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ひらめきの月曜日
 
トゲトゲの植物を見て痛そうだと思う…etc.
熱帯植物が生い茂る植物園にて


今日のテーマは熱帯植物である。

熱帯の植物ってトゲトゲしているものがあったり
食虫植物のように虫なんかを食べてしまうこともあったりしてとても怖い。恐ろしい。できることなら近寄らないでいたい。

でも、そういうものを遠目に見ながら『痛そうだなー』と想像したり『アリだったらやだなー』とか想像するのは楽しい。

今日は高島平の植物園で思う存分怖がってきました。

食物連鎖の頂点に立つ人間、食物連鎖の最下層にある植物にビビりまくるの巻。

(text by 梅田カズヒコ



植物が怖くてしかたない人現る

まず、この場でカミングアウトしてしまうが、
僕はとにかく動植物全般が苦手だ。


超がつくダメな都会っ子の僕は、
生まれてからこのかたほとんど動植物に触れあったことがないのだ。

ありえないことだが、植物がある日反乱を起こしに来たらどうしようかと思ってしまうのだ。そんな妄想でいっぱいの僕が植物園に行くとこうなってしまうのだ。


『ああ、今日に限って植物が突然変異して、僕を襲ってきたらどうしよう…』

ダメである。とんでもなくチキンである。
今日はそんな僕の妄想に一日付き合ってほしい。

 

植物の生い茂るジャングルで道に迷ったらどうしよう…

道に迷って帰れなくなったらどうしよう…

今回は板橋区立熱帯環境植物館という場所にお邪魔したのだが、まさに熱帯環境と言う名にふさわしく、ジャングルみたいに草木が生い茂っているような道を歩いていた。左の写真、真ん中の道さえなければもうジャングルと寸分違わない。

実際にジャングルの道で迷ったら、僕みたいな人間はすぐ死んでしまうんだろうな、と思った。だってジャングルだもん。当たり前だけど電車とか地下鉄とか走ってないからきっと帰ってこれないよ。
ああ、でも、こんなジャングルに1人で迷い込んで死ぬのはやだな……。

あ! ここジャングルじゃなかった!! ただの植物館だ!
よかった! 僕、生きて帰れる!! よかったー、あぶねー。

 

絞め殺し植物! ぎゃー!!

写真真ん中の朽ちた木が周りの木に絞め殺されている!
こ、こ、こわい。ガクガクブルブル…。

『相手を締め付けながら成長』、ひえー

恐怖! 絞め殺し植物

そんな板橋のジャングルを歩いていると身の毛もよだつ説明書きが。

『絞め殺し植物』という植物は宿主の木の上で発芽して、上に枝葉を伸ばし、下に気根と呼ばれる根をはやすのだが、成長が早く、宿主の木を取り囲むように成長し、やがて宿主の木に日光や養分を不足させ、絞め殺してしまうらしい。

植物の世界にもやっぱり激しい弱肉強食があるんだな。ところでせっかく面倒を見てきた植物にゆっくりゆっくり絞め殺される宿主はどんな気分だろう。怖いなー。だって、絞め殺しだから、ゆっくりゆっくり殺されていくわけですよ。恐ろしい。しかも最初は仲良く寄り添っていて、仲間だと思っていたやつに裏切られるわけですよ。人間に例えるとこんな感じだ。

===

入社1日目
『先輩、今日から入社したシメ夫です、よろしくお願いします』
『うむ、頑張ってくれたまえ。何か分からないことがあったら遠慮なく聞くんだよ』
『若輩者ですがよろしくお願いします!』
『かわいいねー、フレッシュだねー』

入社3年目
『先輩、コピーとってもらっていいですか?』
『コピーぐらい自分でとればいいじゃないか』
『だって先輩やることなさそうじゃないですか』
『そ、そうなんだけどさ。分かったよ。コピーとってくるよ』

入社7年目
『お前、オレのおかげで会社においてやってんだぞ、わかってんのか』
『すみません…』
(社内のひそひそ声)
『あの2人さぁ、実はシメ夫さんのほうが後輩らしいよ。すっかり追い抜かれちゃってさ。でもシメ夫さんもあんなに露骨に権力振りかざす必要ないのにねぇ』

===

こわい! やっぱり怖い! 締め付け植物断固反対! 許すな締め殺し植物! NO MORE 締め殺し……。

あ、そうだった。
僕、人間だった。東京の賃貸住宅に住む人間だった。植物に締め殺されることなんてないのだ。あー、よかったー。

 

『滑ってころんで、植物に羽交い絞めにされたらどうしよう…』

こうなってくるとなんてことない植物も全部怖い

怖い怖いと思いながら歩いていると本当にすべてが怖くなってきた。

『足元がすべりやすくなっております』の看板を見て、すべって転んで熱帯植物に絡まれたらどうしようかと思う。

写真左の植物、真ん中から四方八方に伸びる葉っぱが、僕を襲ってきて羽交い絞めにされて動けなくなったらどうしよう…。

 

絞め殺し植物! ぎゃー!!

