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ひらめきの月曜日
 
極寒ストリートライブ
アーケードが続く狸小路商店街。


すすきのにブラブラと飲みに行って見かける、路上で歌う若者たち。
ほろ酔い気分のまま通り過ぎたり、ふと彼らの歌を聞いたり。

がしかしよく考えると、冬のすすきのは余裕でマイナスの気温。
ギターかき鳴らす手は冷たくないのか。
その座っているコンクリートの床は寒くないのか。
それとも若さと音楽への情熱で、そんなものはヘでもないのか。

寒空の下、狸小路(たぬきこうじ)商店街に、歌う若者たちを観察しに行ってきました。

(text by 加藤 和美



■狸小路をブラブラ歩く

狸小路商店街は、大通とすすきのの間に伸びる約900メートルのアーケード街。
1丁目から7丁目まであり、1丁目から6丁目が屋根でつながっていて、雪の多い札幌では便利な場所。
路上ライブをするのにも、屋根があるとないとでは大違いだろう。

とはいえ、狸小路で路上ライブをやっている若者をよく見かけたのは夏場だし、狸小路は夜が更けると店が閉まって閑散としている、というイメージがある。

音楽好きなら、冬でも路上ライブがやりたい、という気持ちはわからないでもないが、冬の札幌。しかも夜では気温は余裕でマイナスを下回るはず。
いったい何組ぐらいが来ているだろうか。


観光客でにぎわう狸小路。

狸小路に着いたのは夜8時前。
皆さんもご存知のとおり、今年は記録的な暖冬。
この日の狸小路も、季節ハズレの雨。
1月に雪じゃなく雨が降るなんて、札幌にしてはかなり珍しいが、今年は年末から年明けにかけてよく雨が降る。

地球は大丈夫だろうかと心配しながら、1丁目から6丁目までをブラブラと流して歩く。

狸小路は3丁目と4丁目に地下街への出入口があるので、3〜4丁目がにぎやかで、1丁目や6丁目など、端に行くほど人が少なくなる。

ちなみになぜか7丁目だけ、アーケードがつながっておらず、見た目も昔ならではの外見である。なぜ7丁目だけ…?


ブロックごとに大きく数字が書いてあるのでわかりやすい。
写真は狸小路2丁目。

時間は夜8時まえ。
アーケードのあちこちで、ケースからギターを取り出し、路上ライブの準備にとりかかる若者たちを見かけた。

えっ意外!
けっこうな人数がいるのだ。
8時の段階で約10組。

この時の気温は約2度。
同時刻の東京の気温は8.5度。
温度差が10度というのも珍しくないのに、たった6.5度。
暖冬の影響で、今夜も冬の札幌にしては暖かい。

…………。

…などと「冬の札幌にしては暖かい」というフレーズで自分を納得させてはいるが、風が吹いているし、昼から5時間以上ウロウロしていたので、正直、気温2度でも寒い!

ブルブルしながら、若者たちをウォッチしてみたところ、夜8時〜9時のあいだに、10組ほどのミュージシャンがいて、そのうち5組が2丁目に集中しているのがわかった。


8時を過ぎると、あちこちでギターケース抱えたミュージシャンたちが準備を始める。
狸小路の真ん中にあるベンチがちょうどいい客席に。
東西に長い狸小路。ミュージシャンには2丁目が一番人気だった。こちらに2組。
こちらにも2組。お互いの距離がちょっと近い、なんてことも。
激しく踊りながら歌うパフォーマンス。客も一緒に踊って盛り上がっていた。
人通りの多い3丁目で黒山の人だかりが。人が多いとついつい気になって自分も見に行ってしまう。

 

■準備中の若者をつかまえてみた

ギターをケースから出したり、楽しそうに準備をしている2人組を見かけたので声をかけてみた。

まず寒くないかと聞いてみると、
「俺ら、パーカーなんで寒いです!」
パーカー?

2人のユニット名は「ツーパーカー」。
なので歌う時は必ずパーカー姿なのだそうだ。
そのパーカーの下に服をたくさん着こんで寒さに備えているのだが、今年は暖冬なのでマシなのでは?

「あ、俺たち最近路上ライブ始めたんで、去年のことはわからないです」

なんだ、そうか。
どうして狸小路でやっているのかというと、
「過去に吹きっさらしの風が強い屋外で、路上ライブやったんですけど、寒くて寒くて大変でした。アーケードの下なら寒さがまだマシなんで」

なるほど、アーケードの中なら雨・雪・風も防げるし、何もない場所にくらべたらはるかに良い環境なのだな。

でもやっぱり、冬場の路上ライブは寒くて厳しいというが、そこは
「寒いけどガマン!」
のひとことだった。
がんばれ!


衣装はパーカー。寒くても、歌う時には上着を脱いでパーカーになる!というふたり。
エリもとに注目。中にものすごく重ね着をしているとか。

 

■女の子の2人組にも聞いてみた

女の子2人で歌っていたコンビにも話を聞いてみた。

ユニット名・花菜(はな)の2人が、路上ライブを始めたのは去年から。


路上ライブを終えて帰り支度をしているところ、話を聞いた。

まず、日常でも定番になっているセリフ「今年は暖冬だよね」。
やはり彼女たちも暖冬で助かっているという。
暖冬とはいえ寒くないかとたずねると、
「寒いです!」
「カイロ使いまくりです!」
と元気なお答え。

もちろん寒いけど、やっぱりガマン。
ガマン強いな、君らー!

