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はっけんの水曜日
 
山登りってゲームっぽい
ホントに毎週山に行ってます。月曜日が一番疲れてます。


 2年前から山に行っている。富士山に登るためにボチボチ山に行っていたら楽しくてハマってしまい、以降よく行くようになった。最近は毎週の様に山に行っている。

 何度か登っているうちに、山登りってなんだかゲームっぽいなぁって思った。行き先の決定、装備の選択、地図を見てルートを確認。準備の時点からロールプレイングゲームみたいなのだ。

 今回は、山登りとゲームの共通点を探しつつ、じゃあ山登りってゲームにならないか?という点について考えていこうと思います。今回は全力で書きたいことを書き散らかします。

長々ダラダラ、富士山登山の様な長さとダラダラ感で書いていくよ!

(text by 松本 圭司

初めての山で急な岩場とかは、普通行かない。

■行き先の決め方がゲームっぽい

 まずは目的地の決め方がゲームっぽい件。ゲームでは自分のレベルや装備、パーティーの構成で目的地を決める(または、レベルにあったイベントが用意されている)。ゲーム開始直後からメルキドとかロンダルキアには行けないのだ。行ったら死ぬ。

 山登りも同じで、実力に応じて行く山を決めなくてはならない。いきなり初心者だけで槍ヶ岳とかには行かない。

 最初は関東近郊なら高尾山とか丹沢の大山とか筑波山に行ったりする。ドラクエ1で言ったらガライの町とかマイラだ。

 で、段々レベルが上がると無雪期の南アルプス(ドムドーラくらいかな)に手を出したりするのだ。そんなところがゲームっぽい。

メルキド…ドラクエ1の最後の方で行く城塞都市。みかがみの盾と魔法の鎧を売ってるよ。
ロンダルキア…ドラクエ2の最後のフィールド。長いダンジョンを抜けたら、雪国だった。モンスターが強くて泣ける。
槍ヶ岳…北アルプスにある日本で5番目に高い山。尖っていて格好良い。ルートによっては危なく、よく人が死んでいる。
ドムドーラ…ドラクエ1で中盤に行く町。モンスターに襲われて廃墟になっている。

 

各種装備。他にも細かい物とかカメラとか食糧とか色々たくさん。テント泊だと15kg〜20kgくらいになります。

背負うとこんな大きさ。夏山装備なのでまだ軽い方だと思う。

■持ち物の選択がゲームっぽい

 山に入る時は必ず必要な持ち物、いや、アイテムがいくつもある。登山靴、ザック、雨具、ヘッドライト、地図、コンパス、行動食、水だ。これらを持たずに山に入るのは遭難の第一歩だ。どんな季節、山でもこれらアイテムは欠かさない。

 他には着替え、防寒着、コッヘル、ガスストーブ、ライター、ナイフ、カメラ、応急セット、ストックなどなどを持っていく。

 だが、山に持っていく装備の中には結局使わない物も多い。天気が崩れなければ雨具は必要ないし、ザックカバーも必要ない。しかしもし雨が降った時に雨具が無かったら悲惨だ。

 全身ずぶ濡れで寒さに震える事になる。標高2000mを越えると運が悪ければ夏でも凍死する危険がある(※)。ザックカバーが無くてザックの中が水浸しになれば着替えも失ってしまう。

 そんなリスクを考慮して、山に行く時は多くの装備を背負っていくのだ。ドラクエで言うと毒消し草とか世界樹の葉、やくそうみたいなもんだ。FFだったらハイポーションを99個買ったり、乙女の祈りや金の針、目薬を持っていくだろう。同じように、使わないかも知れないアイテムを持っていくのがなんだかゲームっぽい。

 全員が持つ必要のないアイテムもあるので(テントやストーブ、応急セットなど)パ−ティーで相談して分担を決めると良い。荷物は重さや容量の制限があるので、持てる量が決まっている。そんな所もちょっとゲームっぽい。

 アイテムと言えば、色んなアイテムを買える山小屋はウィザードリィのボルダック商店みたいだが、あんまり書くと怒られそうなのでやめとく。

※・・・一般に、標高が1000m上がると気温が6℃下がると言われます。また、風速が1m増すと体感温度は1℃下がるらしいので、下界で30℃の真夏でも標高2000mなら気温は18℃。風速15m/sの風が吹いたら体感温度は3℃です。これで雨に濡れていたら凍死しかねません。標高2500mになるとさらに3℃下がるので0℃です。

