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ひらめきの月曜日
 
マタギの里で熊肉を買った

さっそく調理へ

保冷バックに入れた熊肉を持って、東京に戻ってきた。さあ、どうやって食べてやろうか…と思案するだけで心が躍る。なんたって100g1,000円の肉である。

10年ほど前に熊牧場で熊汁を食べたことがあるが、あれはちっとも臭くなかったし、肉も柔らかかった。

同じように出来るといいなぁ、と思いながら袋から取り出すと、中にはこんなものが入っていた。


簡単な調理の仕方が書かれた紙が。
「聞き取り」ってところがすごい。
300gにしては大きいな…と思っていたら、
新聞紙で何重にも包まれておりました。さらにジップロックで完全武装。

おお、これが熊の肉か。いったい、どの部分の肉なんだろう。脂身がすごいな。こんだけ脂肪があったら寒くないだろうな…。

いろいろな思いが頭の中を渦巻く。そして、なんといいますか、やはりクサイ。獣の匂いがむーんとする。

でもまぁ調理すれば何とかなるに違いないと、さっそく調理に取りかかった。この程度の匂いにビビっているようでは話が先に進まない。


いざ、入刀。
切り方は、こんなもんでいいのだろうか。

マタギ直伝の熊汁を作ろうと、さっそく水と日本酒で肉を煮ていく。と、ものすごい量のアクが出てきた。この量、ちょっと尋常じゃない。

匂いも「近所の人に通報とかされるんじゃないか」と心配になってしまうほど強烈だ。つまりクサイ。


だ、大丈夫なのか…

「マタギは具を入れず、肉だけで食べる」と書いてあったが、私はマタギじゃないので「他に入れるとすれば大根、豆腐、ネギ等」と表記してあった通りの物を入れることにした。というか、肉だけで食べる自信がない。

味付けは「醤油か味噌」だそうだが、ここはあえて両方入れてみた。濃いめがいいとあったので、言われた通り濃いめに作った。もう、言われるがままだ。


出来上がりました。熊汁でございます。

まずは肉を恐る恐る食べてみる。…ん? そんなに臭くない。なんだ、大丈夫じゃないか、と続けて脂身の部分を口に入れた時であった。

獣が鼻腔を駆け抜けたような匂いがした。あえて言うならば「むはっ」というか「もほっ」というか、なんとも表現しようのない、強烈な匂い。

た、たまらん…。


脂身じゃないところはまだ大丈夫なんですけどねぇ。
残した。

簡単に「残した」とか言っていい肉じゃないことは分かっているが、これ以上はとても食べられなかった。どうせ食べるなら美味しく食べたいじゃないか。

ってなわけで、残した肉の二次利用と行こう。


肉をざっと洗ったら、
玉ネギやトマトやハーブと一緒に煮込みまくります。

ローリエやセージといったハーブの効能に「肉の臭みを消す」とあるのを読むたびに「牛や豚がクサイか?」と疑問に思ってきた。

そんなハーブたちの能力を、ここでいかんなく発揮してもらおうではないか。今こそ出番だそ!


熊のトマト煮込み、完成。
香辛料の威力や如何に

こ、これ、臭くないですよ! すごい! っていうか、おいしい!

何が驚いたって、さっきはあんなに獣臭かった脂身の部分がおいしかったことだ。肉だけの部分より、ずっとおいしい。クセは残っているが、それが悪く作用しておらず、なんともいえない味のアクセントになっている。これは赤ワインが絶対に合う。ああ、うめー。そしてハーブってすげー。

 

感動したままもう一品

先ほどから「焼肉のタレ」に漬け込んである熊の肉を焼いてみよう。


香辛料が入りまくりのタレだもの、大丈夫なハズだ。
焼けました。

妙にテリテリと光り輝く肉を食べてみる。…これもうまい。独特のクセはあるが、ジンギスカンが好きな人ならば、なんの問題もなく食べられる味だと思う。うん、これはビールだな。

いつもこういう肉ばっかり食べてたら、牛や豚が物足りなく感じてしまうんじゃないか、とさえ思えるような味であった。

ちょっと驚きました

さっきから体がホカホカと温かいのは、一度に300gも熊肉を食べたせいだろうか。(効用は知りません)

「新鮮な熊の肉は生でもおいしい」というのは聞いたことがあったが、冷凍の肉でも、調理の仕方次第では十分においしくなることが分かった。まさかここまで…と思う味であった。

マタギが食べたという熊汁も、新鮮だったからこそおいしかったのだろう。

それにしても熊のトマト煮込み。…ああ、また食べたい。夏休みに再び阿仁を訪れ、熊の肉を買わずにいる自信が私にはない。

食べてごめんね。でもおいしかったよ。

 
 
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