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フェティッシュの火曜日
 
野球祀り寺社関東予選一回戦


ブログやSNSの日記を見てると、スポーツというのは分かりやすいようで分かりにくい話題なのだなぁ、と思うことがしばしばある。自分はサッカーや野球にほとんど興味ないのだけど、それ系の話題ばかり書いてる友人の日記は自然と見なくなっている。でも、分かる人にはとても共感する内容だであろうことは分かる。むしろ日記が分かりにくいほど、その人の愛を感じられるというか。日記を読む一見さんを無視してしまうほど、ファンの愛深いジャンルなのだと。

自分のような趣味は広く浅く、な輩には計り知れぬ深さを持つスポーツ愛。ファンの愛を示すかのように、「野球」をモチーフにしたお地蔵さんやお守りなどがある寺社が全国にちらほらあるのだとか。いわば、神仏レベルの野球愛。関東にあるという2カ所を巡ってきました。

大坪ケムタ



東京代表・ホームラン地蔵

今回勝手に行われる野球祀り寺社関東予選、一回戦は東京対群馬。ということで、まず向かったのは東京都品川区にある海徳寺。以前から気になっていた「ホームラン地蔵」というお地蔵さんがここに祀られているという。

ホームラン、その響きはどこか牧歌的な響きがある。それに加えて「地蔵」。これもまたほかの仏像に比べるとおっとりした香りがある。

他のスポーツで例えるなら「ハットトリック・ジーザス」「腕ひしぎ逆十字・ガネーシャ」とかいうようなものか。でもこの二者に比べても、攻撃的というよりはやさしさを感じさせる。いったいどんなのだろう、ホームラン地蔵。


こちらが海徳寺。
しながわ百景に選ばれた境内、の大イチョウ。

観光的なものに力を入れてるわけでもなく、それほど大きいお寺ではないけれど、大イチョウはじめ目に鮮やかな緑のせいもあって、日陰が多くてこの季節は助かります。ただ、ホームラン地蔵が見あたらない。

墓地とは別のところに水子地蔵や石碑など居並んでいるのだけど、噂の地蔵は見あたらない。


日陰多いのがこの季節助かります。
まさかこの中に?秘仏?

あまりに見あたらないのでお寺の人に聞いてみると、墓地の入り口の一角にちょこんと鎮座していらっしゃいました。右手にバット、左手にボール、これぞホームラン地蔵!


予想以上に地蔵らしいお地蔵さん。そしてバットとボール。

左の日陰で分かりにくかったのだな。
でも涼んでるみたいでかわいらしい。

これを見せていただきに来たんですよー、とお寺の方に話すとホームラン地蔵についての由来が書かれた資料をいただきました。

来る前は特にモデルとかあるわけでもなく、単に野球好きの人もしくは住職が祀ったのかな‥と思ってたんですが、この地蔵はある少年のお墓で、いただいた資料には予想以上に深い話がありました。


昭和23年に生まれた岩崎和夫少年は野球が大好き。しかし心臓肥大を病んでしまい、小学4年で入院生活を強いられてしまう。

その頃、巨人軍に入団して活躍していたのが王貞治選手。ある日和夫くんが入院した病院に偶然立ち寄った王選手に、お母さんがサインだけでもとお願いすると、来やすく病室に寄って励ましてあげたのだという。

それからたびたび和夫くんの病室に王選手は訪れたが、彼の症状は悪化。ついには13歳7ヶ月にして亡くなってしまう。彼の墓はバットを抱いた姿で形取られ、ホームラン地蔵と名付けられた。そして王選手は記録を打ち立てるたびにこの場所に報告しに来たという。

(以上、『海徳寺寺報』より抜粋)


資料によれば漫画にもなったそうです。

うむ、こんな軽い気持ちの企画で来たのが申し訳ないような悲しい成り立ち‥。お地蔵さんの足下には供花や線香と一緒に、使い古されたボールも供えられてました。


チームの選手名まで書かれたものも。

天寿を全うして好きなスポーツをモチーフにしたお墓を作る、とかなら「おじいちゃんホント好きだったんだなぁ」と微笑ましくもあるけれど、こんな話だとそのたおやかなお地蔵さんの顔つきがせつなく見えてくる。普段は野球は見ないけども、手を合わせて帰ってきました。


海徳寺

東京都品川区南品川1-2-10

 

群馬代表・中之嶽神社

さてありがたいお地蔵さんを拝ませていただいた次に向かうのは野球関連のお守りを売っているという群馬県代表・中之嶽神社がある下仁田町。都心から高崎市まで2時間、そこからさらに上信電鉄で1時間。

2両連結のワンマン電車は外に見える山と畑の光景と相まってトーキョーから離れたところにやってきたなぁ、という感を強く思わせる。


高崎まつり最中の群馬県高崎市から
サファリパークな上信電鉄でゴー。

お客さんは5人くらい。

しかしこういう田舎(自分の実家と同レベルだけど)って、なんで女の子がかわいく見えるかなー。きっと何もなかったオノレの十代の脳がフラッシュバックしてんだろうな。いつまでたってもティーンエイジ・ファンクラブ!

そんなしょうもないことを考えつつも2両列車はガタゴト進む。終点・下仁田駅は木造の昔ながらのちんまりとした駅で、東京じゃない方の「3丁目の夕日」的ノスタルジイを覚えさせる。


関東の駅100選にも選ばれてるそうです。
人情入れて、3拍子。

さて目指す中之嶽神社へはここからさらに町営バスを利用し、さらに徒歩。電車まではひたすら小旅行気分だったこの旅、ここからプチサバイバルな展開になるとは知るよしもなかったのである‥。


ちなみに高崎ではミッキーもだるまが普通。

 

 
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