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ロマンの木曜日
 
携帯メールの速打ちを練習する

携帯メールが苦手だ。いくらやっても速く打てるようにならない。最近は仕事のメールも携帯電話でやりとりする事が多いのだが、時間がかかって仕方ない。電話で用件を伝えた方がよっぽど速い。親指だけで操作しないといけない感じが、どうにもしっくりこないのだ。それでも、若い子たちは当然のように携帯メールを速く打つ。文字パネルを見ないで打てる子もいると聞く。携帯メールのブラインドタッチだ。凄い。出来れば僕もそれくらい打てるようになりたい。

という訳で、携帯メールの速打ちを練習する事にした。

(text by 住 正徳



携帯で奥の細道

携帯メールを速く打てるようになる為には、とにかく沢山の文章を打って慣れるしかない。習うより慣れろ、だ。でも、何のあてもなしに長い文章を打つ事は難しい。何か見本が必要である。

そこで僕が選んだ見本は、「奥の細道」である。そう、あのベストセラー「えんぴつで奥の細道」へのオマージュだ。「えんぴつで奥の細道」は「奥の細道」に綴られた松尾芭蕉の文章を鉛筆でなぞる、という鉛筆習字の教本のようでありながら、100万部も売れたユニークな本である。鉛筆でなぞる事で芭蕉の世界に入り込む事が出来て、更に字もうまくなるという仕掛けだ。

今回はそのギミックを携帯メールの練習に使う。「奥の細道」を携帯メールで打つ事で親指の運びを鍛え、結果的に奥の細道にも詳しくなれるという寸法だ。いわば、携帯電話を使った写経のようなものである。


図書館で奥の細道

「奥の細道」を求めて図書館にやって来た。



図書館で特訓だ

携帯メール用の教材として

平日の昼間であったが図書館の机はほぼ埋まっていた。調べ物をする人や仕事をする人など、みんな自分の世界に没頭している。これだけ静かな環境下であれば、携帯メールに集中出来る(PCと通話を除く通信機器の使用が許可されている閲覧スペースです)。


「えっと……、月日は」 ハクダイの……


初っ端からつまずいてしまった。「百代」は「ハクダイ」もしくは「ハクタイ」と読む訳であるが、その読みのままだと変換候補が平仮名かカタカナのみになってしまう。面倒くさいが「ひゃく」と打って変換、「だい」と打って変換した。

このような事は教材が古典であるが故の弊害であるが、携帯メールの操作に慣れるという意味ではむしろ好都合かもしれない。面倒な変換を繰り返すうち携帯メールが速くなる。その効果を期待したい。



かかく… 「過客」は候補にあった

変換候補にあるものとないもの、それぞれランダムに出現するので想像以上に手間がかかる。「おもひ」と打って変換しても「思ひ」とはならず、「おもい」と打って変換して「い」をクリアして「ひ」を打って……。


飽きてきたなあ…

どんどん面倒臭くなっていき、明らかにスピードダウンしていくのが自分でも分かる。大体、「思ひ」なんて速く出せるようになったところで、何の役に立つというのか。読み通りに変換出来ない単語が頻出するので、「奥の細道」の世界に没頭する事も出来ない。

自分で考えた練習法ながら、苛立ちがたまっていく。


何とか完成

完成まで20分近くかかってしまった。 速打ちの特訓であることを途中で忘れていた。

どうしよう。

携帯メールを速く打てるようになって、更に「奥の細道」にも詳しくならないといけないのだ。

場所を変えよう。

「奥の細道」に由来のある場所でタイピングを練習すれば、当初の目論み通り事が運ぶかもしれない。


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