自転車に乗っているとやたらと気になるもの、それが坂。
上り坂はなるべくさけたいが、下り坂はうれしい。しかし中には下ったと思ったら同じ分だけすぐ登る坂(命名:いってこい坂)もあり、やきもきしてしまう。
今回はそういう坂をあえて見てみたいと思います。
(text by 三土たつお)
都内の「いってこい坂」を見ていきます
「いってこい坂」は突然あらわれる。
たとえば東京の本郷にあるハンバーガー屋さん、「ファイアーハウス」でハンバーガーを食べ、自転車で家まで帰るとき。
上の写真の道を右へ曲がると、問題の坂が現れる。(写真がとつぜん昼間になります)
ここから下りの予感
地面が落ち込み、遠くのビルの2階の高さに目が合う。自転車に乗っていて、心が軽くなる瞬間だ。ここから先はペダルを漕がなくてもいい。そしてなるべく長くゆっくり続いてほしい。
ところが!
こ、これは・・
ギャッ!下った分だけ登ってる!
行って来い坂!
今回の記事はこれがやりたかっただけなのですが、つづけます。(画像の二階調化はこの記事を参考にしました)
地形をみてみよう
下ったぶんだけすぐ登る坂ほど、金返せという気分になる坂はない。はじめから平坦にしてくれたほうがよほどいいのに。
こういうことをしてくれた犯人は誰なのか。そのために、このあたりの地形を見てみることにしよう。
矢印の左側がこの坂。国土地理院発行「1:25,000デジタル標高地形図(東京都区部)」より。
緑色が坂の下、黄色が坂の上、紫色の点はファイアーハウスの位置である。
こうして見ると、このいってこい坂がより大きな谷を横断する道だったということが分かる。なにげない生活の中で毎日谷を渡っていたとは。
そして忘れてならないのは、谷があるということは、このあたりには昔は川が流れていたのに違いないということだ。
地元の方に訊いてみた
さきほどの坂からちょっと右側(上流側)に登ったところにある食料品屋さん、「シナノヤ」のご主人にお話を伺った。
「裏にほんとの菊坂があるんだよ。旧菊坂。ここは川だったから。」
この坂は菊坂といって、昔は確かに川が流れていたらしい。しかし今では地面の下にもぐっているとのこと。つまり暗渠だ。今では面影もないが、あたりには菊畑が広がっていたそうな。
そして辿りついた水源はこのあたり。
かつての水源
本郷通りの交差点に近い「カット&パーマ ホンゴウ」の横あたりだ。マンホールからはけっこうな勢いで「ごうごう」と水の音が聞こえてきた。