木の秘密を知ろうと、セミの群がる幹を決死の覚悟で蹴飛ばした。すると、とまっていたセミたちが弾けるように一斉に飛び立つ。降り注ぐ遺留物により僕はびしょ濡れになった。
セミたちがとまっていたあとの樹皮を観察すると、たっぷりと樹液が出ていた。その痕跡は木全体に点在しており、見ていて痛々しいほどだ。そうか、もしかしたらこの木の樹液が特別にうまいんじゃないか。
ということでなめてみた。ぺろり。
あ、やっぱりうまい。というか甘い。樹液は蜂蜜くらいに濃縮された緑の味がした。小学校の頃見つけていたら下校中に毎日吸っていただろう。やはりこの木、セミにとっては甘い液の湧き出す桃源郷だったのだ。 |