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ひらめきの月曜日
 
すき焼きの生玉子の使いかたを応用できないか? 

『すき焼き』は実はこの生卵が目的だったりするわけです。


皆さん、すき焼き食べてますか?

僕も子どもの頃はよく食べてました。平和な土日、何か祝い事があると僕の家族は決まってすき焼きを食べていた。中流家庭の週末。

割り下で甘辛く煮付けられた牛肉を生卵に「とぷっ」とつける。ああ、うまい。

単純な料理だが、やはりこの料理においてアクセントとなっているのは生卵の存在ではないだろうか?

そういえばすき焼き以外の料理で生卵にたぷっとつけるという料理をあまり聞かない。実はいろんな料理を生卵に「とぷっ」とつけるだけで、料理がうまくなるんじゃないだろうか?

試してみた。とぷっと連発。

(text by 梅田カズヒコ



とりあえずすき焼きを食べよう

そういえば久しくすき焼きを食べてない。実験にあたりまずはすき焼き本来の魅力を再発見するためにすき焼きを食べよう。近所の下北沢ですき焼きを食べられるお店に食べに行った。


ばーん!!

考えたらすき焼きは特に高級品が存在しない。確かに牛肉は豚肉よりも高いが、白菜、豆腐、白滝、シメジ、ネギ……。どれも普段食べる食材だ。なのにこのスペシャル感はなんだろう。考えてみたら「すき焼き」もすごい発明だなー。


いきなり肉からいっちゃいます。

すき焼きの割り下はあえてやや濃い味に味付けられている。それを生卵にとぷっとつけるだけでマイルドな味に変化するのだ。しかも、たまごだからつるっといける。肉の次は何を食べようか? 白滝? 豆腐?


春菊いっちゃいました。誰にも渡さないぜ、へっへっへ。

春菊いっちゃいました。うまいよね、すき焼きの春菊。考えてみたら、春菊がもっともその力を発揮するのってすき焼きではないだろうか? 僕はすき焼きでは春菊のすき焼きが好きで、春菊ではすき焼きの春菊が好きだ。

あー、やっぱりすき焼きは偉大だ。すき焼きをたらふく食べた僕はおなかいっぱいになりながら帰ったわけです。うまうま。

 

にぎり寿司。

さあ、本番の始まりだよ!

すき焼きをたらふく食った翌日、さっそく生卵をかきまぜたおわんを抱えた僕はさまざまな料理をすき焼きにすべく動き出した。

ランチタイムだけ安くなる近所の寿司屋で寿司を買ってきた。

寿司といえばもう完成された料理である。きらびやかなネタと酢飯。これ以上何かの味を足すのは野暮だ。

しかし、野暮でもいい。今、僕は寿司を生卵につけて食べたいのだ!!

サーモンはどっぷり漬けてやりました。僕の中ではかつて見たことない写真。
海老はちょっとだけとぷっと漬けました。海老とたまごは愛称ばっちり。

寿司、総評


黄金色に輝くイカの寿司

サーモン

つるんと口の中に入ってきた。うまい。たまかけご飯に生鮭を乗せたものと同様だからだからそりゃうまいに決まっているだろう。

たまご

これぞメタな味付け。ダシ巻き玉子に生卵。特に味は変わらなかったが、たまごよりたまごを食べている気分になった。うまいよ。

ひかりもの/イカ/海老/ネギトロ

全部うまい。イカとか海老とかは特にたまごと愛称が良かったです。

アナゴ

ちょっと濃い味のアナゴがたまごでまろやかに。全部うまかったんですが、特に寿司のベストテイクでした。


寿司総評

生ものの魚と、同じく生ものの生卵は愛称がいいようだった。これらはどこかで味わったことがあるな、と思ったらばくだん丼と同じ味がした。また、普段は脇役に過ぎない、どちらかといえば飯はいいから具をでかくしてくれ、と言われがちな酢飯が玉子の威力を借りて黄金色に輝きだした。これは大発見だ。今、僕はとてつもない発明をネットで発表しているかもしれない。これは明日からえらいことになるぞ。(うますぎてちょっと自意識過剰気味になっている)

90点!


 

先ほどの寿司によって少し酢醤油味になった玉子におもむろにてんぷらを入れる。

矢印、取り出そうとするときたれる玉子の汁がたまらない

限りある玉子だからこその魅力

寿司を食べたあとに、あえて玉子を入れ替えたりせずにそのまま使いまわすことにした。そのほうがすき焼きっぽいからである。

すき焼きのもうひとつの醍醐味は、さまざまな食材を玉子に漬けるために玉子がだんだんうまくなってくるところだろう。たまごがいろんな汁を吸ってうまくなっていく。これは居酒屋の小皿にも同じことが言える。

だけど、ダシが染みておいしくなっていく茶碗の中の玉子は、ある瞬間から飽和状態を越え、とたんに濃くてしつこい味になっていく。いつまでもおいしさが持続するわけではないからこそ、限りあるたまごだからこそ、僕らはその隙間を楽しんでいるわけだ。すき焼きの玉子が愛されるのは、「いつまでもおいしいわけじゃない」という刹那を抱えているからかもしれない。

 

てんぷらmeetsすき焼き玉

かつて坂本九の名曲「上を向いて歩こう」が海外で「スキヤキ」と名づけられたとおり、スキヤキと言えば海外でも通じる日本を代表する料理であろう。そして寿司。こちらも日本を代表する料理だ。

寿司、すき焼き。そしてもうひとつの日本代表といえば、そう、てんぷらだ。てんぷらもすき焼き玉子に浸してみた。


てんぷら(イカのてんぷら)総評

いつもしょうゆ味の利いているてんぷらがたまごのおかげでマイルド、あっさりになっている。塩分控えめでいいかも。ただ、あったかいてんぷらがたまごによって冷めてしまうのがたまに傷。

70点!


 

 
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