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ロマンの木曜日
 
ハモる天気予報

歌のメインパートに別の音を重ねてハーモニーを作り出すハモリ。美しいハモリは歌の表現に幅を持たせ、聞く人たちを魅了する。デュオで活躍するアーティストたちも、ハモる事でその魅力をより大きなものにしていたりする。チャゲ&飛鳥とかケミストリーとか。

そんなハモリを歌ではなくしゃべり声に当てはめる事は出来ないだろうか? 例えば天気予報とか。普通にしゃべって予報を伝えている声にハモリを重ねてみるのだ。楽しくて説得力のある天気予報になりそうである。

試してみた。

(text by 住 正徳



夢は広がる

天気予報をハモって伝える。きっと画期的な試みとなるに違いない。はやる気持ちを抑えながら、ハモるための予報内容を、某日の気象概況から拾ってみた。以下の文章である。

「天気予報です。北上を続ける台風第9号は、明日未明から午後にかけて八丈島の南の海上を通過する見込みです。その影響を受けて、関東近海は大しけとなる所があるでしょう。船舶は充分に警戒してください」

これをハモって伝える事に成功すれば、普通の予報を聞いた時よりもグッと台風9号を警戒するようになるだろう。そして、天気予報だけにとどまらない無限の可能性も期待出来る。ハモるニュース、ハモる交通情報、ハモる人生相談、ハモりながら怒る人……。夢は広がるばかりである。

早くハモリたいが、ここからが問題だ。どうしたらいいのか見当もつかない。音楽の事は全く分からないのだ。そこで、高校時代からの友人で、幼い頃からずっと音楽をやり続けている友人、小林君に相談する事にした。


しかし、いきなりのダメだし

小林君に電話で今回の主旨を伝える。


相談に乗ってくれた小林君
相談に乗ってくれた小林君

しばらくの沈黙の後、小林君から丁寧な説明があった。

小林「その発想は面白いと思うし、住のそういうところ凄く好きだけど」
住「けど?」
小林「どこから話したらいいかなあ」
住「え? 大変な感じ?」
小林「大変って言うか、その……。歌には音階ってものがあってさ、それがあるからハモる事が出来る訳なのね。一定の階段に沿って音が動いているというか」
住「うん、聞いた事ある。音階」
小林「おしゃべりの中にはその音階がないんだよ」
住「って事は、あれかな? 無理って事かな」
小林「えっと、無理って言っちゃわないようにしてたんだけど…、ほら、無理って言い切っちゃったら何も生まれないじゃない」
住「あ、そういうレベルで『無理じゃない』っていう?」
小林「うーん……」
住「例えば俺が今から100メートル走でゲイに勝ちたいって言い出したみたいな?」
小林「ゲイ?」
住「ほら、世界陸上でこないだ勝った足の速い人」
小林「ああ、うん。それに近いかも」
住「素人だから出来る発想、みたいな?」
小林「うーん、でも、何か可能性があるような気もするんだよ。もしかしたら音楽の発祥に近いような、それくらい凄い発見が出来るかもしれない」
住「いや、そんな大げさな話じゃなくて、ただ天気予報をハモリたいだけなんだけどな…」
小林「例えば……、話し言葉の抑揚に近いメロディーを作っておいて、それに和音をつけて、ハモるという手法だったらハモリとして聞こえるかもね」
住「メロディじゃなくて話し言葉そのものをハモリたいんだよね」
小林「だよね。だから難しいんだよなあ」


誰でもハモれるBOOK(藤田進・編著/自由現代社)
誰でもハモれるBOOK(藤田進・編著/自由現代社)

住「誰でもハモれる、って本も買ったんだけどさ」
小林「それはほら、歌を対象にしてるはずだから。そこに答えはないと思うよ」
住「素人なりに考えると、まず普通にしゃべってるのを譜面に起して、それを元にハモリ用の譜面を起したら、出来ないかな?」
小林「だから、そこには音階がないんだよ」
住「そっか。厄介だな、音階」
小林「うーん…」


夜になってしまった
夜になってしまった

住「何かないかな?」
小林「こんなのどう?」
住「え? 方法ありそう?」
小林「うん。普通の音楽って7音階なのね、現代音楽の中には12音階っていうのもあるんだけど、それは7音階の中の半音を使ってる訳。それをさらに発展させて、半音の半音の半音とか、そういう音を聞き取れる人を3人くらい育ててさ、その人たちを息もぴったりになるように共同生活させて、楽器で出せない音を聞き取れるようになってもらって、しかも発声まで出来て……。そうなったら出来るかもしれない」
住「それってどんくらいかかるの?」
小林「うまくいって15年くらいかな」
住「……」
小林「あ、違うか。まず、そういう人を教育出来る人を育てないといけないから、15年以上か」
住「やっぱりあれだよね? 無理って事だよね?」
小林「うーん……」
住「諦めるしかないか」
小林「俺の音楽の先生に相談してみようか。松井秋彦先生っていうんだけど、普通の人とちょっと耳が違ってさ、いろんな音に対して絶対音感を持ってるから話し声も音符になって、ハーモニーになるかも」

という訳で、小林君の音楽の先生を紹介していただく事になった。絶対音感を持つ松井先生に望みをつなぐのだ。

果たしてしゃべり声にハモる事は出来るのか?






 

 
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