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ひらめきの月曜日
 
ちょっとそこまで、29キロ


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だんだん建物がなくなってきた。

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もう、こんな風景ばかり。

■途方にくれながらゆく

同行者がさっさと行ってしまったので、自分も自転車を走らせた。
住宅地を抜けると、建物がなくなって、畑ばかりになってきた。
遮蔽物がないので、強風の向かい風がさらにキツイ。

国道12号線は交通量が多く、車がびゅんびゅん走っているが、道を歩いている人は皆無。
道ゆくドライバーがこちらをジロジロ見ていくのがわかる。
まあ、こんな町と町の間のような場所で、折りたたみ自転車を走らせた(実際には強風にあおられて全然進んでない)女が1人、走っては止まり、走っては止まり、たまに写真なんか撮っていたら珍しいだろう。

1人だけ自転車に乗って走ってゆく近所の人らしき男性がいたが、驚いた様子で私を見ながら自転車を走らせていた。二度見どころではない凝視っぷりだった。

もっとヒト気のあるところに行きたい、と思いながら進む。
何せ、ノドが乾いてもお店も自動販売機もないのだ。

おまけに同行者の姿が全然見当たらない。
携帯電話にかけても、運転中らしく、出ない。
おい、どこまで行った!?

強風は、自転車をこぐ私からどんどん体力を奪っていく。
なぜか耳の後ろが痛くなってきた。
半泣きである。
私はただ、イオンに行きたいだけなのに。


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奈井江町のカントリーサインと。同行者がいないので自分撮り。額に汗が。
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困ったら、バスに乗ろうと思って、時間をチェック。1時間後くらいか。ちょっと頼りなげなバス停…。

途方にくれたので、ひとやすみして写真撮影。

セルフタイマーで自分撮り。途方にくれたようすがよくわかる1枚。
このあと、自転車のサドルに乗せたデジカメが、強風で落下して大慌て。

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これでも必死でこいでいるのだが、進まない。

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強い意志をもって「ギブアップ」。

■がんばったけれど

砂川市から奈井江(ないえ)町に入った。
あれ?奈井江町?
目的のイオンは三笠市である。

私はここで、地図を広げた。地図を見てビックリである。

あの「29キロ」看板を見たのは、砂川市。
三笠市へ行くには、
砂川市

奈井江町

美唄(びばい)市

三笠市
と、市町を4つまたぐのである。

距離を数字で言われるより、「市町を4つまたぐ」と言われる方が、自分がどれだけ無謀なことをしているのかがよくわかった。
折りたたみ自転車に乗ってる場合じゃない。

さらに進むと、看板から7キロの地点で同行者が待っていた。
まっすぐなので、同行者の車が停まっているのが見えるのだが、ちっとも近くならない。私の自転車がこいでもこいでも全然進まないからだ。

なんとか同行者のいる場所までたどりつき、一言、
「ギブアップ」。

7キロを小一時間かけて走ったところであきらめた。
すいません、ホントすいません。


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着いたよ、イオン!(車で)

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三笠のイオンは1階建てでものすごく広い。
外周は約1.2キロ(私調べ)。

■着いたよー!

車に乗って、三笠市のイオンに向かう。
車でだって約40分の距離である。
ちなみに車のトリップメーターで調べたところ、あの看板からイオンまでは約30キロだった。

ああ、イオンに着いた…!
気分を出すために、手前から再び自転車に乗り、イオンに向かう。
がしかし、このイオンがまた広い。
入口から駐車場を抜け、店舗に入るまでがまた遠い。

見れば自転車に乗った人はあまりいない。
徒歩の人は全然いない。
なるほど納得のスケールだった。

なお、イオン三笠店のかたに、なぜあんなにスケールの大きな看板を出しているのかお話をうかがったところ、

  • お店の近辺以外の人にも来てもらいたくて、あのような看板を出している。
  • 石狩や当別の店舗でも、同様の看板を出している。
  • 自分は北海道出身だが、あと29キロの看板を見かけても違和感を感じない。

ということだそうだ。

北海道南部出身の知人の話では、「あと100キロ」という看板もあるらしい。
また、実はこのイオン三笠店の看板で「あと50キロ」というものも見かけたことがあるのだが、今回、探し回ったが見つからず、「あと29キロ」に挑戦したのだった。
今思うと、「あと50キロ」なんて、見つからなくてよかった…。


■ご近所感覚では測れないスケール

最初は29キロと見てもぴんと来ず、あえて調べないで「気軽にイオンに行くノリで」と挑戦してみました。
あとから考えてみると、いやあとから考えてみなくても、ご近所のおつかい程度気分で、29キロという距離を達成できるはずがありません。

たかだか7キロ走っただけではありますが、私の中では、
苦労あり(自転車が進まない)
苦悩あり(同行者がどっか行った)
葛藤あり(あと何キロがんばるべきか)
の、ちょっとしたロードムービー的な体験ができました。
広い畑とまっすぐな道がえんえんと続くところも、旅情と不安をあおる感じで。

ロードムービーとか旅情とか言ってますが、結局は「イオンへの道」なんですけどね。


本人はとにかく必死だったんですが。

看板からイオンまでの地図 同じ縮尺の東京の地図

 
 
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