「でも冬は路上ライブやらない人も多いですよ。夏になると、もっとここ(狸小路)、歌ってる人多いです」


ところで彼女たちが歌っているあいだ、ずっと男性が1人話しかけていた。
あれはファンなのかと聞いてみたところ「まったく知らない人」なのだとか。

知らない人が話しかけてくるのも、路上ライブではよくあることで、かといって彼女たちが困ったことは、あまりないらしい。

「困ったことといえば、外国のおじさんが混ざってきて、大声で歌い始めた時くらいですかねー」


札幌の路上は、意外と平和なのかもしれない。

彼女たちも狸小路2丁目で歌っていたので、どうしてここなのかと聞いてみると、
「3丁目の方が人が多いんですけど、にぎやかなお店が多いんで、歌いにくいんですよ。でも、1丁目だと通る人が少ないし。2丁目はお店も閉まって静かだし、人通りもあるし、ちょうどいいんです」

なるほど。
ただ飲み会帰りにいい気分で歩いている私にはわからない、そんな理由があるのだな。

 

準備中の高橋優さん。現在、本気で音楽活動中!

高橋さんのライブが始まった。
夜が更けて通行人は減っても、立ち止まる人は増えた。

■路上ライブを見てみた

さてここで、インディーズに注力しているミュージックショップ音楽処さんに紹介していただいた、ミュージシャン・高橋優さんの路上ライブを聞きに行ってきた。

行ってみると、高橋さんは準備の真っ最中。
場所は、ミュージシャンの集っている2丁目の真ん中という、なかなか良い位置。

スタートを待つお客さんもすでに数人かいて、安定した人気がある人のようだ。

ここでフトお客さんを見ると……ミニスカート!?
しかもナマ足!!


私はモコモコのロングのダウンを着て、靴下を2枚はいた上にごついブーツをはいているというのに、あなたはミニスカート。

おそるべし、北国の少女。

そお客さんの無防備さにおののいていると、ライブがスタート。
高橋さんは寒さを感じさせない熱唱ぶり。
周囲にもミュージシャンが大勢いて、あちこちから歌声が聞こえてくるような状態なのだが、なかなかの声量で、2丁目でも一番声を張っていたと思う。

私は他のお客さんに混ざったり、時に離れたりしながらライブを見ていた(ウロチョロしてすみません)。

年配の人や、観光客はチラッと視線を投げるだけだが、若者グループ、特に女性はよく足を止めてくれる確率が高かった。

ライブが終わる9時半ごろには、私はだいぶ寒さで参っていた。しかし最初から最後までピクリとも動かずに聞いているお客さんがいたのだ。

すごい、ミュージシャンもすごいが、お客さんもすごい。

北国の路上ライブで私が見たものは、寒くてもガマンして歌うミュージシャンの根性と、そしてお客さんの暖かい愛であった。


高橋さんの路上ライブを動画でどうぞ(歌が聞けます)。
雑踏に混じって歌声が流れる。
ライブ終了後に来たお客さんのために追加サービス中。

 

■お話を聞いてみた

路上ライブをを終えた高橋さんにお話を伺うことにした。

正直、路上では寒かったので、時間がないというところをお願いして、近くのファーストフード店でお話させてもらった。
すみません、私、寒くて舌が回りません。

 

――基本的な質問から…音楽を始めたのはいつですか?
高橋:高校の時バンドやってました。遊びでも本気でもなく。大学に入ってからも高校の延長みたいな感じで…。今はめっちゃがんばってますけど。

――今、どのくらいのペースで路上ライブをやっているんですか?
高橋:毎週金、土、日の夜にやっています。

――路上ライブを始めたのはいつですか?
高橋:4年前からです。

――今年は暖冬ですが、寒い年とかあったのでは。
高橋:寒い年、ありましたありました!!

――私、見てるだけで手がかじかんできたんですけど、あんなに寒くてギターとか弾けるんですか。
高橋:たぶん見てる方が何もしてないから寒いですよ。自分は歌ったり、けっこう動いてるんで。意外と歌ってる方が見ている人よりは寒くないですよ。

――お客さんでスカートの子とかいましたよね。
高橋:お客さんがすごいなと思いますよ。お客さんの我慢力の方が。


むこうに座っている女性はミニスカートだ!

――防寒とかに気をつけてますか?
高橋:寒いと声とか出なくなるんで、絶対にすごい厚着してます。着込んでます。カイロがあればカイロを使い。今日もお客さんにカイロをもらったんで大事に使ってます。暖かい飲み物を飲みながら、体を冷やさないようにします

――カゼひいたりしますか。
高橋:何回もありますよ!


