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フェティッシュの火曜日
 
本当に怖いカボチャちょうちんを作る


わけのわからない「ハロウィン」というものが、今年もまたやってくる。

クリスマスにしろ何にしろ、宗教や宗旨におおらかな日本人を37年私もやってきたが、これほど不可解かつしっくりこない催しは他にはない。年々と日本人の便乗ぶりもひどくなっているが、皆本当に意味わかってやっているのか。納得しているのか。

中でもあのカボチャはなんだ。怖がらせたいのかなんなのか。魔除けのために怖い顔をくりぬいて火を灯すというが、怖くないじゃないか。かわいいじゃないか。

せっかく日本でやるなら、日本の風土にあった、湿気を帯びた恐怖の表情を追求したほうがいいのではないか。問いかけだらけで恐縮だが、本当に怖いカボチャちょうちんとは何か、提案してみたい。

乙幡 啓子


怖くないどころか笑ってるぞ

まずは敵情視察、と街に繰り出すや、どこもかしこもハロウィンで浮かれている。中にはハロウィン商戦とは無関係そうな店もあるし、ハロウィングッズの横でもうクリスマス商戦の飾り付けをしている店もあるではないか。どうしてそんなに生き急ぐんだ、まあ落ち着こうじゃないか。

カボチャちょうちん(英語ではジャック・オー・ランタン)も、もちろんいたるところに置いてある。でもなんだか想像と違う。昔ハロウィンが日本に入ってきたころよりも、彼らの表情が柔和になってやがる。


皆大爆笑。
絶対、脅かしてるようには見えない。お前の仕事をしろ仕事を。

ほっほうー、とうなずき街をあとにする。敵なんていなかったではないか。いたのは、戦うことを忘れた腑抜けたカボチャたちだ。これなら勝てると確信した。

さて、家に帰りこちら側の戦略を立てよう。私が本当に恐ろしいと思う表情、それは例えば「日本画に描かれた幽霊画」だ。おどろおどろしい様をわかりやすく描いたポップなものもいいけれど、音も立てずにしのび寄り骨髄まで凍らせるような陰惨なもの、その表情こそ欲しい。

記憶と茫漠なイメージだけで「円山応挙の幽霊画、あれなら絶対怖いと思います!」と、デイリーポータルの企画会議で宣言。しかし検索の結果、実際に選んだのは・・・。


最終審査に残った幽霊。
こちらが応挙と伝えられる幽霊画ですが・・・。

応挙画と伝えられる幽霊画。足のない、この世のものとは思われないはかない立ち姿、そんな中にも恐ろしげな様子は伝わってくるが、表情は実に悲しげで穏やかだ。残念ながらカボチャには向いていない。


これもなかなかいいのだが(渓斉英泉の幽霊図)、一歩間違えるとポップになりそうな気がする。
今回のモデルは君だ(呉春・松村景文の柳下幽霊図)。<

というわけで、なんとかイメージに近いモデルが決まった。ではいよいよカボチャの登場である。

 

おかずにはならないのか!

街でカボチャを買ってきた。重いカボチャを袋につめて、電車に乗る私はまるで「ハロウィン待ちきれない人」「ハロウィン楽しみな人」である。バカ言っちゃいけません。これはサンプルだ。実験用だ。


1200円なり。「シール入れときますね」と、売り場のお姉さんにサービスされてしまった。無念。
重さを量ったらなんと約5kg!てくてく運んできちゃったよ、いまいましい。

ベランダにて解体作業。このカボチャ、5kg弱と相当中身もつまっていそうだが、調べるとどうも中はスカスカで、のこぎりなどでなく普通のナイフやカッターでいけるらしい。
どういうことだろう。でもカボチャだぞ、多少のケガは覚悟して・・・とこわごわパン切りナイフを刺したところ!


スイカかりんごか、という程度の固さ。
フタを開けたら、スッカスカ。

中身はほぼ繊維と種。実の部分は厚さ5cm程度。しかもこの実は食用ではないそうだ。

ウィキペディアによると、もともとはカボチャではなく「カブ」をくりぬいたものを使うそうだが、アメリカでは細工しやすいカボチャになったという。
繊維の部分は取り除くのが面倒だが、実のほうはさくさく削れ、削りカスはほろほろとほどけて、まるでスチロール樹脂か何かみたいだ。匂いは・・・昔、登下校のときに道端になってたような、食べられるかどうかわからない実の匂い。ちょっとだけ青臭い。


悪い匂いではない。
繊維が、マングローブの茂み並にやっかいだ。マングローブに触れたことはないが。

ザ・カボチャの種!という感じ。
いちばん、軽量スプーンがかき出し易い。

次はお楽しみ、顔を彫っていきます。なんだ楽しいのか私は。


 

 
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