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はっけんの水曜日
 
「新宿駅ガムテープ道案内」の作者実演をみた!
それは数年前のこと。
新宿駅は長いこと、工事中だった。「いつ終わるのかな、いつまでも終わらないんじゃないかなあ」と思いながら、利用していたのだけれど、ある時ーーー。
「道案内の表示のフォントが変わってるなあ、っていうか全部ガムテープで出来てるじゃん!」ということに、気づいた。そしてふと目にした「現在地」という表示を見て、
「かっこいい、ゴダールの映画のポスターみたいだー!」と思い、興奮して写真を撮り、自分のサイトに載せた。

(text by 大塚 幸代



↑当時、アップした写真はコレ。

で、そんなこともスッカリ忘れ、工事も終わったころ。
「ネットで、あのガムテープ文字の謎を、解明した動画が、話題になっている!」ということを、知ったのだ。
「うわあ、つきとめた人がいるのか、スゴーイ!」なんて思ってみてみたら、
動画中の<インターネット上、いくつかのサイトでも、(ガムテープの謎を)若干名が真相を知りたがっていた…>のくだりで、自分のサイトのキャプチャ画像が引用されてて、再度びっくり。

新宿ガムテープ道案内のこと
https://nifnif.nifty.com/cs/catalog/nifnif_art/catalog_070728011800_1.htm
新宿ガムテープ道案内のこと2
https://nifnif.nifty.com/cs/catalog/nifnif_art/catalog_070728011801_1.htm




動画をみると分かるのだが、
  • あのガムテの作者は、駅で警備員をしている佐藤修悦さんという男性
  • 人の流れを誘導する際、工事中の新宿駅は迷路状態で、いくら声を出しても人の波の収拾がつかなかったので、案内のガムテープを、自主的に、とくに許可をとらずに貼った
  • それを見た駅の人から『これはいい、好きにやってください!』とOKが出て、そこからオフィシャルになった
  • 高校時代のデザインの授業でゴシック体を学ぶ機会があり、その時からずっとゴシック体が好きで、ゴシック体にこだわっていた。でもガムテープ文字を作るのは、この「駅案内」がはじめて

「いやはや、こんなことがネットで分かるなんて、すごいなあ!」と感心しつつ、感心しっぱなしだったのだが……。

先週土曜日深夜、友人と高円寺阿波踊りを見て、お酒を飲んで、帰る途中、深夜2時くらい。
通りかかった道で、「あのフォント」を見かけたのだ。
「え……ええー!!」
それは佐藤さんの展示会の準備中の会場だった。酔っぱらった勢いもあって、スタッフのかたに、声をかけてしまった。
「あ、あのー、これ、駅の……文字の…。あの、動画作ったかたがたですか?」
いきなり、全く知らない通りすがりの酔っぱらい女に声をかけられ、キョトンとする皆さん。
「そうですよー」
「わたし、その、あの動画で、最初のほうで、<インターネット上、いくつかのサイトでも、若干名が真相を知りたがっていた…>の若干名のうちの、ブログやってるひとりでして、その…」
皆さんは「?」という顔をしながら、「明日実演やるんで、来てくださいね」とチラシをくださった。
え、実演? 実演!?
酔っぱらった頭で、帰って即、検索をした。

そしたら、いま佐藤さんは、新聞やテレビで紹介されていて、あの文字には「修悦体」という名前まで付いて、大騒ぎになっているという……ことを知った。ナニー!!


そんなわけで26日日曜日、高円寺阿波踊りの最終日でもあるこの日、行ってきました、会場へ。

開始15分前、わらわら集まる人々。皆、ネットで知ったのだろうか? 最終的には見物人は100人近くになった。



今回この展示を主催したのは、佐藤さんを探してあの動画を作った、アートユニット「トリオフォー」のかたがた。佐藤さんの実演前、前説として「タイプライター時代のアスキーアート本」等を紹介していたのは、トリオフォーの山下さん。

てぬぐい、豆本、ライターなどオリジナルグッズもあり。ライターはナンバー入り限定モノ



Tシャツもかっこいい。これも限定モノ。



DVDも。動画サイトで流れたもの以外の映像も、収録されているそう。





佐藤さんの会場到着が少々遅れたあいだに、「修悦体とセロテープのパッケージの色合いが似てるから、ニチバンにコラボ交渉をしてみた、というか『セロテープ』のロゴを修悦体にしちゃえって言ってみよう!」といった企画のドキュメント映像が流された。結果、ニチバンはガムテープ150本を現物でくれたそうだ…。このガムテは会期中、来場者にプレゼント(なくなり次第終了)。私はピンクを頂いた。



いまかいまかと待つオーディエンスの前に、

ついに佐藤さん登場! にこやかなおじさま。



まず2本のガムテープが、まっすぐに貼られた。「みんな、しーんとしてジッと見られると困っちゃうなあ、適度にザワザワしててくれませんかねえ」と照れる佐藤さん。

この時点では、なんの文字になるのか、さっぱり不明。「なんの文字になると思いますかー」という進行係の山下さんに「中央線!」という意見が。「さあ、どうでしょうねー」



この時点でも、さっぱりわからない。

おっ?

おおっ?



「未完成」という文字が完成! ちなみにこのお題は、トリオフォーの方が出したものだそう。



展示もすごい。実際に駅構内で使われた案内板のほか、テープ文字の作り方が分かる、オリジナル作品も。「これ、ポスターにしたら買う!!」と興奮して叫んでいた人もいた。確かにかっこよすぎ。

トリオフォーさんが記録した写真も多数見れる。このガムテープ文字は「なくなってしまう」ものだから、記録は貴重だと思う。ちなみに今現在、修悦体は工事中の日暮里駅で見ることが出来る。

■ゴシック好きは、行くといいよ!

「ああ、この作者、誰なんだろう…」なんて思いながら路上で見かけたものの、作者に偶然逢えるなんて、思いもよらなかった。
同じようにガムテープ文字を気にしてた人たちがいて、ご本人に逢って、動画作品を作って、それがネットでブレイクして、現実に展覧会が開かれた、というのも、なんともステキな話だ。
駅で見かけたことのある人も、見かけたことのない人も、興味あったら、じかに展示を見に行くといいよ!

会場:高円寺古着屋シランプリ(東京都杉並区高円寺北3-12-1)
8月26日〜9月2日 14〜21時(予定)入場無料
https://trio4.at.infoseek.co.jp/info/


 
 
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