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ひらめきの月曜日
 
本当のイカそうめんを目指して
なぜ、そうめんなんだ。


世の中、納得のいかないことだらけだ。

原油が高騰すると、どうして納豆やカップ麺が値上がりするのか。Lサイズと書かれたはずの洋服が入らないのはなぜか。

…まぁ以上の2点は、私が納得するかしないかの問題であり因果関係がハッキリしているのだが、イカそうめんに関してだけは、やっぱりどうしても合点がいかない。

そう、今回俎上に上げるのはイカそうめんだ。試しにスーパーの鮮魚コーナーに行ってみてほしい。なんなら近所の居酒屋でもいい。あなたがそこで目にするのは、そうめんとは名ばかりの「イカの細切り」だと思う。

こんなことではイカン!と立ち上がってみた。

高瀬 克子





イカの苦悩、そうめんの怒り

私がそうめんなら「細いってことをアピールしたいのかもしれないが、とんでもねぇ話だ。勝手に人の名前を使ってもらっちゃ困るんだよ」と怒っているところだ。

だって売り物のイカそうめんって、これですよ?


これのどこがそうめんか。

そうめんが怒るのも無理はない。

イカが「函館あたりではもう少し細くしてくれてるんですがねぇ…。それに、色だって同じ白じゃないですか」とご機嫌を伺うも、そうめんの気持ちは収まらない。

「白だからって一緒にするんじゃねぇよ! おめぇの図体は見るからにうどんだろ! イカうどんだ!」


なるほど、うどんだ
イカきしめん、と言ってもいいかもしれない。

こうして、うどんを横に並べられてしまっては、イカも返す言葉がない。

イカが唇を噛みしめている。そりゃそうだろう。なにも自分から好きで「イカそうめん」を名乗ったわけではないのだ。人間の都合で「細い=そうめん」と勝手に名付けられただけに過ぎない。

たとえそれがうどんのような太さであっても、そうめんを名乗らなければいけないイカの無念。イカの屈辱。

なんだか気の毒になってきた。

高校のクラスメートに、ものすごく貫禄のある体格をした「細井」という苗字の男子がいたが、彼もことあるごとに名前と体格を比べられていて気の毒だった。しまいには「太いけど細井です」と自ら名乗るようになり、またそれが全くウケず、さらに気の毒だったものだ。

話が逸れた。イカだ。イカをなんとかしよう。


サクを買ってきました。

今回は、これを「どこに出しても恥ずかしくないイカそうめん」にしてやろうじゃないか。もうそうめんに文句は言わせまい。そしてイカの無念も晴らそうぞ。

 

使うイカが違った

と、さっそく買ってきたサクを取り出したのだが、いきなり「おや?」と思った。そういえば、北海道で食べたイカそうめんは身がこんなに厚くなかった。


全体にブニョっとしてます

私が食べたのは、もっと身が薄くて、色も透き通るようで、シャッキリしてて……と、ここまで書いて「あ」と思った。

イカの種類が違うのだ。買ってきたのはイエメンで捕れた紋甲イカだが、本場のイカそうめんで使うのはスルメイカなんですね。

いやー、おばちゃんうっかりしてた。ごめんごめん。

でも、先ほど引き合いに出したスーパーのイカそうめんも、使われていたのは紋甲イカだった。まず、そこに無理があるのかもしれない。

「ちっ、だから素人は困るんだよ。イエメンだかどこだか知らねぇけどよ、そんなに身が厚くて柔らかいイカ野郎にそうめんを名乗ってもらっちゃ、たまんねーよ!」

そうめんがまた怒り出した。


わたくし、今回ばかりは
イカの味方です。


 

 

 
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