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ちしきの金曜日
 
カラオケアート鑑賞会
昼、ネオンがないと鉄色で意外と地味だったりする。


都会だろうと地方だろうと独特の建築様式を持つ店舗というと、「パチンコ」「ラブホテル」がある。どちらも日本独自にスタートした商売であり、特に地方だとお店のデザインや装飾のインパクト勝負だったりするのも共通する。

もうひとつ日本発祥の文化で、日本中どこでもある店といえば「カラオケ」。他2つ同様、地方のロードサイドに多いという意味でも共通点がある。前二者ほどではないけれど、考えてみるとカラオケというのも独自の店舗様式や装飾を持っている。中でも、今回注目したいのは「店の中」。殺風景になりがちな廊下に妙なアートが飾られたり、装飾が加えられているものが結構多い。

ということで寒さ厳しい晩秋の暮れ、国立新美術館やサントリー美術館など新しいミュージアムが続々オープンする六本木に背を向けて、新宿歌舞伎町や中央線沿線のカラオケボックスでアート鑑賞してまいりました。

大坪ケムタ



カラオケアートとは何か?

カラオケボックスにおいて、歌うための個室を繋ぐ廊下は狭くて圧迫感のある雰囲気になりがち。それを回避して少しでもさわやかにしようとするために、絵が飾られたり、変な装飾が施された廊下が少なくない。

たとえば典型的なのがこんなお店。


受付から部屋に行こうとすると
そこの廊下には‥
こういうのとか、
こういうのとか。

飾ってある絵に共通するのが、「あまり歌とは関係ない」という感じだ。しかも、どこか古めかしい。これが大手カラオケボックスチェーンだと「サキソフォンを吹く黒人」とか「80年代風ビートパンク系ギタリスト」の壁面イラストだったりもするのだが。

何軒かカラオケボックスを回って気づくのが、絵画系カラオケアートがあるのはチェーン系ではなく、個人経営でやってるようなインディーズ系カラオケボックスに多いということ。受付にバイトの兄ちゃんじゃなくて、経営者の奥さんが出てくるような。チェーン系のように金もかけれるほどでもなく「殺風景だからなんか飾っとこうかしら」という自宅的発想。正直、その感覚は嫌いではない。親戚のおばちゃんちに行ったみたいで。


風景画三連発、なんてのも。

モンマルトルの香りがしたりしなかったり。

廊下一面に貼られた風景画三連発。どこかおフランスの香りが漂ってくるようで、その脇の部屋から聞こえるのは「わーたしさくらんぼぉー」。この折衷感こそ日本の美である。そう外国人が勘違いして日本を満喫してくれれば何より‥っていいのか、それで。

 

アートを見ればその店の歴史も見える

続いて、新宿歌舞伎町の地下にあるカラオケボックス。案内されて階段を下りると、そこは視界一面が真っ青で、まるで深海のよう。


階段降りてコレだと、いかにも深海気分。

よく見ると星座。深海じゃなくて夜空だった!

案内された部屋は3人も入ればいっぱいいっぱいの感じ。「2人でカラオケに行く」という文化のない自分には違和感あるなぁ。まぁ、寝に行くとかならいいかもしれんが。でも、この広さとさっきの廊下の装飾って、なんか気になるなぁ‥。


入ると、よく言えばペアシート。

あ、もしかして‥たぶんここは昔テレクラだったんじゃなかろうか? 個室の大きさがいかにもそれっぽいし、廊下のブラックライトによる顔が見えない程度の明るく無さもそれを匂わせるもの。

もともとカラオケボックス自体、潰れた店を再利用するパターンが多い。特にここは店の入れ替わりも早い新宿歌舞伎町、いかにもありそうな話。アートを見れば店の歴史も分かるもんだ。


そこにこんな新曲。せつない。

 

若手アーティストのパトロンだったりするのか

一方、チェーン系はそれなりにお金かけてるし、アートや装飾もそれなりにハイセンス(というか、気にならない)だったりする。だが、中にはそれなりに金をかけてはいるが‥いや、金をかけたがゆえにすごい方向に行ったものも。

たとえば新宿某カラオケボックスの階段を昇ると、その踊り場の頭上にはこんな彫像が。


階段を昇ると、うわ!

歌舞伎町に冷凍美女がいるという伝説がここに!(ありません)

ふりかえると髪を振り乱した裸女!おそらくこの店で乱痴気騒ぎを起こした上に、罰として店長のブラックマジックによって石とされた客なんだろう‥ってスターウォーズのハン・ソロじゃないんだから。

しかし、驚くのはまだ早い。さらにその上の階段を昇ると‥。


また何かモニュメント。よく見ると‥

尻、そしてみんなの顔。もうコンセプトが読めない。

表情には笑顔あり、戸惑いあり。尻は締まってます。

もうこれは何を意味してるんだろう‥「デビルマンに出てくるデーモン・ジンメンがうっかり尻を取り込んじゃった像」とか?尻がなければ「過疎の学校のクラスの卒業制作」とかも思えるのだけれど。むりやり好意的に解釈して、ですが。

歌うために各部屋に入ってしまえば廊下のデザインなどどうでもいいカラオケアート。それだけにこうした作者のオリジナリティ溢れすぎるものが生まれたりするのかもしれない。実はオーナーがアートに造詣が深くて、若手作家に「いいよ!どんどん作ってウチに飾りたまえ!」とか言ってるのかなー。

現在では世界的な文化になりつつあるカラオケ。こういう店舗デザインや装飾も今後は世界に‥進出するのかな?

店舗もすごいのあるけど、またいつか。

この辺の奇妙な統一感って何なんだろう

先に書いたように日本独自の様式を持つパチンコ、ラブホテル、カラオケ。最近そこに加わりそうなのが「マンガ喫茶」。ネットのイメージから来るサイバー!なヤツもあれば、オリジナルキャラクター押しも少なくない。

そのキャラも地方のカラオケ・ラブホテルあたりに共通するファンシーさがあるんだよなぁ。マジメに建築の勉強してる人が「地方ロードサイド遊技場意匠論」とか書いてくれないかなー(他力本願)。


 
 
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