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土曜ワイド工場
 
田んぼの外で独自に進化するかかしたち

 

迫力

 自由な作品ばかり紹介してしまったが、ここでちょっと違った方向に進化を遂げたかかしをご紹介しよう。100点以上もの作品がひしめく商店街だが、なかでも特に目を引く作品たち。群を抜いてでかいやつがいるのだ。


で、でかい

 一番でかかった作品は、ザリガニ。藁でできていて、足元には防火用水がなみなみ。後ろの車と比べてそのでかさを味わってほしい。

 「とにかくでかい」というだけで相当な威圧感があるのに、威嚇するようなこのポーズ。これならかかしとしての実用性も十分だろう。

(これは文句なくかかしですよね。)

 


キツネ。こっちもでかい

 こちらはキツネ。細かく裂いた紙のような素材で作られている。雨よけのビニールがかかっていて見にくいが、手前には子供の狐もいる。こちらも実はけっこうでかくて、全長は2mくらいあったように思う。

 さきほどのザリガニがワイルドな力強さを感じさせるのに比べ、こちらはふわふわとした素材のせいもあってか、大きいながらも繊細さを感じさせるつくりだ。

(そろそろ忘れてきてるころだと思いますが、これはかかしです。)


壁一面を埋め尽くすカブキモノ

 そしてもっと繊細なのがこの歌舞伎。でかさもさることながら、衣装など細部まで作りこまれた緻密な作品だ。

 横についているパンダとキティちゃんは、この人の子供だろうか、それとも追っかけだろうか。パンダは遠くから見るとガイコツに見えて怖いことに気づいた。

(思い出して!これはかかしです。)

 

インタビューしてみる

せっかくなので街行く人にかかしコンクールの話を聞いてみようと思う。


あ、あの人に

かかしだった

 

昔ながらの町の薬局

今度こそ町の人に聞く

かかし鑑賞の旅は長い。展示は道路の両脇に7〜800mにわたって続いている。往復で1.5キロほどの長旅だ。そのあいだに、濡れて滑りにくくなったサンダルで靴ずれができてしまった。薬局でばんそうこうを買おう。ついでに、店の女性にかかしコンクールについて聞いてみた。

 


 

薬局のおばちゃんの話

・コンクールの期間中は人が多く訪れ、通りは活気づく。

・東京都現代美術館が近いので、通り道に見ていく人も多い。

・うちみたいな商店の客足はそんなに変わらない。でも飲食店は違うだろうね。人が増えるとみんなご飯を食べるから。

・コンクールも回を重ねるごとに、だんだん大きくて凝った作品が増えてきた。

・さいきんは知名度も上がってきて、区外からの応募者も多い。

・ずらりと並んだかかしは確かにすごいけど、近所に住んでいるとわりと慣れっこな光景だ。


地域に溶け込むかかしコンクール

 かかしの話となると終始笑顔で対応してくれたおばちゃん。「客足は変わらない」「慣れっこだ」なんてクールな受け答えだが、僕が「近所でこんなイベントがあってうらやましいですね」と言うと、まんざらでもない、といった表情だ。とりたてて楽しみにしているわけではないにしても、地域のイベントとして、やっぱりそれなりの愛着を感じているのだと思う。

 それではかかしを作る側の人はどう思っているのだろう。

 

雨が降り出してぜんぶカバーをかけられてしまった

出展者にも聞いてみる

前のページに載せた、狐の親子のかかし。このかかしは伏見屋というレストランの軒下に飾られていた。このお店の人にも話を聞いてみた。

 

 


 

伏見屋のお兄さんの話

・このかかしはオーナーが一人で作った。

・製作期間はあまりかかっていなくて、2、3日くらい。

・コンクールの展示が始まる前は店内においていたので、怖がって入ってこないお客さんもいた。

・外に出したら目立つので、かかしを見て入ってきてくれるお客さんも結構いる。

・コンクールが終わってもこのままかざります。キツネは店のシンボルなので。


伏見屋の石焼深川めし(イタリア風)。うまかった

商店街を盛り上げるかかしコンクール

 「オーナーは集中し始めるとそれしか見えなくなっちゃって…」と語る若い店員さんは苦笑い気味だったが、そうしてできあがったかかしは店のシンボルとして大切にされているようだ。

 実はこのコンクール、このように店で出展しているケースもけっこう多い。目立つかかしを作るといい宣伝になるのだろう。

 こうやっていろんなお店が楽しいかかしを作って、イベントが盛り上がっていく。すると見にくる人が増え、商店街がうるおう。個人の参加者も増えて、イベント自体が盛り上がっていく。そうするとまた商店街に来る人が増えるし、地域の人たちにも、ちょっとした楽しみになる。

 なんだか町おこしの理想的な形じゃないか。

 

しあわせな地域社会とエクストリームかかし文化

 豊作のためにつくるかかしだが、この商店街ではかかし自体が大豊作だった。そしてその豊作のおかげで、商店街も豊作なのだ。

 かかしと一緒に写真をとる若いカップルや、お母さんに一生懸命かかしの説明をしている子供を見ていると、なんだか地域社会の幸せなあり方を見た気がして、この町の人がちょっとうらやましくなってしまった。

 そしてそんな人々の生活とよりそうように育っていく、エクストリームかかし文化。今後も独自の進化を続けるかかしたちに注目していきたい。

なんでもかかしに見えてきた

かかしコンクールは9/17(月・祝)まで、深川資料館通り商店街にて開催中。 東京メトロ半蔵門線の清澄白川駅から徒歩1分。最終日は表彰式もあるよ!


 
 
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