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ちしきの金曜日
 
廃村に泊まる

山間の無人集落に宿泊する

宿泊できる廃村が長野県飯田市にあるらしい。

廃村とは、つまり人がいなくなった村のことであろう。 そのようなところに宿泊とは、なにやらアウトローな雰囲気が漂ってくるが、そうではない。

その廃村は、無人となった今でも元住人や市によって管理されており、 希望すれば民家を宿泊用に貸してくれるらしいのだ。

実際に行って、泊まってきた。

木村 岳人

 

その村の名は、大平宿

その廃村とは、長野県南部の飯田市から20kmほど離れた山の中、 標高約1100mのところにある大平宿(おおだいらじゅく)である。

大平宿は、江戸時代中期より南木曽の妻籠宿と城下町飯田を結ぶ 大平街道の宿場町として栄えた山村集落であった。 しかしながら、時代の流れと共に大平街道は使われなくなり、 昭和45年、住民たちは集団離村で大平を離れ、この村は廃村となった。

その後、無人になった大平の町並みを保存しようと「大平宿をのこす会」が発足、 その努力があり、大平には今でも20戸以上もの古い民家が現存しているらしい。 最近では山田洋次監督の映画「隠し剣 鬼の爪」のロケ地にも使われたそうだ。へぇ〜

 

 

それではいざ大平へ

大平宿に宿泊する場合、 飯田市街地にある「大平宿をのこす会」の事務所で手続きをし、 そこで宿泊する民家の鍵を受け取ってから大平宿へ向かうことになる。 現地での鍵の受け渡しはできない。

列車で飯田に着いた私は、その足で事務所に行き鍵を受け取った。 時間は午後1時。体調、天気はおおむね良好である。 早速、私は大平宿に向かうべく大平街道を山に向け、走り出した。

走り出した、とは言っても、私は車やバイクの免許を持っていない。 今回は東京から折りたたみ自転車を持参してきたので、これで行く。


山道20km、これでなんとかがんばります

心もとない安物の小さな折りたたみ自転車があるが、 でも、まぁ、多分、大丈夫だろう。 これでも私は、ママチャリで箱根の峠を越えたことだってあるのだ。

ちなみに今回、同行者はいない。私一人きりの旅行である。 写真は全て、三脚を立てて自分で撮った。


飯田山麓に私泣く

走り出してからおおよそ15分、市街地を抜けると辺りの景色ががらりと変わった。

そこには青々とした田畑が広がり、 りんご畑ではほんのり赤く色づき始めたりんごがポツポツと実り始めていた。 それは、まさしく典型的な夏の山麓という光景。


15分も走ればこの通り まだまだ青いりんご畑。飯田はりんごの町でもある

と、まぁ、最初はそんな余裕もあった。まだ勾配もゆるく、自転車をこぎながら周辺の風景を楽しむこともできた。

しかし、徐々に坂道の傾斜がきつくなっていくにつれ、それもままらなくなってくる。まだ走り始めてさほど時間が経ってもいないのに、既に足腰がガクガクしてきた。

暑い。ものすごく暑い。夏なのだから暑いのは当たり前ではあるが、それにしても、暑い。

山間部の飯田とはいえ、夏の太陽は全くもって容赦ない。汗はとめどなく流れ、下を向いただけでボタボタと地面に滴り落ちる。 既にシャツはびしょぬれだ。パンツの中までびしょぬれだ。

さらに追い討ちをかけるように、ドーンとかパーンとかいう音がひっきりなしに響いている。猟銃の射撃音だ。かなり近い場所で猟をやっているようで、その音は相当でかい。思わず恐怖を感じてしまう。どうか流れ弾が飛んできませんように。


もうすっかり山の中 ダムを横目にレッツらゴー

 

結局ほとんど歩いてた

さて、飯田から5〜6kmを過ぎ、いよいよ道は厳しくなってきた。自転車をこぐのも厳しくなってきた。というか、実はもうこの頃には自転車こぐのはやめていた。もう傾斜的にも体力的にもきつく、私は自転車を押しながら歩いていた。

そういえば、箱根峠を越えた時も、結局はほとんど自転車押して登ったっけなぁ……


いやしんどいっす 勘弁してください

しかし、自転車を降りてみると、何気に周囲を見渡す余裕が出てくる。標高が上がったためか、雲が出てきて太陽は隠れ、気温も良い感じに下がってくれた。

聞こえてくるのは風の音、ヒグラシの鳴き声。あっちでカナカナカナとやれば、続いてこっちからカナカナカナ……それはまるで会話しているようでもある。

あーいい感じのハイキング日和だなぁ……って、これなら自転車いらなかったじゃん。


そしてついに峠に到着! 下り坂はらっくちーん!

最大の難所であった飯田峠を越えると、後はもう下り坂のみであった。ほとんど車の通らないこの道路、風を切って突っ走るのが最高に気持ち良い。

あぁ、この坂を下る為に私は自転車をここまで転がしてきたんだなぁ。自転車君、さっきはいらなかったなんて言ってごめんなさい。自転車は最高デース!

とまぁ、そんなこんなで午後5時過ぎに大平宿に到着。そこには、私の想像を上回る光景が存在していた。


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