがあった。この工場では 、かなり力を入れてリサイクルをし、環境へ排出するごみを最小限に抑えているのだという。においはゴミではないが、これだけしっかりと管理された工場ならば、気分を害するようなにおいをむやみに外に排出することはおそらくないんだろうな、と思ったのでした。それにしてもビールはうまかったです。