ちなみに富士山山頂は約3800mなので下界が30℃の日でも気温7℃です。更に年間を通しての平均風速が11.4m/sなので真夏でも体感温度は氷点下になります。防寒着は重要です。

世界樹の葉…死んだ人を生き返らせる道具。ゾンビパウダーの原料である。同時に2枚持つことは出来ない。
乙女の祈り、金の針、目薬…それぞれ、カエル化、石化、盲目化を直す道具である。モルボルの臭い息のせいで一気に減ったりする。
ボルダック商店…道具を買い取った値段の倍の価格で売る道具屋。一般にボッタクル商店と呼ばれる。


まったく笑えない山ジョークその1

「得しちゃったよ。モンベルのザック買ったのにポイントが5%付いたんだ。」

「そんなの何買ってもポイントは付くだろ。」

「マジで?だってZERO POINTなのに?」

 

モンベルの雨合羽。ゴアテックス雨具の中では安い方。モンベルの製品は安くてそこそこの性能だが、デザインがダサイ。

mizunoのトレッキングシューズ。酷使してボロボロ。この手の軽登山靴だとテント泊や高山に行くのは厳しいので4万円くらいの靴が必要になる。高い。

■価格と性能の関係がゲームっぽい

 値段の高い高性能の山装備を使うと快適だ。雨合羽は300円の使い捨てから2万円のゴアテックスまであるが、ゴアテックスを使った雨合羽はホントに凄い。

 どんなに強い雨の中で行動しようと濡れないし蒸れない。シャツはいつまでもサラサラだ。これが安いカッパだと水漏れはするし汗で蒸れて中から濡れてくるし最悪なのだ。

 登山靴も同様、ゴアテックスが入っている靴だと中は濡れないし蒸れない(登山靴は普通ゴア入りだ)。不快なだけで済むなら良いが、標高が高くなると命の危険も出てくる。

 高い製品は何が良いかというと、第一にかさばらずにしかも軽い。つまりすばやさが下がらない。アイテムを沢山持つためにはコンパクトで軽い方が良い。荷物が重いと疲れる。

 第二に防水性透湿性が高かったり、保温性が高かったりする。守備力が高いのだ。

 しかし、高性能の本気装備を揃えようと思うと簡単に10万20万が飛んでいく。フリース1枚2万円、ズボンが雨具が3万円。靴に至っては5万円、高いザックは10万円。FFの手裏剣みたいな装備が沢山ある。

 パタゴニアとかアークテリクスに憧れて、でも高くて買えない僕なんかはモンベルとかmizunoとかで落ち着くのだ。ユニクロのドライシャツも活用する。

 価格と性能の関係、レベルアップするに従って良い装備に買い換えていく感じがなんだかゲームっぽい。

ゴアテックス…水は通さないが水蒸気は通す素材。蒸れない。ゴアテックス以外にも防水透湿素材はあるが、性能と信頼性ではゴアテックスが一番のような気がする。その分高い。
アークテリクス…主にザックが有名。10万円とかそういう値段であり、とても手が出ない。山では大抵中高年のオジサンが背負っている。
FFの手裏剣…忍者が使う武器で使い捨て。65500ギルという狂った値段なのに使い捨て。2重の意味で非エコである。


まったく笑えない山ジョークその2

仕事が優秀で、なかなか抜けない派遣社員の事なんていうか知ってるか?

知らない。なに?

ハーケン社員。

 

よく行く山の地図はちゃんとしたのを買った。カシミール3Dの地図や標高グラフも印刷して持っていったりする。便利。

■地図とコンパスがゲームっぽい

 山に入ったら地図とコンパスを使い、歩行時間や周りの植生、標識を観察して地図と現在地を同定しながら登っていく。この作業もなんだかゲームっぽい。

 残りの行程が判っていれば、体力と食糧、水を使うペースが判る。序盤でやみくもにイオナズンやリヴァイアサンを連発してMPを消費してはならないのだ。

 ただ、ゲームでは地図上の自分の位置が判りやすいが、山登りでは自分で注意していなければ簡単に見失う。この辺、ゲームよりも難しい。

イオナズン…ドラクエの呪文。イオ系最強。
リヴァイアサン… ファイナルファンタジーの召還魔法。大海嘯で敵を飲み込む。MPがゴッソリ減る。

 

