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はっけんの水曜日
 
168円で立体的に録音する

■バイノーラルマイク2号製作開始

 まずコンデンサマイクをもっと小型で高性能の物にします。色々調べて見つけたのがPanasonicのWM-61Aというコンデンサマイク。20Hzから20000Hzという、人間に聞こえる音周波数全域をクリアに受信出来る素敵なマイクです。しかしこれはどうもアメリカから個人輸入しないと買えないらしいのです。

 Panasonicの製品を輸入って意味がわかりません。しかも送料が2000円かかるし5000円以下の買い物には1000円の手数料が加算されます。

高性能コンデンサマイク30個。

 しかして3日後、気が付いたら僕の手元に30個のWM-61Aが届いていました。送料と手数料を考えたら2個だけ買うのがバカらしくなってしまい、カッとなって30個買ってしまいました。しめて8500円。

「168円で立体音響」というコンセプトはどこにいったのかという値段ですが気にしないでいきましょう。

 

■究極の人間工学

 袋から2個取り出して、前述と同じ手順で半田付けします。出来上がると見事小さいバイノーラルマイクが出来ました。が、今度は小さすぎて耳の穴の中で固定出来ません。こんな時はエポパテの登場となります。


右が84円のマイク。左がWM-61A。凄く小さい。

 エポパテというのは、柔らかい粘土みたいな樹脂と硬化剤を混ぜると30分くらいで固まる便利な素材です。こねて、スピーカーの周りに付けて、耳の穴に突っ込みます。すると、僕の耳にピッタリはまるバイノーラルマイクが完成します。

こんな生々しいバイノーラルマイクもそうそうあるまい。

人間工学的に完璧なオーダーメイドです。素敵。

肌色でちょっと生々しいのがアレですけども・・・・。


耳に付けるとこんなです。ピッタリ。

WM-61Aは28個余りました。バイノーラルマイクがあと14セット作れます。

■コラム 本当はダミーヘッドを使います

 本格的なバイノーラル録音ではダミーヘッドと呼ばれる作り物の頭を使います。「標準的な頭」を再現した物で、耳の中にマイクが埋め込まれています。

 ダミーヘッドの利点は、個人差による音の変化を平均化できる点で、リアルヘッドよりも一般向けの音が収録出来ると言われています。

 が、高い。普通に100万円とかします。とても買えませんので今回は僕の頭(リアルヘッド)を使って録音しました(ダミーヘッドの自作も大変ですし)。

 この方法の欠点は「僕の頭と形や大きさが違う方が聴くと音が立体的に聞こえないかも」という事です。録音出来たのは僕の頭と耳の影響を受けた音だからです。特に女性や子供は立体的に聞こえないかも知れません。その辺はご了承ください。

ダミーヘッドの利点

  • 個人差に影響されない平均的な録音が出来る(万人が立体的に聞こえる音が収録出来る)。
  • 呼吸音や心拍を録音しないのでノイズが少ない。

ダミーヘッドの欠点

  • 高い。
  • 録音するときに目立つ、不気味。
  • 荷物が増える。

 

■2号の成果を聴いてみて下さい

 こうして出来た2号機で色々録音してみました。まずはまたマッチ箱。実は最初のマッチ箱デモも2号機で録ったのですが、これはこれで面白い音が録れたので聴いてみて下さい。


マッチ箱のサンプルその2

00:05 右で同居人がDSで遊んでいます。マッチは右から首の後ろを通って左へ
00:12 左からまた後ろを通って右に行き、顔の前を通って左へ
00:16 首の後ろを通って右へ
00:22 また顔の前を通って左
00:25 首の後ろを通って右へ
00:30 顔の前に出た後上に移動
00:35 上から頭の後ろへ移動、また上へ
00:39 下に移動中、右からハイスコア更新の喜びの声
00:45 下、背中の後ろ辺りをウロウロと移動。最後また上へ移動

 

■雨の日、ビニール傘をさして歩く

次は雨の日、ビニール傘を差して歩いている状況。傘に当たる雨の音が頭上から聞こえてきます。たまに風が耳を触ります。

頭上から聞こえる雨音に注目してください。

 

■半蔵門線が停車して発車するまで

半蔵門線に乗りました。進行方向を向いてドアの横に立っています。駅に電車が止まった後、右でドアが開きます。その辺りの音と圧迫感の変化を聴いてみて下さい。

ドアが開いたり閉じたりする部分が聞き所。

 

■デイリーポータルZの打ち合わせ

毎週どこかで行われている企画会議の様子です。大人達が真剣に女装とかピエロの気持ちについて話し合ったりします。席順は下の写真の通り。

僕の左に林さん、木村さん。すぐ右に橋田さん、斜め右前に宮城さん。正面に藤原くんとほそいさん。林さんが企画を発表する様子をお楽しみ下さい。藤原くんの気配も感じて頂ければ幸いです。うっかり何度か笑ってしまいました。すみません。

 

路上で売ってる操り人形の話とゴルフの話です。

今回のサンプルは以上です。立体的に聞こえたでしょうか?それともいまいちだったでしょうか?うまく聴けてればいいのですが・・・・。

■バイノーラル録音は楽しいよ

 どうだったでしょうか、今回のバイノーラル録音入門。普通のコンデンサマイクなら秋葉原の電子パーツ屋さんで売ってますから本当に168円で出来ちゃいます。それでも十分に楽しい録音で遊べます。

 バイノーラル録音にも弱点があります。前方定位です。音源が目の前にある場合、それをいまいち感じることが出来ません。それを改善した録音方法もいくつかありますが方法は明かされていません。

 今後は前方定位をどう出すかという課題に取り組みつつ、面白い音が録れたらまた報告したいと思います。それではまた、そのうち。


 
 
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