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はっけんの水曜日
 
腕立て伏せをするトカゲがいる

 

オキナワキノボリトカゲ

オキナワキノボリトカゲは奄美と沖縄、それと九州の一部にのみ生息する珍しいトカゲだ。全長は20センチ以上ありそうだが、そのほとんどが長い尻尾。人が近づくとらせん状に木を周りながら上へと逃げていく。その様がまたとてもかわいいのだ。

しかしそのかわいさがうけてペットとして捕獲されることも増えているのだという。それ以外にも沖縄にハブ退治のために持ち込まれた外来種マングースが、ハブを食べずにこのトカゲを食べたりするらしい。まずハブ食えよ、とか思うが、僕がマングースだったらやっぱりハブは怖いのでトカゲを狙うだろう。かつては街路樹にもいたこのトカゲだが、徐々に数が減少し、こういう人里はなれた山の中でしか見られなくなってしまった。今では環境庁指定の絶滅危惧種にまで認定されている。ここにも人間の都合で危機にさらされている自然があった。

それでも一度目がトカゲモードに入ると、あちこちの木でじっとしがみついている彼らを見つけることができた。オキナワキノボリトカゲ(特にオス)は縄張りをしっかりと持っているらしく、トカゲの一匹いる木とその周辺には他の固体はいないのだそうな。かっこいい。


尻尾が縞のもいる。
背筋でこちらを見る。

森に緑の体が映える。
長い尻尾が美しい。

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捕まえましたよ。

僕がトカゲを探してきょろきょろしている間に坂爪くんはすばやく一匹捕獲していた。さすが研究者、やることが大胆だ。


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目を閉じてじっとしている。

トカゲは捕まえるととても小さく見えた。やはり木に登っている時が一番輝いている。それからこのトカゲは感情の変化等で体の色を変えるのだという。木に登って自分の縄張りを誇示しているときには鮮やかな緑だったのだが、捕まったり他のオスに縄張り争いで負けたりすると黒くなってしまうことがあるのだとか。とてもデリケートだ。

トカゲはもちろんつれて帰ることはせずに逃がした。というか触ろうとうかつに手をだした僕が咬まれ、びっくりして逃がしてしまったのだ。歯はさほど鋭くないようだが、あごの力は意外なほど強く、軍手をしていても咬まれると痛かった。

 

腕立て伏せはしてくれるのか

おなかいっぱいトカゲを見たのでそのまま満足して帰りそうになってしまったが、今日の目的はこのトカゲが腕立て伏せをする場面を見ることだ。

オキナワキノボリトカゲは敵が近くに迫ると威嚇行動として腕立て伏せをするのではないかと言われている(本当のところはトカゲに聞かないとわからないわけだけれど)。なので捕まえるときのように木の後ろからこっそりと近づくのではなく、堂々とこちらの存在を誇示しながら近寄っていくとまれに腕立て伏せしてくれるのだという。今日はしてくれるだろうか。一匹のトカゲにターゲットを絞り、胸を張って近づいてみた。


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カクカクしてる。

僕たちの姿を目の端で捉えたトカゲは一瞬逃げようと構えたように見えた。しかし次の瞬間、木にしっかりとしがみついたままカクカクと動き始めた。

腕立て伏せしているのだ。

うまいタイミングで動画を撮ることができなかったので連続写真の組み合わせになってしまったが、確かにカクカクと動いて腕立て伏せをしているように見えるだろう。これは坂爪くんもそれほど見たことがない貴重な光景なのだという。実際近づいて行ったとき、腕立て伏せをしてくれたのはこの一匹だけだった(あとのは上に向かって逃げてしまった)。

 


また、会いに行きます

腕立て伏せするトカゲは本当にいた。そしてその様子は威嚇行動とは思えないくらいにキュートだった。僕はすっかりオキナワキノボリトカゲのことを気に入ってしまい一緒に暮らしたいとすら思ってしまったが、一気に小さく見えてしまう捕まった彼らのことを思い出して、やっぱり自然動物は自然の中で見るのが一番美しいのだ、と改めて思った。また彼らに会いに森に行きたいと思う。

 


また来いよな。

 
 
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