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ひらめきの月曜日
 
襟裳の春は本当に何もないのか
位置関係はこんな感じ。


北海道も遅ればせながら、少しずつ春めいてきました。

そういえば森進一の曲「襟裳岬」(作詞:岡本おさみ 作曲:吉田拓郎)で 「襟裳(えりも)の春は本当に何もない春です」
と言われていた襟裳岬。

襟裳岬には本当に何もないのでしょうか。
いや、本当は何かあるはず。

そんな思いつきで、札幌から片道約223km、約4時間半かけて(私調べ)、襟裳岬まで行ってきました。

(text by 加藤 和美



■道中、気分を盛り上がる

襟裳岬に行くと決まったのはいいけれど、実は私、前述の歌「襟裳岬」がそれほど記憶にない。

そう白状したら、同行者が自分のiPod shuffleを差し出してくれた。
中には、森進一の「襟裳岬」が入っているという。
お礼を言ってiPod shuffleをカーステレオに接続すると、「襟裳岬」が車内に流れ始めた。

おお、雄大かつ、ゆったりした流れが、本当に北海道をあらわしてるようだ…。

感心しながら聞いていたら、また「襟裳岬」が流れ始めた。
同行者は、iPod shuffleに「襟裳岬」1曲だけを入れて、持ってきてくれたのだった。

そんなわけで自宅から道央自動車道に乗り日高自動車道を下りるまでの約3時間、車内に流れていたのは「襟裳岬」1曲のみ。

1時間も「襟裳岬」を聞いていると、いつのまにか歌を覚え、自分も歌い始めていた。

そのまま2時間くらいたつと、なぜか私と同行者2人とも森進一のモノマネで「襟裳岬」を歌うようになっていた。不思議だ。


「襟裳岬」ヘビーローテーションで、いやがおうにも襟裳への想いが強まっていく。


なぜ「襟裳岬」1曲だけなんだ。

日高自動車道から、ただひたすら国道336号線を進む。
日高地方へ来たのは初めてだが、とにかく馬の牧場が多い。
有名な馬産地だとは聞いていたけれど、とにかく馬、馬、馬。

日高から浦河にかけて、ただひたすら馬の牧場が続く。壮観だ。


道央自動車道から、日高道へ。
こちら「キツネ注意」の交通標識。かわいい。
人影を見ると近づいてきた、なつっこい馬たち。
えりも町が近づいてきた!

 

 

岬の突端近くは、丘が続くばかり。
おみやげもの屋さんは閉まっている。

■襟裳岬には何があるのか

えりも町に入り、襟裳岬に近づいてきた。
ここで再びiPod suffleをセットし、「襟裳岬」を流して気分を盛り上げる。

岬に近づくほど民家が少なくなり、丘陵が続く。

…………。

もしかして、本当に何もないのか?
不安になりながらも岬の先端へ向かうと、観光施設「風の館」が見えてきた。

「風の館」の案内によると、襟裳岬は日本屈指の強風地帯なのだそうだ。

襟裳岬に行ったことのある友人も「風が強いよ!」と強調していたので覚悟していたのだが、この日は風がほとんどなく、襟裳岬にしては珍しい日だった。

強風ということは寒いだろうと思い、冬用のコートを着ていったのに、気温も高かった。

そのため、暖かな日に私1人だけモコモコの厚着。
他の観光客に見られてかなり恥ずかしかった。

 

手前が島倉千代子の歌の歌碑で、奥が森進一の歌の歌碑。

■いよいよ岬の先端へ

まずは岬の南端から太平洋を眺めようと、「風の館」の脇を抜けて進む。

「風の館」の上に「襟裳岬」の歌碑があった。
しかも2つも。

歌碑を読んでみると、「襟裳岬」というタイトルの歌は、森進一の歌と、島倉千代子の歌の、2曲あると言う。

私は島倉千代子の方の歌は知らなかったが、歌が2曲もあるというのはすごいぞ、襟裳岬。

 

ナイス記念写真スポット。

■岬の先端はどこ?

歌碑を通り過ぎると、海が見えてきた。
記念写真にピッタリな看板も設置してある。

はしゃいで写真を撮ったりしていたが、よく見るとまだ先がある。

ここは岬の先端ではなかった!


南に向かって、細くて長い道が延びていたので、さらにその道を進む。
岬の先端へ続く風景も、また良い。

 

岬の先端はまだまだ先だった。
あそこが南端かな?
襟裳岬の展望台から、太平洋を望む。

 

コンブを干しているところも見たかった。

■先端はまだ先!

