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ロマンの木曜日
 
レールと車輪とモーターの夕べ

いま幕が上がる(写真は記事と関係ありません)

デイリーポータルホールへようこそ!

今日は、秋の夜長をちょっと風変わりな演奏会で過ごしていただきます。

題して「レールと車輪とモーターの夕べ」。
つまり、電車の通過音を音楽として鑑賞してみようという試みです。

さあ目を閉じて、金属が奏でる美しい旋律に耳を傾けてみましょう。

萩原 雅紀



電車の音はかっこいい

さて、今回演奏するオーケストラが舞台に登場しました。まずは開演前のお約束、チューニングです。

 

おや、チューニングしながらどこかへ走って行ってしまいました。
でもご心配なく。こういうハプニングもこの演奏会ならではのもの。

それではさっそく開演しましょう。まず1曲目は元気よく走る通勤電車の通過音です。
聴きどころは、複雑なイントロのリズムセクションとマイナー調のモーター音。それではどうぞ!

いかがでしたか?イントロの、車輪がレールの継ぎ目を叩くパーカッシブな音色は、そこらの楽器ではなかなか出せない音色ですよね。
また、4拍子で始まって、目の前に来ると3拍子に変わり、通過して行くとまた4拍子になるという複雑な変拍子の曲ですが、それを違和感なくまとめてくるのはさすがの演奏です。

小節の頭がシンコペーションしているあたりも聞き逃せません。


アグレッシブ通勤路線

 

続いての曲も通勤路線から。駅を発車する電車と、その直後に到着してくる電車のコラボレーションをお楽しみください。

前半は長調で出発という力強さと勇ましさを表現していますが、汽笛が鳴ったあとは短調に転調、フランジが悲しい叫び声を上げながら曲が終わります。愛する人を失った女性、というようなオペラの一場面が浮かんでくるようです。しかも追い討ちをかけるように全面禁煙。気を紛らわすことさえ許されない、厳しい駅の一面を垣間見ることができます。ブラボー!

次の曲もコラボもの。目の前を通勤電車と貨物列車がたて続けに通過します。音色もリズムもまったく異なる両者が織りなす絶妙なハーモニーを、ぜひ味わってみてください。

うなりを上げるモーター音と緻密に計算されたポリリズムが心地良いですね。これはもうプログレッシブと言っても過言ではないかも知れません。
いつまでも続くレールの反響音に、身も心も委ねてしまいたい・・・。

それではここで少々休憩。後半は主に貨物列車の通過音の演奏です。


通勤電車と貨物列車の並走

 

貨物列車の音もかっこいい

トイレは済まされましたか?それでは後半の開演です。

ここからは、あまり知られていない貨物列車の通過音特集です。
貨物列車は、先頭の機関車と後ろに続く貨物車とで演奏がまったく異なるところがポイントです。そのあたりを思い浮かべながら聴いてみてください。

まず後半1曲目は大迫力のタンク車から。先頭を引く機関車の荒々しさと、無秩序なようで根底にしっかりとリズムのあるタンク車のレール連打をお聴き逃しなく!

ロングトーンにドップラー効果をかけて変化をつける機関車、そして3拍子を刻みながら、ところどころで激しいレール連打とスキール音を聴かせるタンク車、熱いパッションがほとばしる、見事な連携の演奏でした。後半、徐々にテンポが上がっていくアレンジは軽快感を出すことに成功しています。

続いてはちょっと変わった曲。まずは聴いてみてください。

パンタグラフが架線を擦る音が生々しい、重量感のある機関車が通過したあとに続くのは3拍子を刻むコンテナ車。このままノリの良い曲で続くのかと思いきや、突如早い2拍子になり、まるで混沌とした阿波踊りのような激しいリズムの愉快な曲に変貌します。

貨物列車がフェードアウトしたあとに残るのは車庫に入った電車の音。最後は何かのスイッチが切り替わった音が気持ち良く響き渡ります。

1曲の中で拍子やリズムが次々に変化して行くという、非常に現代的なアプローチの曲と言えるでしょう。


ふたつと同じ曲が演奏されない貨物路線


楽しかった演奏会の時間も残りわずかとなりました。

それでは最後にスローな曲を聴いていただいてお開きにしたいと思います。

珍しく、ゆっくりなテンポのコンテナ貨物列車の演奏です。
機関車の重々しいモーター音、貨物車がレールを叩く絶妙なリズム。サスペンションの軋み音やフランジのスキール音も聴こえますので、じっくり味わってください。

今回の演奏会はいかがでしたでしょうか。楽しんでもらえましたか?

アンコールとして「貨物列車界のラデツキー行進曲」とも言える、定番の高速コンテナ列車の通過演奏でお別れしたいと思いますので、手拍子をお願いします。

それでは皆さん、次回は「新幹線と蒸気機関車の夕べ」でお会いしましょう!

さようならー!

走行音は芸術だ

昔から、電車に乗っている時に聴こえてくる走行音が4拍子、目の前を通過するときの音は3拍子なのが気になっていました。

改めて聴いてみて、これは音楽だ!と思いました。
そしてレールと車輪とモーターは楽器なのです。

ヘッドフォンを捨てよ、電車に乗ろう。

ちなみに本文の音楽用語は適当です

 
 
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