両手を背中のほうに伸ばしてコップを持つと後ろに引っぱられる。僕が小学生のころにはやった遊びだ。
当時はお化けだ!なんて騒いで怖がったものだが、腕の筋肉と体やバランスをとろうとする作用などを考えればその理由が分かるかもしれない。
あの遊びを大人の視点から検証します。
(林 雄司)
知らない人のために説明します
この遊びは世代差があるらしく、全く知らない、やったことがないという世代もあるので(大ブームは昭和58年頃らしい)、説明します。
1.うしろに手を伸ばし、水を半分ぐらい入れたコップを置く 2.顔は正面、かかとを少しあげる 3.腕が引っぱられるような感覚があり、うしろに進んでしまう
未体験のひとはまずご自身の体でおためしください。
20年ぶりぐらいにやったがやっぱり面白い。
うしろに引っぱられるのではなく、うしろに倒れるのを避けるためにバックしてしまう、という感じである。運動神経のいい人はそうならないらしいので(中学校のころ、器械体操で高校に入った高橋君はならなかった)、編集部のスタッフに協力してもらった。
100%である。みな面白いように後ろ向きだ。横山さんはこの遊びを知らなかったらしく、たいへん驚いていた。
「高知じゃこんなのなかった。きょう子供に教える」
と息巻いていた。世代のほかに地域差もあるらしい。関東以北の流行だったようだ。
考察
なぜこんなことが起こるのか考えてみた。
不安定なコップを倒さないように腕を上にあげようとする。しかし人間の肩は後ろ手では肩以上あがらないため、伸びようとする筋肉は後ろに収縮する(脳では上に伸びていると錯覚している)。
こういうことではないだろうか。
両手をうしろに伸ばした状態で上にあげることができれば、この錯覚を感じないで済む。前述の中学時代の同級生の高橋君は、体操の訓練をしていたから引っぱられなかったのだ。家がでかいからではなかった。
そんな訓練を受けてない僕らでも、後ろ手で持ったコップが安定していれば引っぱられないかもしれない。
後ろ手でコップを持ったままじっとできている! すごい。これぞおとなの知恵だ。子供時代の復讐をした気分だ。これはお化けでもなんでもない。科学の勝利。
が、このとき風が吹いてコップが倒れそうになってしまった。コップの状態が不安定になった瞬間!
よくわかりませんでした
分かったようなことを書いてしまったが、そのあとコップの持ち方をいろいろ変えてみても結局うしろに進んでしまった。やっぱりお化けなのかもしれない…。
分からないからこそ大切に思えることもあるのだ。負け惜しみではなくそう思う。プライスレスだ。