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ひらめきの月曜日
 
冬のビアガーデン
雪が溶けて、大きな水たまりに。うっかり足をつっこむとダメージを受けます(肉体的にも精神的にも)


3月に入り、めっきり春めいてきました。
札幌も暖冬の影響で、早々と雪が溶けはじめております。
とはいえ、気温はちょっとプラスになる程度で、本州に比べればまだまだ寒い…といったところでしょうか。

そんなある日、1枚のポスターが目に入りました。

『冬のビアガーデン』

ビアガーデンといえば夏!という常識をくつがえす、その「冬のビアガーデン」に出かけてきました。

(text by 加藤 和美



この集まりは何だろう。

子供も、一部の大人も夢中になってボールを追う。

■会場に行ってみると…雪?

「冬のビアガーデン」というのは、「にぎわいまつり」というイベントの一環だそうで、会場である大通公園に行ってみた。

この日はとても天気が良く、日中の気温は4度と、札幌にしては暖かい。まさにイベントびより。

しかし大通公園に着いてみると、街中ではほとんど雪も溶けているというのに、会場内は雪がしきつめられていた。

「せっかく暖かくなって雪がなくなったのに、なぜわざわざ雪を集める!?」
と疑問に思ったものの、催し物を見て納得。


子供たちが集まってにぎやかなので覗いてみると、雪上タグラグビー(簡易なルールの、ラグビーのような球技)大会が開催されていた。

フィールドは雪なので、足がとられて思うように動けない!という面白さと、ゴロゴロ転んでも平気というのがあいまって、大人も子供も大騒ぎ。見ているこっちも大笑い。
なるほど、確かにこれは雪上ならではの楽しさだ。


また別の場所では特設ステージがあり、いろいろな演奏やイベントが催されているようだった。

私が通りすがった時は、和太鼓の演奏が行われていた。
和太鼓といえば、前掛けのみで、ほとんど上半身裸。

彼の演奏はもちろんだが、その格好にも拍手が飛ぶ。
演奏後は汗すらかいていたので、本人は暑いくらいだったのかもしれないが。

雪上だから、転んでも平気。
気温4度だけど、汗だくの和太鼓の熱演!

 

人が集まっているので、とにかく近寄ってみる。

石狩鍋、無料配布!?

■あったかいアレが無料配布

和太鼓の演奏も終わり、さらに会場を進んでいくと、何やら人だかりが。

人ごみをかきわけて近づいたらなんと
「石狩鍋 無料配布」!!

テントの中の大鍋で作った石狩鍋を、ふるまってくれる。
当然並んでいただく。

おばちゃんたちが「ハイ!」「ハイ!」とすばやく石狩鍋を渡してくれる。
食べやすいように割り箸は割ってから渡してくれるのがうれしい。


雪の上を歩いて冷えてきたところに、石狩鍋は本当にありがたい!
サケがたくさん入っていて、やや薄味の味付けがおいしかった。

実はそれほど石狩鍋を食べる機会がないのだが、北海道ではやっぱりサケがおいしいと思う。


ふとここでまわりを見渡すと、大勢の人がめいめいに石狩鍋をつついていた。

多いのは、観光客らしい人々。
それから通りすがりの地元民。家族連れ、カップル…。
年齢も境遇もバラバラな人たちが集まって、同じ鍋を食う。

おー、あったまるー。

石狩鍋、あったかくておいしい。しかしなぜか目がうつろだ。
観光客も、家族連れも、カップルも、みんな立って石狩鍋をつつく。

「冬のビアガーデン」めあてで来たはずが、あっちこっちに寄り道して、本来の目的を忘れかけている。

 

 

さらに進むと、おお、かまくら!!


