「願桜」。がんざくらと読む。

東京は大森地区の伝統行事で、その行事を行うと桜の開花期間が長引くのだそうだ。
実際、大森の桜の寿命の長さはよく知られている。

今回の「伝統探検」はこの行事、願桜に迫ってみたいと思う。

伝統行事というと仰々しいものを思い浮かべるが、この願桜は違う。代々執行をまかされたもの4名のみでひっそり執り行われるという。

起源などはすでに曖昧だが、江戸時代にさかのぼるという説が有力だ。当時大の桜好き、そして花見好きの商人が仲間をあつめ桜の散ったあとも100日間毎日桜の木の下で宴会を行った。すると翌年からその周辺の桜の寿命がぐっと伸びたという、土地の者なら知らぬものはいない言い伝えがある。

以来、100日間とはいかないまでも毎年その4人での長期にわたる宴席がもうけられ、それが今に続いている。執行役は江戸時代のメンバーが代々受け継いでいるというのだからすごい。

「とはいえ、今じゃ100日はもちろん、30日も宴会を続けるなんて無理だからね」

と、執行役の一人、Aさんは笑う。近頃は平日の1日に昼から深夜にかけて行うのが通例となっているそうだ。

今回、極秘に行われており場所も公表されていない願桜を見せていただいた。由緒ある行事だが伝統の会場が公共の場であることから場所やメンバーは公にされていない。

 


これが本邦初公開、願桜の実際の様子である!

 

Aさんが父親から執行役を引き継いだのは20年前。「そりゃおどろいたよ。噂に聞いていた願桜執行役がまさかオヤジだったとはね」

とまどいながらもメンバーに加わったAさんが、今ではいちばんの古株だ。去年一人が交代したこともあり、Aさんも交代を考え始めているという。

「息子は喜ぶと思うよ。桜も酒も好きだから」

願桜はビニールシートの上に車座になって男4人がビールや焼酎を飲む続けるというものだ。つまみもコンビニやスーパーの総菜と気取らない。代々受け継がれた4人のみが許される、けれど内容的には大変にカジュアルな集いであった。

これからも4人は伝統を守り続け、大森の桜を見守ってくれるのだろう。


この記事はエイプリルフール企画のために作ったうその記事です

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