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はっけんの水曜日
 
アメリカをちょっとだけ走る

この先、アメリカ。

先日行われたマラソンはコースの一部が米軍の基地内だった。日本国内の米軍基地は住所がカリフォルニア州になるので、僕はマラソンの途中で国境を越えてカリフォルニアにいたことになる(あくまで住所の上では、ですが)。

普段はなかなか入ることのできない米軍基地、しかも施設によっては撮影禁止だったりするのだけれど、平和の祭典マラソンということで走りながらさりげなく写真撮ってきました。そこはやっぱりカリフォルニアでした。

安藤 昌教



スタート。

唯一、基地内を走る大会です

先日行われた「おきなわマラソン」は沖縄中部を走る大会で、おそらく日本で唯一コースの一部で米軍基地内を走るマラソンだ。レースの終盤、30キロ付近からの数キロが米軍嘉手納基地内に設定されている。

沖縄に住んでいても基地に入る機会なんて関係者以外ではほとんどないわけで、僕をはじめ普通の人にとって基地は未体験ゾーンなのだ。そんな基地内を走ることができるマラソンとなればこれはエントリーしないわけにはいかない。しかもたぶん余裕なんか全然ないだろうに、またカメラを持って走ることにした。

日本国内での沿道風景。いたって冷静。

基地にいたるまでの道のり、沿道からの声援はいつもと同じマラソン大会の光景だった。前回無念のリタイヤを帰した那覇マラソンにくらべて参加人数も半分くらいということもあり、加えてこの日はあいにくの小雨だったためか沿道からの声援は場所によってはまばらだった。果たして基地の中でも応援してくれる人たちはいるのだろうか。

国境地帯での沿道風景。

20キロ後半あたりから前方に基地が見えてくる。そういえば急に沿道に人がいなくなった。徐々に空気が張り詰めていくのがわかる。もしかしたら基地内はかなり厳重警戒ムードなのではないか。うかつに写真なんて撮ったら捕まって国際問題に発展しちゃったりしないか。誰も同情してくれないんだろうな。写真どころか僕ごと消されちゃうかもな。

人は長く走ると精神的に不安定になる。マイナスイメージばかりが頭の中をぐるぐると回り始めた頃、基地が徐々に近づいてきた。

 

国境警備兵。

いよいよ基地だ

基地のゲート前で警備についていた米兵にカメラを向けたところ、何か言われたような気がしたがその表情はにこやかだった。しかられたわけではないようだ。作り笑顔で軽く片手をあげながら通り過ぎた。

国境。

いよいよここからカリフォルニア州に入る。そういえば兵士たちは町に出ても迷彩服だ。森では消えるが町では逆に目立つだろうに。

それにしてもなんだか遠くからうなり声のようなものが聞こえるがなんだろうか。何かの訓練だろうか。

アメリカに入るとそこは大声援でした。

一歩カリフォルニアに足を踏み入れると沿道の雰囲気が一変した。厳重警戒どころか、そこは花咲く歓迎ムード一色だったのだ。さっきから聞こえていたうなり声は遠くで聞こえた大声援だとわかった。沿道にはすごい数の人たちが応援におとずれている。指笛を鳴らし、大声をあげ、みんな笑顔で迎えてくれた。何度もマラソンを走っているがこんなにハイテンションで歓迎されたのは初めてだ。

とにかくすごい人だかりです。
みんな笑顔で応援してくれます。
子供たちはキャンディーをくれたり。
「ヘイ!グッジョブ!」ってハイタッチしたり。
ウォーター?キャンディー?ってつきまとってきたり。
両脇からとにかくいろいろな物を差し出してくれたりする。

 

トラブル発生

熱烈歓迎ムードに気をよくし、空港に降り立ったハリウッドスター気取りで沿道の方々に手を振ったりしながら楽しく走っていたのだが、基地内に入って1キロを過ぎた付近でなんと腹筋がつってしまった。急遽離脱して沿道にうずくまる。人間、腹筋がつると動けなくなるのだ。すると応援に来ていたアメリカ人数人が僕を取り囲んだ。

「キャンディー?ウォーター?ユーオーケー?」

みんな心配していろいろなものを差し出してくれる。申し訳ないがこの状態でアメとか食べられない。大丈夫です、ただ腹筋が・・。

「ワッツ?フッキン?レスキュー?」「ヘイ、ユー、レスキュー?」

彼らには「内臓が破裂しました」とでも受け取れたのかもしれない。エビみたいになって寝そべりひくひくしていたのが、そのくらいの症状を思わせる姿だったのだろう。とにかくたくさんの方から思いっきり心配されてしまった。


帰りのゲートをくぐるとそこはまた日本。

腹筋はその後なんとか復活し、そのまま走って基地を後にすることができた。ゲートを出ると日本の子供たちがエイサーを踊っていた。ああ日本に帰ってきたのだ、と思った。海外から日本に帰ってきて、空港から日本人だらけの地下鉄へ乗り換えたときみたいな安心感があった。

よい大会でした

基地に住むアメリカ人は全力で僕たちのことを応援してくれました。どうだろう、逆に基地内で行われるマラソン大会が基地の外を走ることがあったとしたら、僕たちはこんなに全力で彼らを応援することができただろうか。もうちょっとオープンな感じに僕たちも彼らと関わることができたらな、と思いました。

日本の中のアメリカを走る、という特殊でデリケートな状況だけにいろいろと考えるところのある大会だったのですが、とにもかくにもたった数キロのアメリカ体験は予想をはるかに超えた素敵なものでした。来年も出よう。

この大会は完走すると沖縄そばをもらえます。

 
 
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