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はっけんの水曜日
 
マラソン大会で得られたもの

天を仰ぐ。

無念の脱落

なんと20キロ付近で目の前が真っ白になってしまった。手と足がしびれて前に進むことができない。急に内臓が機能を止めてしまったのかと思った。這うようにして沿道へ逸れ、仰向けに倒れた。

実はこの後、救護班のお世話になったりとかいろいろあったのだけれど、写真を撮っている余裕がちょっとなかった。目の前を常に白いちょうちょが飛んでいた。

同じくリタイヤした人たち。

過去2回の大会では中間地点まではほぼ疲れなしで来られたのだ。なのに今年に限ってなぜ。

と、ここからは言い訳になるのですが、実は今朝まで急性腸炎という病気で、うんうんうなりながら寝込んでいたのでした。家族には死ぬからやめろ、と言われたのだけれど、朝には熱が下がっていたのでとりあえず走ったのです。

前日、熱を測ると。
38度以上ある。

 

リタイヤした人たちにも水をわけて下さい。

ごめんなさい

少し休んで意識もしっかりしてきたので、ここからはマラソン大会を途中でリタイヤするとどういう目にあうのか、これまであまり表にでなかった部分を紹介したいと思います。もっとたくさん走っていろいろな物を食べたかったのに。本当にごめんなさい。

まず記録用のICタグを外して回収箱へ返します。これは完走するとゴールでボランティアの高校生なんかが「お疲れ様でした!」っていいながら外してくれるものなのだけれど、リタイヤしたら「そんなの自分で外せよ」とばかりに箱が置かれているのだ。これを外したとき、これでレースが終わったのだ、と実感して涙が出た。

これが記録用のICタグ。
さらば、今年の那覇マラソン。
座る人、横たわる人、野戦病院みたいになっています。

ここはちょうど中間地点なので、途中でリタイヤした人たちがぞろぞろと集まってくる。ここで帰りのバスを待つのだ。僕もここまではなんとか自力で這うようにしてたどり着いた。

おいまた誰か運ばれたぜ。

最初から20キロを目指してここでレースをやめる人もいれば、僕みたいにあくまで完走を目指して志半ばで尽き果てる人もいる。その違いは表情を見ればすぐにわかる。

しかしリタイヤ集団の中に救急車が近づくたび、全員の顔から笑顔が消える。自分もあとちょっと無理してたらあれで運ばれていたんじゃないか、みんなそう思っているのだ。

どよーん。

リタイヤした人たちを運ぶバスはシートがビニールで完全武装されていた。汗も涙もげろさえも、一滴たりとも吸い込まない構えだ。

ゴール会場まで運ばれる途中、バスの中は一様に静かでみんな寝ているのかな、と思った。しかし実際はほとんどの人が目を開けていた。僕も同じだったのだが、体は疲れているのだけれど気持ちが昂ぶっていて眠れないのだ。そんなやり場を失った高揚感に満ちたバスが約1時間かけて成し得なかったゴールを目指す。

無理してはいけない、だけど

たかが市民レースに無理をしてまで走るべきではない、というのは正論だろう。だけど僕もたぶん他の人たちも、このレースのためにそれなりに時間を割いて、そのために他のいくつかを犠牲にして準備を重ねてきたのだ。リタイヤバスでゴール会場へ運んでもらい、とぼとぼと歩いていると完走メダルを下げたランナー達が充実した顔で通り過ぎていった。久しぶりに悔しくてしゃがみこんで泣いてしまった。

でもアクエリアスを飲んだら元気になったので家に帰って2月のフルマラソンにエントリーした。負けない。今回は無念のリタイヤだったものの、逆に得られたものがある。新しい目標だ。うまくまとまったところで走りにいってきたいと思います。


 

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