こう見えて、実はすごい厚着らしい。

――今日、狸小路を歩いて回ったら、2丁目にミュージシャンが集まっていたのは何ででしょう。
高橋:昔は何となく4丁目でやってたんですよ。何年か前は3丁目が一番ミュージシャンが多くて、それで俺は4丁目に行ったんですけど、今度は4丁目にミュージシャンが集まってきたんで、去年くらいから静かな2丁目に移ったんです。でも今は週末になると2丁目にもミュージシャンが集まって来てます。

――今日はダントツで2丁目の人数多かったですよ。
高橋:えっ、そうなんですか。

――2丁目は混んでるからミュージシャン同士が近いんですけど。
高橋:やりづらいですね、非常に。仕方ないですけど。

――他の人と場所取り争いになったりしませんか?
高橋:自分は特に。場所が空いていればいいです。できれば中の方で。

――中の方というのは…。
高橋:アーケードの中の方、という意味です。アーケードの外の方って寒いんですよ。あ、どちらかというとお客さんが。

――同じアーケードでも、中側とと外側で違いますか。
高橋:ぜんぜん寒さが違いますね。

――あの店のあのシャッターの前がお気に入りだとか、ありますか。
高橋:特にないです。時間に遅れて来たら既に他の人がやってる、ってこともありますけど、他が空いていれば別にいいです。

――路上でやってて、ハプニングとかありますか?
高橋:シャッターの前でやってるじゃないですか。店の人が、歌ってる自分の真後ろでいきなりシャッター開けることがあるんですよ。それで笑いが取れる時はいいんですけど。真面目なバラード歌ってる時に、後ろでガラガラガラーって開けられることがよくあります。でもお店の人にどいてくれとか言われることもなく、たいていの人はすごくいい人ばっかりで、暗黙の了解って感じで。「歌ってなさいよ」って。


この日も、歌っている時に、店のおじさんが右側のシャッターを開けていた。

――変な質問なんですけど、フタ開けて置いてるギターケースに、お金入れていく人いませんか。
高橋:いますよ、たま〜に。たいてい酔っ払ったサラリーマンが入れてくれます。

――別にお金入れてもらうためにギターケース置いてるわけじゃないですよね?
高橋:ギターケースはチラシを置く場所であり、お金を入れてくれと言っているわけではないですが……入れてくれるもんなら入れてくれ、と(笑)

――音楽やってて何か思い出ありますか?
高橋:勘違いして自分のことを好きになってくれる人がいるんですよ

――いや、それは勘違いじゃないんじゃ…。
高橋:本当は自分は人付き合いが苦手だったり、悪いところもあったりするんですけど、相手は歌ってるところしか知らないから。それでつきあっても、「歌は良かったけど…」なんて言われて

――(爆笑)
高橋:「歌ってるあなたと普段のあなたは違う」みたいな。自分としてはどっちも素なんですが…

――今日の路上ライブはどうでしたか?
高橋:お客さんには悪いんですけど、体調はあまりよくなかったですね。お客さんの数は並というところでした。少ない時は1人もいない時ありますから。日曜はお客さんが少ないです

――人が来ないなら日曜はやめとこう、とか思わないんですか?
高橋:いつ路上ライブをやるかは、目的次第だと思うんですよ。趣味だとか、とりあえず出てる人とか、俺は土曜にやるんだと決めてる人とかいると思うんですけど、自分の場合は、晴れてて暖かかったら毎日やりたいくらいで。何で毎日やるかって言ったら、路上ライブがメインじゃなくて、それによってチラシを配って宣伝活動をして、CDを出した時に「あ、あの人のCDだ」と手に取ってもらいたいと。たとえ日曜日でお客さんがいなくても、新しいお客さんに出会えるかもしれないし

――今年の活動は?
高橋:5月にCDを出します!通販もできますし、全国のお店で売ってもらえるようにする予定ですので、よろしくお願いします!


高橋さん、ありがとうございました。

■寒い、けど歌いたい

ものすごく寒い中、歌っている人たちが見たい。
という感情から狸小路に行ってみたのだが、暖冬の影響で当日暖かく、いまいち臨場感が出なかったのが残念です。

まあ私個人としては気温2度でもじゅうぶん寒いと思うのですが、皆さん口をそろえて「今年は暖かい!」と言うわけです。
彼らはマイナス5度近い時も歌ったりしているので、確かにそれにくらべれば、2度なんてマシなのでしょうが…。


皆さん口をそろえて言うことが
「冬の路上ライブはすごく寒い!!」

そりゃそうだ。

でも、みんな
「ガマンして歌ってます!!」
とのこと。

冬のこの時期、路上で歌っている人たちは、本気度が高い人たちのはず。

暖かいシーズンになれば、もっといろいろなミュージシャンが路上に出てくるのかもしれませんが、本当にいい歌が聞けるのは、意外と寒い冬なのかもしれません。

終わる頃には、狸小路も閑散として…。

取材協力

■ミュージックショップ音楽処
〒060-0063
札幌市中央区南3条西2丁目15
狸小路2丁目 山福ビル地下1階
TEL : 011-221-0106
FAX : 011-221-0161
URL : http://www.ondoko.jp/

 

■高橋優さん
URL : http://my.minx.jp/yunpla


 
 
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