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ひらめきの月曜日
 
志村けんの「スイカの早食い」を真似したい 

これを志村けんは3秒で食ってるのかー


日本を代表するコメディアンである志村けんさん。

志村けんがすごい速さでスイカを食べる、というギャグは日本人なら誰もが知っているだろう。2〜3秒でスイカをぺろっと完食しちゃうあれだ。

幼少期の僕は、あれを真似しようとしてこっぴどく母親にしかられた。母に隠れて挑戦したこともあったが、あの速さはとうていマネできなかった。

しかし待てよ。マネできなかったのは子どもだったからかもしれない。

大人の洞察力と口の大きさを発揮すれば、マネできるかもしれない。あの早食いに挑戦してみた。

(text by 梅田カズヒコ



スイカ、3675円

と、思ったものの季節は真冬である。スイカは果たして手に入るのか。近所の八百屋、冬でもスイカが売っているといううわさの八百屋、そして数軒のデパートをまわったところ、ついに新宿の伊勢丹でスイカを発見した。


ばーん!! しかしスイカ一個3675円かー。高い買い物だなー

高い。もちろんシーズンオフなのは分かるし、貴重なのも分かるがスイカ一個3675円は高い。

一瞬買うのを躊躇したが、でも長年の「マネしたい」という気持ちを考えると3675円なんて安い買い物だとも思った。

もうあとには戻れない。そんな気持ちで僕はスイカをレジへ運んでいた。あのとき僕を叱った母さん、ごめん、いい息子に育たなくて。

 

協力者と公園へ

僕はデイリーポータルZの取材は基本的にひとりが多いのだが、今回の挑戦はさすがに自分で撮影しつつ挑戦というのはちょっと無理がある。そこで、土曜日担当のライター、「ざんはわ」の大北さんに撮影をお願いしてみることにした。

僕のスイカ早食いに対する並々ならぬ思いに動かされたのか、かわいそうな人だと思われたのかは分からないが、大北さんは快く撮影を引き受けてくださった。大北さん、ありがとうございます。


「ぼくですか? あ、はい、撮りますよ」

 

スイカを準備する。都内を歩き回って手にいれた高級なスイカだけに無駄にはできない。包丁で切るのもちょっと緊張する。

挑戦前。気合はじゅうぶん。しかし写真を見返してみると、寒かったのか僕の唇が紫に変色している。

下準備も気合い入ってます。

近所の公園で周囲を汚さないようレジャーシートをひき、おもむろにスイカを取り出す。高価なスイカにドキドキするも気合はじゅうぶん。勝算もある。なぜならロケ日の前日、志村けんのスイカ早食いについてVTRや文献を何度か見返して検証していたからだ。以下に検証結果を記す。

・下準備1 VTR検証

実は今回のスイカ早食いに挑戦するにあたって僕なりに志村けんの早食いシーンのVTRを検証してみた。早いのはさすがだが、ちょっと気になる点もある。それは食べ終わったあとが異様にきれいだということだ。普通、スイカを食べ終わったらたくさんの歯形が残ってぼこぼこになる。しかし、志村けんが食べたあとのスイカは歯形のあとさえなえほどきれいに食べきっている。このあたりにヒントがあるかもしれない。

・下準備2 参考文献を調べる

志村けんのスイカ早食いに関するさまざまな情報を調べていると、wikipediaに興味深い記述を見つけた。wikipedia:志村けんのエピソードの項の7段目の記述によると、スイカのテレビに映らない部分を削り取っていたとい話しが掲載されている。しかもこれを「ドリフカット」と呼んでいたらしい。
真偽のほうは調べる手立てはないが、これは有力な手がかりだろう。

以上を踏まえるも、ひとまずはいっさい細工をせずに1/8サイズにカットしたスイカの早食いに挑戦してみることにした。僕は日本の喜劇王に近づけるのだろうか?

結果は以下の動画で。


TAKE1 
(※以降、ちょっと汚らしいかもしれませんが、ご了承ください)



だめだ。

不覚にも口の中にたまるスイカに耐えかねて一瞬噴出してしまった。動画の最後で首をひねっているが、真剣に挑戦をしたがうまくいかなかった自分に対する悔しさの現れである。やはり志村けんは偉大なのか。僕らは志村けんにはなれないのか。

 

TAKE2 

こんなことであきらめるわけにもいかず、もう一度挑戦してみた。



食べている途中に思った。どうもこの方法はやはり無理がある。やはりあのスイカ早食いを体現するにはある程度のギミックが必要なのかもしれない。

 

1.まずは下部に切り込みを入れる

2.ある程度の幅を取って、裏側から切り込みを入れる

通称『ドリフカット』を再現

その後幾度か失敗を重ね、僕なりの早食い用スイカの作りかた、名づけて『ドリフカット2007(デイリーポータルリミックス)』を編み出した。

『ドリフカット2007(デイリーポータルリミックス)』の作りかた

1.まずは通常のスイカの下部に切り込みを入れる。

(このとき、勢いあまって向こう側まで貫通しないように注意したい)

2.ある程度の幅を残し、裏側から切り込みを入れる。

(ここは勢いよくダイナミックに突き刺したい)

3.切り取る部分に切り込みをいれ、取り出しやすくする。

(ここが一番失敗しやすい場所。神経を使う。われわれはこのとき包丁しか持っていなかったが、スプーンなどで彫っていくと削りやすいかもしれない。)

4.ブロック上になったすいかの破片を慎重に取り出していく。

(ここも侮れない。慎重に取り出さないと今までの苦労が水泡だ。ゆっくり、愛を持って接することが重要。)


3.切り込みを入れ、慎重に裏側の部分を切り抜いていく。
4.切り抜いた部分をそーっと取り出す
3〜4.の作業を失敗すると向こう側まで穴が空いてしまう。写真は失敗例。
慎重に、繊細な作業は続く。

 

テレビには映らない努力

一連の作業はかなりの繊細さが必要だ。
テレビの前の志村けんは能天気にスイカをバクバクと食べているが、あのコントの裏にはこんな繊細な作業が潜んでいたとは。

そして思わぬところで志村けんを再発見する自分。

自分はテレビに映る志村けんの表層しか見てこなかったのかもしれない。

そんなことをしみじみ思っている折、ついにドリフカットスイカは完成した。

完成!


あー、おいしそうなスイカだなー

前から見ると普通のスイカ。しかし後ろを見ると…

志村! 後ろ!

後ろから見ると2/3ほどが空洞になっている。いよいよ完成した。果たしてスイカの早食いには成功するのか?? それは次ページで!!(テレビ的な引っ張りかたへのオマージュ)

 

 
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