拡大図。

ここからはトゲトゲオンパレードです。

来た。恐れてきたものがついに来た。
怖くて書くのも最後に回していたけど、ついにとげとげの植物に触れることになった。


僕は植物にトゲがあること自体が怖くて怖くて仕方ない。だってそれは、『植物の物言わぬ悪意』と言えないだろうか。植物はきっと怒っているんだ。そして僕をやっつけに来たのだ。きっとそうだ。

そうやってトゲトゲを見ていると、今にも僕を襲ってきそうだ。

左の写真は確かにたいしたことのないトゲだが、ずるっと手を滑ってしまうと握っている手は血だらけになってしまう。

怖い。なんでそんなに尖っているのか。痛そうだ。


植物館は一般に広く開放されているので、トゲトゲがあったり危なっかしいものはあまりおいていないのだろう。森に行けばこういうトゲトゲの生物がいたるところにあるのだろう。

あっちもトゲ、こっちもトゲ。もうやめてくれ。僕が悪かった。


植物館には資料として様々な植物図鑑も置かれてた。図鑑でますます怖いトゲトゲの植物を見ていこうと思う。

 

オウシュウヒレアザミ
『とげ状の鋭きょ歯』がある、だって。うっかり道端で踏んでしまったら痛くて歩けなくなる→歩けなくてその場で野宿→痛いまま動けずに死んでしまうんじゃないか。ああ、怖い。
エリンギウム アルピナム
なんか身の毛もよだつような色合い。触ったらきっとかぶれるんじゃないかなぁ。ぷくーっと膨れたりして。毒とかなければいいんだけどなー。怖い。

ブラッシアロンギシマ
この黄色い花の部分は硬くて尖っているらしい。しかも、なんだかクモみたいに動き出しそうな気がしませんか? 怖いよ、ママ。
アサヒカズラ
花の先端は他所にまきつくらしい。こんなちくちくしそうなトゲトゲがよりにもよって巻きつくなんて!

 

ウツボカズラ。

拡大図。

植物界最後の悪意。食虫植物を鑑賞する

最後は食虫植物である。皆さんご存知だとは思うが、植物なのに動物を食べてしまう、という恐るべき植物だ。

古代から食物連鎖とは 植物<動物<人間 と相場は決まっている。

植物は、かわいそうだけど動物に食べられてしまう運命にあるのだ。しかし、そんな植物が、食物連鎖を飛び越え動物を逆に食してしまうのだ。これはすごいことではないか。食物連鎖の最下層からの怒りのメッセージである。僕らが思っているよりずっとすごい反抗ではないか。パンクだ。アナーキーだ。無政府主義だ。

 

写真上はお馴染みウツボカズラ。壷状になっているところに虫が落っこちたら最後。葉の底にたまっている消化酵素で溶かされてしまう。壷の中には下向きにとげが生えているものもあるという。反抗する虫はとげに絡まり、従順する虫は真綿で首を絞められるように消化酵素で、どちらも死んでしまう。食虫植物の暗い壷の中でゆっくり死を待つ気分はどういう気持ちなんだろう。

もう僕が何を言わんと知っているかはばれていると思うが、書いておこう。

『虫じゃなくてよかった』

もう何を見ても怖い

のぼらないでくださいと言われているのにのぼって落ちたらどうしよう…

取材に行って、原稿を書いてみて、僕はどうも植物に対して異常なほどの恐怖心があることは分かった。

アリじゃなくてよかった。

そんなことは分かりきったことだし、世の中の大半のシチュエーションにおいて、アリじゃなくて良かったと思う瞬間ばかりである。アリじゃなくてよかった、アブラムシじゃなくてよかった、ゴキブリじゃなくてよかった…。僕らはハッピーな人間だ。

こんなことばかり書いているんですが、お化け屋敷にでも行く感覚ですごく楽しんでいる自分も居ました。怖い怖いと言いながら。植物園って楽しいですね。


 
 
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