年の若い後輩から恋の相談を受けた。どうやら、近所のスーパーのレジ係に惚れてしまったらしい。キュートな外見はもちろん、テキパキと商品をさばく手際の良さにグッと来たのだという。ああいう女性となら結婚してもうまくやれる。後輩の妄想は結婚生活にまで及んでいる。しかし、恋に臆病なその後輩は、未だに声をかける事すら出来ないでいる。そこで僕に相談を持ちかけた訳だ。
どうやって思いを伝えたらいいでしょうか?
一人で悶々と悩む後輩を放っておけないので、僕なりにベストな方法を考えてみました。
(text by 住 正徳)
精算時間内にキッカケを作れ
レジの女性に声をかけるには、自分の買い物を精算してもらっている間に何らかのキッカケを作るしかない。時間は限られてしまうが、逆に考えれば話しかけるチャンスは必ずあるのだ。これが、毎日通勤電車で見かける人だったりしたら、レジの女性よりも難易度が高い。
そこで、精算時間内に会話に持ち込むためには何が必要か、考えてみた。
・商品点数をなるべく多くして時間を稼ぐ。 ・とはいえ、予算は限られるので一点一点は小額で。 ・さりげなく自分の事をアピール出来る商品を選ぶ。
以上を考慮しつつ、実際に買い物をしてみる事にした。後輩の気持ちになって、レジの女性と会話のキッカケを作れるかどうか、検証するのだ。
キッカケになりやすい商品をチョイスせよ
会話に発展しやすそうな商品を選んで、買い物カゴに商品を入れていった。
確かに一目惚れかもしれないが、だからと言って「ひとめぼれ」をレジに出して「自分の気持ちです」と伝えるのではひねりがない。気持ちワルっ、と一蹴されかねない。
もう少し自然と会話に持ち込めるアイテムが必要だ。
猫のエサはどうだろうか。
あ、この人猫飼ってるんだ?→私も猫好きだな→どんな猫飼ってるんだろう?→私も抱っこしたいな。
という思考を経て、「猫、飼ってるんですか?」 と、向こうから声をかけてくるかもしれない。
猫缶はカゴに入れておこう。
インスタント食品を多めに買い込む事で、
あ、インスタントばっかりでかわいそう→料理作ってくれる人いないのかな?→きっと一人暮らしなんだ→何LDKかな?
という思考を経て、「一人暮らしなんですか?」 と、向こうから声をかけてくるかもしれない。
スパ王はカゴに入れておこう。
インスタント食品の中に、ポツンと「からだ想いのマメな生活」みたいな商品を紛れ込ませておく。そうすると、
あ、この人カラダ想いなんだ→若いのに偉いな→私の事も想ってくれるかな?
という思考を経て、「体想いなんですか?」 となる可能性が高い。
デラウエアは単純に僕が好きなので購入した。
という訳で、会話キッカケとなりそうな商品たちをカゴに入れた。全部で8点。恋の始まりを予感するアイテムを持ってレジに並んでみる。
果たして会話は生まれるか? そして、思いを伝える事は出来るのか?
レジの女性に思いを伝える
一番端のレジに並んだ。列の先にはレジを打つ女性の姿が見える。 僕はあの人の事が好きだ。自分に言い聞かせて自分の番を待つ。
好きだ好きだと心の中で繰り返しているうちに、あっという間に僕の番が来てしまった。本当は好きじゃないけど、何だか凄くドキドキする。後輩のためのテストである事を忘れてしまいそうだ。
ああ、僕は本当にこの人が好きだ。
僕の思いを伝える商品たちに手を伸ばすレジの女性。 この中のどれでもいい。会話のキッカケになってくれ!
結局、どの商品にも反応してくれなかった。 まあ、良く考えたら当たり前だ。お客さんの買い物にいちいち反応していたら仕事にならない。
商品でキッカケを作る事が出来ないまま、会計が終わってしまいそうだ。
このまま何も言えずにレジを離れないといけないのか? こんなに好きなのに。
しかし、僕にはとっておきの秘策があるのだ。 レジから出て来たレシートを女性が手に取るのを見て、僕は声をかけた。
「す、すいません。そのレシートを縦読みしてもらえますか?」
レジの女性は言われるがままにレシートを縦読みした。
「ア・ナ・タ・ガ・ス・キ・デ・ス?」 「そう、あなたが好きです」 「え?」
♪ツクツーン(東京ラブストーリーの出だしです)。
結果的には仲良くなれました
と、レシートを使って恋心を伝えてみた訳であるが、選んだ商品が実際にレシートにどのように印字されるのか分からなかったので、「アナタガスキデス」と縦読み出来るようにするのは大変だった。
上のレポートに登場しているレジの相沢さんに全面協力をいただき、色々な商品を機械に通して印字を確認してもらったのだ。例えば「たまねぎ」を機械に通すと「シンタマネギ」となってしまったり、「ガ」が頭文字の商品が中々なかったり、レシートを完成させるまでに小一時間かかってしまった。
そんな事を繰り返すうちに相沢さんとすっかり仲良くなれたので、結果的には成功だったと思う。と、後輩に伝えるつもりである。