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フェティッシュの火曜日
 
海抜0mからの富士登山

11:00−苔むした岩石、ひっそりたたずむ中宮八幡堂

再び登山道へ入った。

村山浅間神社から天照教社までは杉の植林地帯であったが、 標高1000mを過ぎてからは杉が消え、ブナやミズナラ、クヌギの木などに変わった。 道を阻む障害物も、アジサイから笹に変化している。


これまでになかった笹が生えだした ゴツゴツした溶岩には美しいコケが

また、駿河湾から吹いた風はこの辺りの標高で雲となり、多くの雨と湿気をもたらすらしい。 そのため、富士山の火口から流れ出た溶岩流の岩石に 鮮やかな緑色のコケがみっしりついているのがこの高度の特徴だ。


ここは白神山地か屋久島か

途中、中宮八幡堂と説明板のある祠があった。

それによると、今は小さな祠しかないこの中宮八幡堂には、 明治初頭まで茅葺屋根の立派なお堂があったそうだ。

富士山は今でこそ誰でも登ることができるが、明治の始めまでは女性禁制の地とされていた。 女性が登ることができるのはこの中宮八幡堂までで、 これより上へ立ち入ることは許されなかったらしい。

それだけ、富士山は大事にされていた山なのだろう。きっと。


中宮八幡堂の祠 富士スカイラインを横断

中宮八幡堂からさらに30分。 車のエンジン音がけたたましく響いてきたと思ったら、 富士スカイラインに出た。

普通の富士登山では、車で富士山五合目まで行きそこから徒歩で山頂へ向かう。 このスカイラインは、富士宮から富士山五合目まで行く道だ。

森が広がる五合目以下の富士山。 村山古道に人の姿は全く無いが、 このスカイラインにだけはひっきりなしに車が走っている。


13:00−倒木地帯をただただ登る

スカイラインを横断し、山道を抜けてさらにもう一度スカイラインを横断、 1600m地点を越えると景色は再び変貌を遂げた。

笹が無くなった代わりに、背の低い植物が生い茂るようになったのだ。 周囲を見渡せる距離は広くなり、登山道がはっきりして歩きやすい。


背の低い植物が多い 次第に倒れた木が増えてきたと思ったら……
突然こんな場所に出た ここは一体……

私は天国を歩いているのだろうか

そこはあまりに非現実的な光景の広がる場所だった。

白くなった枯れ木が建ち並び、あちらこちらに折り重なるように倒れている。 その下には白や黄色の花々が咲き乱れ、蝶々が舞っていた。

それはまるで墓場のような、天国のような…… その現実離れした風景に私は驚き、少々立ち尽くした。

いやはや、富士山にこのような場所があるとは。


倒木地帯を見守るお地蔵さん


15:30−ついに、富士山新五合目に到達

倒木地帯を抜け急な斜面を登っていくと、今度は松の林となった。 標高もついに2000mを越え、空気がかなり薄くなってきたためちょっと動くだけで息が切れる。

私ははぁはぁ言いながら、のっそりのっそりと斜面を這い上がる。 疲れもピークに達していた私の顔は、多分今にも死にそうな形相だったことだろう。


広葉樹も消え、松の木が立ち並ぶ 新五合目への道に合流!後少し……

そしてついに、私は富士宮口登山道の入口である富士山新五合目にまで到達した。

新五合目には山ほどの車が止まっており、これから富士山山頂を目指す人、 または山頂から降りてきた人など、たくさんの人々がたまっていた。


五合目の辺りが富士山の森林限界。これ以上は木が生えない

標高2300m。新五合目までやってきて、私は考えた。

村山古道はもう終わり。 これから上は富士宮口登山道と同じルートで頂上に向かう事になる。 となると、村山古道を歩くという私の目的は、もう既に達成されているんじゃないだろうか。

っていうか、ここからさらに頂上まで行くには、登りだけで5時間かかる。 もう午後4時になる頃だし、頂上まで行くとしたらあと一泊が必要だ。

といっても、明日は月曜日で会社だし。 2日間歩きっぱなしで正直クタクタに疲れているし。 山小屋に泊まる金も無いし。テレビも見たいし。 ビールでもキューっとやりたい気分だし。その後は布団で寝たいし。 カーテンも無いし。


いやね、正直もう限界…… 「なら、後は私に任せたまえ!」

あぁ!あなたはッ!

ま、松本さん!
バトンタッチ!後はよろしくおねがいしまーす!

なんと明日に続いてしまうのだ

田子の浦から始まった富士登山。

富士登山と言えばゴツゴツした岩場をひたすら登るだけのものだと思っていたが、 この村山古道は高度が上がるにつれ景色が移り変わっていき、とても楽しかった。 知ってるようで知らなかった、富士山の新たな一面が見れた気がする。

ただし、その道のりはかなり大変。 もし村山古道を登ろうとお考えの場合は、十分な準備を忘れずに。 最低でも軽登山靴は履いていってください(じゃないとホント、危険だよ)。

さて、村山古道による私の富士登山は、ここ新五合目2300mで終了する。 しかし、富士登山はこれでは終わりではない。 なんと明日のライター、松本さんへと続いてしまうのだ。

なぜ、松本さんは富士山に来たのだろうか。 富士山でどのようなことをおやりになるのだろうか。

明日の松本さんの記事をお楽しみに!

私は、この光景が見れただけで大満足

 
 
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