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ひらめきの月曜日
 
古本目利き3本勝負

第1ラウンド 1人目:加藤

いよいよ目利き勝負が始まった。
1番手ということで緊張しながらも、選んだ本を取り出す。

加藤「私の1冊目は、『実録!女子刑務所のヒミツ』です!」

 

『実録!女子刑務所のヒミツ』北沢あずさ

 

加藤「キャッチコピーがすごいです。『女囚にしか語れないすごい内容!塀の中でも捨てられない女の性!』ですよ!?どうですかコレ!」

店長「(笑)」

加藤「女囚モノですよ!女囚はいけますよ!」

加藤は1人で熱弁をふるうが、店長をはじめ、他の人はいまいちついてこない。
しまった、やや飛ばしすぎたか。

 

「ほら、読んでみたいでしょ!」と強引に薦める。

 

店長「内容がいいならいいんだけどね〜。この装丁も損してるよね」

加藤「装丁のことは言われると思ったんです。へこんでるし」

店長「面白そうではあるな」

加藤「読んでみたいでしょ!?」

店長「読んでみたいけど10円。状態が良ければもうちょっと」

加藤「ええーっ!」

 

第1ラウンド:加藤の結果
『実録!女子刑務所のヒミツ』

10円

 

店長に「ちょっと読んでみたい」とは思われたようだが、内容が不確かなのと、装丁の悪いタイプの本だったため、あえなく10円。

加藤の「女囚モノはイケル」という、よくわからない推測が大外れに。

 

 

第1ラウンド 2人目:Yさん

加藤の紹介がすべったのを目の当たりにしたYさん、少しやりにくそうにしながらも、自分の本を取り出す。

Yさん「自分の趣味で選んできました。『F1ワハハ読本』です」

 

『F1ワハハ読本』川井一仁

 

Yさん「92年に発売された本です。あ、F1はご存知ですか?」

店長「F1はあんまり…」

あいにく店長はF1をあまり知らなかったが、ここからYさんの猛アピールが始まる。

Yさん「当時、アイルトン・セナがまだ存命で、中嶋悟が引退するっていう年に出た本で、F1ファンにとっては懐かしい本なんです。昔の熱いF1のレポーターさんがですね、実際にサーキットで見たことが書いてあります。今は、F1のドライバーって意外と仲いいらしいんですよ」

一同「へえ〜」

Yさん「でも、このころのF1って今より生々しいというか、お互いの悪口なんかも飛び出したりもしていたんですが、その時代のナマの証言なども載ったりしていて、F1ファンにはたまらない!」

一同「ほお〜」

 

Yさん以外F1ファンはいなかったが、Yさんのトークでなんとなく読みたくなってきた。

 

店長「うーん…本としての作りはいいんだろうな、という気はしますね。F1はよくわからないんだけれども」

Yさんの熱弁に、ちょっと好意を持ち始める店長。
さらにたたみかけるYさん。

Yさん「こういう本ってあまり残っていないんだろうなって気がします。日本人ドライバーがすごくがんばっていた時期だったんですよ。中嶋悟の他に鈴木亜久里とか」

店長「うち、プロレスなら置いてて、好きな人は買っていくから、そういうのも買う人いるんだろうなとは思うんだけど…」

Yさん「日本でF1グランプリの中継が始まったのが87年なんですよ。だから現存する資料っていうのも、87年あたりから徐々に増えていく感じで。F1の資料としてはそれなりに古い方だと思いますよ」

店長「うう〜〜ん、うちにこの本持って来られたら、50円かな」

Yさん「50円か〜。でも加藤さんが10円だったから、ちょっとうれしい」

第1ラウンド:Yさんの結果
『F1ワハハ読本』

50円

 

F1にうとい店長にも熱血アピールで、Yさんが50円をもぎとった!Yさんのプレゼン力の勝利と言えよう。

 

 

第1ラウンド 3人目:Bさん

Yさんがやや高評価を得たおかげで、少し場が暖まってきた。
店長と本の趣味が非常に似ているBさんが、余裕の面持ちで立ち上がる。

ふと周囲を見回ると、別に立ち上がらなくてもいいのに、なぜか全員が立ち上がっていた。
もう座ってはいられないほど、白熱しているということだろうか。

Bさん「私が救ってきたのは、この本でございます。『ロートレック荘事件』」

 

『ロートレック荘事件』筒井康隆

 

店長「おっ!」

本を出した瞬間の、店長のリアクションが今までと違う。
この段階で、わが身の不利を察する加藤とYさん。

Bさん「私これ、文庫版持ってます」

店長「俺も持ってる」

Bさん「この本が105円コーナーにあってびっくりしたんですよね。105円ですよ?中のロートレックの絵が大きくてきれいなんですよ。表紙のカバーは下が透けるようになってるんですね。図版と解説も入ってます。チラシも入ってます。これがなぜ100円なんだと」

店長「俺もそういう気持ちだ」

Bさん「この本が100円で売られていたことに憤りを感じます」

店長「確かに。あったら俺も買ってたわ」

Bさん「これぞ古本レスキューです」

店長「文庫版ならうちの店にもあるんだけど、どこだっけ」

Bさん「『ロートレック荘事件』はあの棚の上です」

加藤「なんでBさんの方が知ってるの?」

 

上が文庫、下がハードカバー。

 

Bさんと店長の、ものすごい意気投合ぶりにおののく。
この2人は本の趣味が似ていると知ってはいたが、第1ラウンド目からここまでのシンクロニシティを見せるとは思わなかった。

店長「いやー、いいものを見せていただいて」

加藤「店長、明らかに私たちの時と反応が違うじゃないですか」

店長「でも本自体は、手に入らないものじゃないんでね、100円」

Bさん「やった、3ケタが出ました!」

店長「うちに売りに来たお客さんが、こういう熱弁をふるったら150円まで上げる。俺も好きな作品だから、良いって言ってくれたら『そうだよなー』って200円。でも、この小さな傷が惜しい」

第1ラウンド:Bさんの結果
『ロートレック荘事件』ハードカバー

100円

 

Bさんが100円という高得点をたたき出した。
10円50円という世界で停滞している加藤とYさんにとって、100円は遥か遠い世界だ。

 

第1ラウンド:判定


ここまで見ると、買取価格だけでは、Bさんの勝利かと思われるが、今回の最終的な判断はあくまでも金額ではなく、「本選びのセンス」で決まる。
第1ラウンドの勝者は…。

店長「『ロートレック荘事件』だな。Bさん」

Bさん「やったー!」

店長「女囚はちょっと…」

加藤「女囚はキャッチーだと思ったのですがダメですか。女囚好きにはたまらないですよ」

店長「女囚好きねえ」

Bさん「ターゲットが狭いよ」

というわけで第1ラウンドの勝者はBさん。
本を出した瞬間の、店長のリアクションからして、予測できた結果であった。
第2、第3ラウンドで巻き返せるのか、加藤とYさんが少し焦り始める。

 

第1ラウンド終了時 結果

参加者1:加藤

 

参加者2:Bさん

 

参加者3:Yさん

 

 
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