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ひらめきの月曜日
 
食パンとかの“あれ”を作る会社に
食パンとかのあれ


今日の主役は右写真、“あれ”である。

皆さまも一度とならず何度もお世話になっていることだろう。

食パンを買うと袋を留めるためについてくるあれだ。あれがないと僕らの暮らしぶりはどうだろう。食パンはすぐにカピカピになってしまう。あれのおかげで僕らは今日もパンをおいしく食べられる。
僕らの朝はあれがあることによって成り立っていると言っても過言ではない。

そんな大事なあれなのに、名前すら知られていないなんてちょっと寂しいじゃないか。

今日はあれを巡る冒険に出ることにしました。

(text by 梅田カズヒコ



アレの正式名称は…

アレの名前はバッグ・クロージャーと呼ぶらしい。そんなかっこいい名前があるなんて知らなかった。ずいぶん慣れ親しんだ友人に別の名前があったと知っても腑に落ちないところがあるように、いきなり“あれ”をバッグ・クロージャーと呼ぶにはちょっと突然すぎて頭に入ってこない。

そこで、だ。

思い切ってバッグ・クロージャーこと、あれを作る会社に出向いてみることにした。いつもお世話になっているパンのあれを作る会社がどんな会社なのだろう。

現場へ

クイック・ロック・ジャパン株式会社 本社
埼玉県川口市元郷

 

会社案内をいただいた

会社のロゴがかわいい

世界中に広がるあれの組織

『パンのあれ』のここがすごい―1
世界中にひろがるあれ

クイック・ロック・ジャパン株式会社広報の上田さんというかたにお世話になり、会社を見学させていただいた。今日は僕も一日広報として、パンを留める“あれ”、そして“あれ”を作る会社のすごさをアピールすることにした。

まず手にしてたのは会社案内。実はパンのあれの出身はアメリカなのだ。あれを作る会社、実は外資系。世界中の食卓で、今日もパンがカピカピになるのを防いでいる。

パソコンを使い始めてからというもの、互換性というものを気にしながら生きているが、パンのあれは世界中どこでも同じ規格で流通している。ずっと前からユニバーサルデザインである。すげー。

 

『パンのあれ』のここがすごい―2
発明者のエピソードがすごい

そんなあれを発明したのはフロイド・パクストンという人。50年前のアメリカで、りんご農園を営む友人に簡単にりんごの袋が留められるものがほしいと相談されたことに端を発する。

50年前のアメリカでの会話(妄想)

(仮称:チャーリー)「やあ、パクストン。調子はどうだい?」
パクストン「上々だね、チャーリー」
チャーリー「ああ、そいつは良かった。ところでちょっと厄介なことがあるんだが…」
パクストン「どうした? おれとおまえは親友だ。なんでも相談してこいよ」
チャーリー「りんごがぽろぽろと袋から落ちてしまってな。袋を縛っているんだが、そうすると今度ははずすのが厄介だ。何かもっと簡単に、りんごを袋から落とさないようにする方法はないだろうか?」
パクストン「あっはっは。そいつは確かに厄介だ。こういうのはどうだろう。プラスチックの板に小さな穴をあける。それで袋をしばってみろよ。きっとうまくいくはずだ。じゃ、またな」
チャーリー「パクストン!」
パクストン「どうした?」
チャーリー「お前、天才だな」

かくしてパクストンの他愛のない思いつきは実用的な発明品として世界中に広がることになったのだ。


『パンのあれ』のここがすごい―3
流通の数がすごい

そんなアメリカ生まれのバッグ・クロージャーであるが、日本での生産は今回お邪魔している埼玉県川口市の本社の横の工場でしか行われていない。つまり、日本中どこでパンを買っても、留める“あれ”はここで生産されたものなのだ。言わば寡占である。

そんなクロージャーが年間どのぐらい作られているのか気になったので聞いてみた。なんと年間26億個も生産・消費されているのである。ものすごい流通量である。宇多田ヒカルのCDより(数千万枚?)、セブンイレブンのおにぎりより(12.5億個/年)流通している計算になる。それなのに、名前もろくに知られてないなんてかわいそうなやつだ。

バッグ・クロージャーことパンのあれがいかにすごいものであるか理解いただけたであろうか。

 

正しい使い方を実践する広報上田さん

ラベルクロージャー

会社の応接間。今までのお得意さまのラベルクロージャーがずらりと並ぶ。(写真中央が上田さん)

神奈川県警でも使われているパンのあれ

『パンのあれ』のここがすごい―4
正しい作法があるのだ

上田さん、おもむろに袋とクロージャーを取り出すと慣れた手つきで袋を留めた。

上田「実は正しいとめかたがちゃんとあるんですよ。せっかく取材に来ていただいたので、読者のかたには正しいとめかたを覚えてもらいたいですね」

応接間でとめかたを実践する上田さん。コツとしては留めるときは先に袋をしばっておき、横向きから…。えっと、うまく説明できないので、これを参考にしてください。

Kwik Lok オフィシャル(米国)

 

『パンのあれ』のここがすごい―5
ラベルクロージャーってなんだ

さて、この会社は先述の通り、日本で唯一、パンのあれを作る会社である。そして、ウラを返せばあれしか作っていない。そこで、新たな商品を、というわけで95年頃に登場したのがラベルクロージャーだ。要するに、バッグ・クロージャーに印刷物を貼り付けたものである。

クロージャーの、余白の部分に印刷物を貼り付け、販促効果をあげたり、商品のブランディングを行うことも可能なのだ。

従来はパンを留めるもの、というイメージが強かったあれだが、このところ麺類やたまご、生鮮食品などにも積極的にクロージャーが使われるようになったという。

皆さまもスーパーであれを見つけたときは、これはラベル・クロージャーって言うんだよ。って知識をひけらかしてください。

 

『パンのあれ』のここがすごい―5
さまざまな場所で使われるあれ

左の写真を見てほしい。あれに紙がついている。実はこれは神奈川県警で実際に使用されているものだそうだ。

警察で重要な証拠品を保存する際に、袋に入れクロージャーで閉じ、さらにクロージャーについている紙に袋の中の品物についての概要を書ける、というスグレモノだ。

いつものアイツ、いつものパンのあれがちょっと男前に見えた月曜の昼下がりだ。

あれにだって、ちゃんと歴史があって、人間が関わっているんだ。 

実はかなり昔から“あれ”が気になっていた。
あれは誰が作っているのか、あれのことをなぜ皆名前で呼ばないのか。

だから今回の取材はかなり楽しかったです。

デイリーポータルZではさまざまな工作品が日夜作られているが、誰も作ったことがないようなものを作っているのが共通点だ。ひょっとするといつかその中から重要な発明が生まれてくるかもしれない。どんな些細なアイデアでも、それが世界中を席巻する大発明になるかもしれない、そんな夢を与えてくれた取材でした。

そして年間26億個の偉大な名もなき(本当はあるけど)ヒット商品に親しみと敬意を込めつつ、やっぱり今後も“あれ”と呼んでいきたいと思います。


 
 
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