生野菜から生け野菜へ

　スーパーに行って細長い野菜と色のついた野菜を買ってきた。この中で普通野菜スティックに使われるのは、きゅうり、大根、にんじん、セロリくらいだろうか。

　そのほかにも使うか使わないかはあまり考えずに買った野菜が以下のように。

ただの野菜たち

　このただの野菜たちを切っていく。もちろん縦に。

　大根やにんじんは植物の根っこだし、きゅうりは実だが、縦に切ることによって茎のようになり、植物っぽさが出るのだろうか。

　腕の血管が太いのは元々ですが、この日は暑かったから余計です。関係ないですが、わきの下に親指、腕の外側にその他の指を置く形で腕をつかむと血管が浮き出て楽しいです。でもやりすぎに注意。

　本題に復帰して、どんどん切ってゆく。野菜スティックは結構太かった気がするが、今回はいけるのによさ気になるようにちょっと細めにする。

　切れたらまずは一本挿しにしてみた。以下さっぱりした画像が続きます。

　どうだろうか。ここからひょいと抜き取ってぱくっと食べる、なんてことはしづらいのではないだろうか。

　ここがおそらく野菜における＜食べ物―植物＞関係のボーダーラインなのかと思う。

剣山にさしてみる

　この花瓶では一輪挿ししかできない。続いて剣山にさして、それぞれの野菜たちのコラボレーションを模索してみたい。野菜をいけた人はあまりいなそうなので、ぼくが野菜流華道の創流者ということでいいのだろうか。いいかもしれない。

　剣山の針は鉄なのだが土台が鉛らしく、嫌な感じがしたのでアルミホイルを敷いた。ただの植物だと思っても、つい食べ物的なきづかいをしてしまう。

　まずはきゅうりをさす。

　剣山にさしただけだとぱったり倒れてしまうのではないかと不安だったが、体を反らせつつも重力に抗うように、立った。

続けてぶすぶすと野菜スティックをさしてみた。

　早速カオスになった。適当にさしてもなんだかよく分からないいたずらオブジェが出来上がるだけのようだ。植物らしいといえば植物らしいが、すこし考えてみた結果、賛成２、条件付き賛成１で整理して配置することに決まった。ひとり会議だけど。

直立。カオスではないが、面白みが無い。

　食べ物や植物はおろか、ただのブロックのようになってしまった。いままで誰も考えたことの無い生物を考えようとして、考えて考えて、考えすぎた挙句モノリスになってしまったような。

　マジメすぎて閉じた感じになってしまったので、次は明るく開いた感じにしてみる。

　この直線的な４種類の野菜だけでは華やかさがいまいちでない。アスパラとパプリカで変化を出してみる。

　細長いものばかりなのでか弱い感じがする。ブロッコリーとプチトマト、サラダほうれん草を加えてみる。

　ボリュームは十分出た。おめでたい感じすらする。しかし、何かがたりない。味気ないのである。そう思ってマヨネーズを添えてみた。

　試行錯誤の結果、ここまで来た。今ここで野菜は生野菜（食べ物）といけ野菜（植物）の両方のアイデンティティを成立させているといえる。野菜の弁証法だ。

　・・・と思ったら、このいけ野菜はしばらくしたらしなしなになってしまった。全然いけられていなかったのである。残念。観賞用には耐えず、さっさと食べてしまったほうが良さそうだった。