展望台から眺めると、まだ南に向かって道が延びていた。

周囲には民宿や、猟師さん宅らしき民家がポツポツとある。
波の音がどどっ、どどっと響いていて、こんな岬の先端に住むなんてすごいなあーと思いながら進んでいたら、看板が立っていた。

「砂利を敷いた場所はコンブ干場です。入らないでください」

残念ながら、コンブ干場だったため、襟裳岬の南端には行けなかった。

石碑のようなものがあったが、近づけないので確認できず。


 

本当の南端はあそこだが、コンブ干場なので立ち入れない。
猫がひょっこりあらわれた。岬そっちのけで、猫と遊ぶ。

 

こちらは「風の館」入口。

■襟裳岬には何かいる

太平洋を拝んだので、「風の館」へ。

襟裳岬には、1年中、ゼニガタアザラシが生息しているという。
案内パネルには240頭いると書いてあったが、肉眼で海を見てもさっぱりわからない。

もしかして、アザラシは、この時間は見えないのか?
しまった〜!

大慌てで、セットされた望遠鏡を覗いた。

矢印の位置にアザラシがいるらしい。
岬の岩礁を、望遠鏡で覗くと…。
「風の館」から見た襟裳岬先端。この写真の中に、アザラシが240頭ほどいるというのだが…。

■アザラシどこだ

普通の望遠鏡の他に、テレビ望遠鏡もあったので、そちらでも確認してみた。


これがテレビ望遠鏡。手前の画面に画像が映る。

テレビ望遠鏡の画面を撮影。うわ、いた!!ゴロゴロしてるよ!!
(アザラシ、どこ?という人はマウスオーバーで矢印が出ます)

ゼニガタアザラシはいた!

肉眼では何もわからなかったのだが、アザラシがビッシリ岩礁に転がっていた。
しかもすごい数。

午後になり波が高くなってきたようで、大きな波をかぶるたびに、アザラシたちがのけぞって波を避けるのが面白い。

また、「風の館」の職員さんの説明によると…。


ぷかりと浮かんだ黒い頭が、ラッコ。

大勢のアザラシに紛れて、1頭だけ、ラッコもいた。
岩に囲まれてプールのようになっている場所で、プカプカと浮いていた。

高い波にいくら揺らされても、平然と浮き続けているラッコ、かっこいい。


アザラシとラッコって、大波ではこうなるのかー。
水族館では見たことがあるけれど、野生は初めて見た!
そう思うと、襟裳岬はすごい。


ゼニガタアザラシは、ほぼ私と同じ体長。

「襟裳の春は何もない春です」と歌ってはいるが、
襟裳の春には、ゼニガタアザラシがたくさんいる。
春じゃなくてもたくさんいる。


いろいろお話をしてくれた、「風の館」の職員さんに、何気なく
「歌で、襟裳の春は何もない春ですって言われてますけど、地元の人としてはどう思いますか?」
と聞いてみた。

職員さんは笑いながら、
「何もないって言われると、ちょっと怒っちゃいますねえ。でも、あの歌のおかげで襟裳が有名になったから、ありがたいですね」
だそうだ。

なるほどー。

ちなみに、閉まっていたおみやげ物屋さんは、日によって開店しているそうで、お店をたたんでいるというわけではないとか。
ちょっとホッとした。

■襟裳の春は…

襟裳岬の周辺は、確かに何もないように見えました。
見えるのは丘陵と、少しの民家のみ。

しかし実際には、以下のものがありました。

  • 「襟裳岬」の歌碑×2
  • 風の館
  • 灯台
  • コンブ干場
  • 人なつっこい猫
  • 強風(ただしこの日は無し)
  • ゼニガタアザラシ×240頭(日によって変動あり)
  • ラッコ1頭(日によって変動あり)

私たちは望遠鏡でアザラシを眺めながら、「襟裳岬」の歌詞について話し合っていました。

あくまでも推測なのですが、

「襟裳の春は何もない春です」

というのは、

「物理的に何もないのではなく、襟裳では変わりなく過ごしていますよ」

という意味ではないでしょうか。


のんびり寝転ぶアザラシたちと、波に浮かぶラッコを眺めていたら、そんな結論に達したのでした。

「風の館」の強風体験をしたら、こんな頭に。

 
 
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