茶屋や山小屋、山頂で休憩しているとよく話しかけられる。

「どこから来ました?」とよく聞かれる。そんな時「東京から」と答えると笑われるので注意だ。(どの登山道から来た?という意味なので)

■山の人たちがゲームっぽい

 山では人がよく話しかけてくる。登山道で会えば「こんにちは」と挨拶を交わすし(※)、追い抜かれる時や追い抜く時はお互いに道を譲りながら声を掛ける。休憩をしていると話しかけられることもあるし、下山中には登ってくる人に上の様子を聞かれたりする。

 話しかけた時も愛想良く山のことを教えてくれる場合が多くて、なんだかRPGで町の人に話を聞いているような気分になる。大体話しかけて無視されることはない。これが下界ならまず変な人扱いで無視されるだろう。

山では誰もがゲームの町の人っぽくなる。

 挨拶は慣れないと間合いが掴めない。たまに挨拶を返してくれない人もいて、そんな人に「こんにちは!」と言って無視されると凹むので注意したい。

 大体、距離が5mくらいになって会釈をした時に目が合う人は挨拶をする人なので「こんにちは!」と笑顔で言う。目が合わない人は素通りで良いと思う。高尾山と富士山には挨拶の文化がない。多分遭難の危険が低いからだろう。

 しばしば、知ってる情報を教えてくれる人もいるが、「それは知っている」と言うと感じが悪いので知らない振りをして聞いた方が良い。すると、後で別に知らなかった情報を教えてくれる可能性もある。そういう会話をするにつけ、ああ、山の人ってゲームみたいだなぁ、って思うのだ。

※・・・挨拶をしておくと遭難した時に「あそこで挨拶をした」なんて言って貰えるのかもしれない。だから挨拶をするのかなぁ、なんて思って自分も挨拶をするようにしている。


笑えない上に意味が判らない山ジョークその3

山で知り合った松田ホル子と渡部が寝た。

松田「うふふ、あなたあたしの初登頂よ。」

渡部「え?ほんと?マジで?嬉しいなー。そうかー、僕が始めてかー。」

松田「日本人ではね。最初はエドワードよ。」

 

丹沢の塔ノ岳には鹿がいる。大抵その辺で遭うとバトルにはならず、はぐれメタルの様に逃げていく。

■動植物との遭遇がゲームっぽい

 ゲームではフィールドに出ると敵が現れる。山ではどうかというと、流石に熊はなかなか現れないが、鹿や虫はよく現れる。体長3mmくらいのダニとかもいて、刺されると熱が出たりするので侮れない。ハチ、アブ、ブヨも多い。

 ヒルも雨が降った後に行くと足にくっついて盛大に血を吸ってたりする。夏は蚊も多いのでどくけし草(ウナコーワ)は必ず持っていく必要がある。

 植物も下界では見られない珍しいものが生えている。ギンリョウソウや可愛い高山植物などとの出会いは、疲れた体をちょっとだけ楽にしてくれる。ダンジョンで見つける宝箱の様な物だ。

 

美味くて冷たい水がタダで手に入る水場はまさに回復の泉。

■水場がゲームっぽい

 水場とは、山のどこかで水が涌いている場所だ。沢の水を引いて作られた水場も多い。

 山では水は貴重だ。水場の場所は限られていて、しかも秋になると水が涸れていたりする。だから僕は必ず2.5リットルの水を持って山に入る。余ったら捨てれば良いが足りなくなると困る。

 飲み水は山小屋で500ml1本400円とかで売ってるが(富士山山頂は500円)、山小屋が閉まってる場合もあるので過信は禁物だ。山小屋が無い山も多い。

 そんな貴重な水がタダで手に入る水場はまさにオアシスであり、回復の泉だ。手持ちの水が残り少なくなると気分的に焦るが水場で補給出来ると非常に心強い。水を補給している時、僕の頭の中では「ピロリロリン♪」って回復の効果音が鳴っている。


寒すぎて凍死する山ジョークその4

先鋭登山家の女性がいよいよ子供を産むことになった。

「せ、先生!あたし、もう無理です!退却させて下さい!」

「なにを言ってるんだ。出産にベースキャンプは無いぞ!登るのみだ!」

「もう無理です、血中酸素濃度はどうですか?!」

「大丈夫、まだ行ける!ほら頭が見えてきた!」

「ああ、もうちょっとなんですね。頑張ります!ブリリリ!」

オギャー、オギャー!!