かまくらと、札幌大通テレビ塔。
空が青い。

 

大通公園の真ん中にあらわれたかまくらと、背後のビル群。

最近はまとまった雪も珍しいので、思わずソリで遊んだりして。

■ビル群とかまくらのコントラスト

大通公園は札幌のオフィス街の真ん中にあるのだが、いきなりかまくらがあらわれた。

抜けるような晴天と、そびえたつビルと、かまくら。
なんだかミスマッチだけど、お祭り気分が盛り上がる。


友人一家と待ちあわせをしていたので、子供たちと雪遊び。
最近では雪も減ってきて、雪遊びができなくなってきたところだったので、いわば最後のチャンス。

ソリを引っ張ったり、かまくらに入ったり……おや、2歳の子はなかなかかまくらに入らない。

かまくらの中が暗くて、ちょっと怖いのか?
喜ばれるかなーと思ったのに、予想外。


かまくらはよく見ると、半球型というより、少し四角い。
この気温で雪が緩んでいるのでは?と思い始めると、大人の私でもちょっと怖くなってきた。
入ったとたんにかまくらが崩れ落ちたらどうしよう!?
生き埋め?

ちょっと不安になりながらも、かまくらの中に入ってみると、雪の中に柱やネットが入っていて、崩れないようになっていた。

ほほー、こういうところに作られるかまくらは、安心設計だったのか。なるほど。

小さい方のぼうやは、かまくらに入るのが怖いらしい。
かまくらの中には柱やネットがあって、崩れないようになっていた。

ちょっと触っても崩れない。意外としっかりしていたかまくら。

 

札幌名物を扱った出店が並ぶ。

意外にも本格フレンチでセレブな気分。

■屋台で食べ物を物色

かまくらだけではなく、屋台も並んでいた。
屋台でおなじみのサードメニュー系から、スープカレー、ラーメンといった札幌名物、そして中華とフレンチのレストランも。

このお店、屋台と言っても本格的。
入口は透明ビニールシートで覆われていて、中はストーブがガンガンに焚かれて屋内のように暖かい。

しかもレストランは屋台と思えぬ本格派。
特にフレンチレストランでは、丸テーブルにクロスがかけられ、スーツ姿のサービスマンがサーブしてくれる。
屋台なのに。


屋台群とは別に、巨大なテント(というより簡易な建物)があり、そこがビアガーデンになっていた。

あ、「冬のビアガーデン」って、屋外じゃないのか…。

よく考えれば当たり前だが、「札幌のビアガーデンは夏でも寒い」という印象があるので、なんとなく外でビールを飲むような気がしていた。


簡易な建物ながら、ビアガーデンの中には木のテーブルやイスがならび、何より室温が暖かくて、快適だった。

よく見ると、テント内の数ヶ所に、大きな送風口があって、そこから熱風がどんどん入ってくる。
暖房はばっちりだ。

こちらが冬のビアガーデン会場。巨大なテントになっている。
中は明るい色合いでかわいらしい。
テント内の数ヶ所から、熱風がガンガンに送られてくる。
ふと、足元を見たら、雪が見えた。
まずは普通の生ビールから。
みそラーメン。札幌のラーメンは本当に濃い!
2杯目は黒ビールで。
ラーメンをも超える勢いの、札幌名物スープカレー。じつは近所にある店のカレーだった…。

 

クマ登場。…デカッ!!大人から見てもデカイ!

