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ちしきの金曜日
 
スリランカの首都スリジャヤワルダナプラコッテは国会以外何も無い

着いてはみたものの

スリジャヤワルダナプラコッテへのバス賃は10ルピー(約11円)。 バスが出発してからおおよそ30分経った頃、車掌に呼ばれてバスを下ろされた。

どうやらここが国会議事堂に最も近い場所であり、 ここから国会議事堂までは歩いて行けということらしい。


バスを下ろされたのはこんなところ 後ろを振り向くと、草がもさもさ

左の写真の三叉路のうち、右手奥の道はコロンボ方面へと続き、 左手奥に伸びる道が国会議事堂へ続く。 左手手前の道は国会議事堂を迂回して別の町へと行く道だ。 私が乗ってきたバスは右手奥からやってきて、 そのまま左手手前の方へと抜けて行った形になる。

よし、それじゃぁ、いざ国会議事堂へ。 私は迷わず左手奥へと進んで行った。 しかし、そこは、なんというか、ずいぶんと物々しい雰囲気だったのだ。


なんか兵士がたくさんいる

この兵士たちは、どうやら国会議事堂方面へと向かう車を一台一台停車させ、 それぞれを念入りに調べているようだ。

……なんだか嫌な予感がする。


普通に銃とか持ってるし どこかに連絡とかしてるし

私はなるべく兵士に気付かれないようにこっそり歩いていったものの、 ここはただでさえ歩いて通る人の少ない場所、 しかも肌の色が違う日本人ときたら、気付かれないというのが不可能な話であった。

あれよと言う間に兵士たちがわさわさと私の周りに集まってきた。 そのうちの一人は、いかつい銃を携えている。兵士たちの顔に笑みは無い。

私はさらに一歩前に出ると、兵士たちもまた私の方に一歩近づいてきた。 まるで漫画のようなその光景。場違いながら、私はそれがなんともおもしろいなと思った。

そんな私のおちゃらけた雰囲気を吹き飛ばすかのように、 兵士の手にある銃がチャッと鳴る。 銃口は反れているとはいえ、それは紛れも無いライフル銃。

怖えぇぇ。ホント、マジ怖ぇ。

私は人畜無害な観光客。ただ、国会議事堂を見たいだけなんだ。 とりあえずその旨を説明しようと、私は恐る恐る口を開いた。

「あの、国会議事堂へ行きたいのですが」

英語でそう簡潔に言う。緊張もあってか妙に声が裏返った気がした。 兵士の顔は怪訝なままだ。

外国人が来たという珍しさもあってか、さらに数人の兵士が寄ってきた。 いつの間にか、私は兵士たちに取り囲まれたような形になっている。

一人の兵士が言った。

「許可証はあるのか?」

許可証?なんだそりゃ。 私は国会議事堂に入ろうというわけじゃぁない、ただ見るだけなのに。 それなのに、許可証なんてものが必要なのか?

「許可証が無いならダメだ」
「一目、国会議事堂を見るだけでいいんですが」
「ダメ。許可がないならここを通すことはできないよ」

……なんてこった。現在、国会議事堂への道は軍によって封鎖されていた。 私はなんとか食い下がろうとするが、兵士たちはただ首を横に振るのみ。

 

ちょっとヘコんだ

私が事前得ていた情報では、国会議事堂には入ることはできないものの、 それを見ることができる場所までは行くことができる、という話であった。 しかし、実際には見るはおろか、近づくことさえできないとは……

何を隠そう、この国会議事堂が 今回のスリジャヤワルダナプラコッテ訪問のハイライトであったのだ。

ここの国会議事堂は人口の湖の中に作られた島の上にあり、 周囲にはクリケット場以外何も無いという極めてシュールな光景が広がっている……という話だった。


こんな感じらしい

この国会議事堂が建てられたのは1982年。 その設計はリゾートホテル設計の天才、ジェフリー・バワによりものだ。 国会議事堂が完成したと同時に、スリランカの首都はコロンボから このスリジャヤワルダナプラコッテに移された。

うう、いくら御託を並べようと、む、虚しい……

しかし、なぜこんなにも警備が厳しいのか。 それは少々きな臭い話になるのだが……

スリランカでは、以前よりシンハラ人(仏教徒の多数派民族)を優先するスリランカ政府と、 独立を求めるタミル人(ヒンドゥー教徒の少数派民族)の過激派組織が対立しており、 スリランカ北部及び東北部(タミル人の多数派地域)では度々内紛やテロが起きていた。 しかし2002年に停戦合意がなされ、内紛は一時停止していた。

私の情報はそこで止まっていた。

後から知った話では、近年その停戦合意は破られ、 再び戦闘やテロが何度か起きているということだ。 ここで誤解しないでもらいたいが、スリランカ全土が危険というワケではない。 危ないのは、あくまで北部、東部といった限られた地域。 それ以外は、特に問題なく旅行ができるレベルである。

しかし、それでも当然ながら、政府関係機関は警備が厳しくなる。 国を動かす場である国会議事堂なんてもっての他だ。 どこの馬の骨か分からない日本人など、近づけてもらえるはずが無い。

……さて、いや、しかし……これから一体どうしよう。

スリランカこぼれ話 〜 やけにローカルな日本車が多い

スリランカではよく日本車を見ることができる。 アジアの国において日本の中古車を目にするのはさほど珍しく無いのだが、 スリランカで見ることができる日本車は、 やけにローカルな固有名詞のペイントが残ったままで面白い。

かつては横山畳店のものだった。僕は今も元気です

このようなペイントが残っている車は、トラックかバンがほとんどだ。 日本の商店や企業から払い下げられるのは、これらの車種が多いのか。

思うのだが、このように車に書かれた日本語は、 ある種のハクになっているのではないだろうか。 「俺は日本車を乗り回しているんだぜ」というような感じで。 あえて、消さずに残したままにしているのではないだろうか。

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しかし、所詮中古車であることには変わらないのか、 お金持っていそうな人の多いエリアでは、こういう車は一切見受けられなかった。 そういうところに並んでいるのは、たいていピカピカの新車である。


 

 
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