「ホラ産まれた。元気な男の子だよ。見てご覧なさい。」

女性の目の前ではまだヘソの緒がついた赤ん坊が泣いていた。

「まぁ、やっぱり私の子だけあるわ!」

「どうしてだい?」

「だって先生、産まれた時からアンザイレンしてるのよ!」

 

帰りのバスでコーラで乾杯。疲れた体にはビールよりコーラだ。

■帰り道の気分がゲームっぽい

 RPGにおいてのダンジョン攻略は、最深部の中ボスを倒してセーブポイントに帰るまで気が抜けない。HPもほとんど無くて死にそう(画面緑)な帰り道。MPも0でやくそうも持ってない状況ではうっかりスライム辺りに殺されかねない。

 山登りも似ていて、山頂に立っても下山中に転んだり道を間違えて遭難したりしたら元も子もないのだ。下山中は疲れていて集中力も無くなるので遭難しやすい。

 おまけに、登りの道では転んでも山側に倒れるだけだが、下りの道で転ぶと勢い次第では空を飛ぶことになる。だからこそ気をつけて下らなければならない。

下山路を終えて街に着いた時の安心感は、セーブポイントに着いた時の感覚に似ている。そんなところがゲームっぽい。

画面緑…ドラクエで誰か瀕死になると画面が緑色になる。ドラクエ2のロンダルキア初登頂の時は仲間が二人死んでいて、残った一人もHP一桁だった。セーブポイントに辿り着けた時には泣いた。

 

赤岳北側の鎖場。結構急です。

■レベルアップがゲームっぽい

 山登りは、どんな山でも行けばなにかしらを得る。ああ、こういう山があるのか、こういう道は歩いちゃダメなんだ、水と行動食の使い方はこうなのか、などなど、季節、山、天気によって取らなきゃならない行動が違うのでいちいち勉強になる。時には知識のある先輩達が教えてくれる。

 そうしてレベルを上げていくと、段々標高の高い山に行けるようになったり、行動時間が長くてルートが険しい山に行けるようになったりする。

初めての鎖場はドキドキものだが、慣れてくると単調な山歩きに加わるアクセントとして楽しめる。

 本格的な登攀技術を身につければ、高さ数100mの崖を短時間で登れるようになったりする。スキルの獲得とレベルアップが、なんとも判りやすくてゲームっぽいなぁと思うのだ。

鎖場…高さ10m〜20mくらいの岩場に鎖が張られていて、その鎖を頼りに崖を登ったり降りたりするところ(時には横移動もある)。三点支持を気をつければ落ちることは少ない(凍ってなければ)。

実は鎖を頼らない方が簡単な場合も多い。秩父の伊豆ヶ岳にある鎖場は初めて行くとビビる。

 

百名山の一つ、大菩薩嶺の山頂。森の中で眺望は無い。

■百名山コレクションがゲームっぽい

 個人的には関心がないので百名山であろうとなかろうと登るのだが、百名山を全部登ることを目的にして山に行く人も多い。

というか中高年登山者の会話を勝手に聞いてると、百名山をどれだけ登ったかでヒエラルキーが決まっていたりするみたいだ。それってなんか、ゲームみたいだ。

アイテムコンプリートとかカードコンプリートとか、そんなノリに似ていて大変にゲームっぽい。

百名山…深田久弥さんの著書「日本百名山」で紹介されている山のこと。日本各地に散らばっているので全部登るにはかなりのお金と時間が必要。百名山に指定されている山は人が多いので人混みを避けたい登山者は百名山を外して登ったりする。

百名山以外にも二百名山、三百名山などがあり、更に県毎に百名山が決められていたりするので、大体の山はなんらかの名山である場合が多い。

 

■これだけゲームっぽいんだからいっそ登山ゲームを作れば良いと思うんだ

 以上の様に、山登りはかなりゲームっぽい。ゲームにしたら楽しいだろうなーっていう要素が満ちあふれている。

 だったら、これはいっそゲームにしたら絶対に面白いと思うのだがどうだろうか。山登りゲームの妄想を膨らませるにつけわくわくしてきてしまう。

次のページでは、山に行った帰りに同行者と話していて盛り上がった山登りゲームについてプレゼンする。



 

 
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