■くま出没

ビアガーデンで食事をしていたら、写真のクマがのっそりとあらわれた。

他に子供はいなかったので、明らかにわれわれのためにあらわれてくれたようだ。

がしかし、このクマがまたでかい!大人たちも思わず「デカッ」とつぶやいてしまうでかさ。

クマは子供たちのところまで来てくれたのだが、子供たちはけっして視線を合わせなかった。怖がって泣くわけではないが、けっして振り向かない。

かわいいクマの登場で、われわれのテーブルには妙な緊迫感が漂ってしまった。

目を合わせようとしない。
やはり目を合わせようとしない。

テレビ塔や街路樹がライトアップされていて、きれい。

夜のかまくら。なぜか青いライトが…。

夜でもあったかい、ビアガーデン。

■夜にふたたび

昼にビアガーデンを堪能したわれわれは、日が落ちたあとふたたび大通公園を訪れた。

やはりビアガーデンといえば、夜!
夜でしょう。

テレビ塔や大通公園がライトアップされていて、とてもきれい。
昼間遊んだかまくらも、微妙にライトアップされていた。


「1日に2回も来て、怪しまれてやしないか」とビクビクしながら、ふたたびビアガーデンへ。


今度は札幌でビールといえば…の、ジンギスカンを注文。
札幌在住とはいえ、ふだんあまりジンギスカンは食べないので、観光客のように大喜び。


知り合いには、ラム肉がニガテだったが、札幌に来たら好きになったという人が何人かいる。

札幌はラム肉の産地に近いので、輸送に時間がかからないぶん、臭みが少ないそうだ。
札幌にお越しの際は、ぜひラム肉を試していただきたい。
もし、それでもダメだったらごめんなさい。


昼間も会ったクマちゃんに手を振ったりしつつ、普通のビールと黒ビールを半分ずつ入れたハーフ&ハーフを飲む。
ちなみに最初からハーフ&ハーフではなく、その場で「ビールはんぶん」、「黒ビールはんぶん」を注いでくれるという、本当のハーフ&ハーフ。


ジンギスカンも食べつくし、満足。
テントのビアガーデンは、夜になっても暖かい。


冬のビアガーデンは初めてだが、夏より暖かくて快適かもしれない。
もちろん屋外で夜風に吹かれながらビールをあおるのも楽しいのだが、夏でも涼しい夜なんかは、外でビールを飲んでいると寒い寒い。

夏もこのテントでビアガーデンを開催してくれないだろうか…と、ちょっと思ってしまった。

今度はビールと黒ビールのハーフ&ハーフを飲む。
夜になったら、クマの数が2匹に増えていた。
鉄板が、北海道の形だ!

 

怪光を発しつつ、何かを大事に持ってかまくらへ。

かまくらの中には、四方にロウソク入りのプラスチックケースが埋められていた。

■これが本当の冬のビアガーデン?

ジンギスカンも食べて満足がしたが、まだひとつやりたいことが残っている。

外に出ると気温は1.6度。
かまくらの中に入ると、ロウソクの入ったプラスチックケースが埋められていて、オレンジ色の光がゆらゆらしていた。

かまくらは、昼より夜の方が雰囲気がいい。


出店で買ったビールを持参し、かまくらの中でカンパーイ!
屋外で飲んでこそのビアガーデン。
かまくらの中の一杯は格別。
風も入らないので、外にいるより暖かい。
冷たいビールもうまい。


いい気になって、かまくらに入りこみ、プラスチックコップのビールをあおっていたが…。

あとで写真を見たら、ひとりでかまくらにこもってビールを飲んでいる、ただ厄介そうな大人だった…。

ロウソクの光に照らされて、かまくらの中でビールをいただく。これがやりたかった!
客観的に見ると、かまくらの中でしゃがみこんで酒を飲んでいる変な人だ…。

■去り行く冬を惜しむ

ビール飲みまくりの「冬のビアガーデン」だけに留まらず、雪遊び、かまくら、石狩鍋、ラーメン、スープカレー、ジンギスカンと、1日で札幌の名物を網羅できた、すばらしい1日でした。
雪の中で飲むビールも大変おいしく、これぞ雪国の醍醐味。

今までは「早く春にならないかなぁ」と、冬にはさっさと通り過ぎてほしかったのですが、冬にも惜しむものがたくさんあるんだとわかりました。
札幌に来て12回目の冬で、やっと、ちらっと、ちょっとだけ、冬が去るのが惜しいと思えました。
小さいですが、新たな発見です。

なお、夏でも涼しい札幌では、夏のビアガーデンより、冬のビアガーデンの方が暖かいです。
夏のビアガーデンでも、あのテントを導入してもらえないでしょうか。
汗だくでビールが飲んでみたい…。

帰ってからもまた飲んだりして…。

 
 
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