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ひらめきの月曜日
 
古ビル探訪
古いビル


出会いは渋谷の宮益坂だった。偶然あなたに出会った僕は、しばらくそこで立ち止まってしまった。中に置き忘れてきたものがあるような気がして、僕はあなたに立ち入った。その頃にはすっかりあなたのとりこになっていた。

僕と古ビルとの出会いはそんなところだった。子どもの頃から古いビルには出会っていた気がするが、その魅力に気づいたのは最近だ。

古いビルはいい。面白い。今日は僕が所有者に頼み込んで撮影許可をいただいた都内の3つのいかしたビルを紹介したいと思う。

(text by 梅田カズヒコ



まずは古いビルの正面玄関を見ていただこう


宮益坂ビルディング

1953年(昭和28年)竣工
満54歳

1953年当時の出来事=NHK、日本テレビが日本初のテレビ本放送開始


渋谷駅から会社に向かう途中、宮益坂という坂を上る。ありがちな商業地に過ぎないが、そんな中、僕は古いビルの魅力に気づかされることになったあるビルに出会った。名前は宮益坂ビル。


 

エントランスを見たときに、僕はこのビルが気に入った。
それまで、『ビル』なんてありふれた存在すぎて気にも留めてなかった。

だからそのビルの魅力をどう表して良いのかよく分からない。
初めてロックを聴いた少年のように、僕には稲妻が落ち、全身に鳥肌が立った。(ビルだけど)

その魅力をどうにかしてこのサイトで伝えたい。そこでこうやって記事にしているが、うまく伝わるのだろうか。

もう少し奥に進んでみよう。


エレベーターホールから。階段の微妙な曲線が今の建築ではあまり見かけない

単純にノスタルジーではある。人によって懐かしい、と感じるものは千差万別であるが、誰もが一度や二度はこういった古い建物にお世話になったに違いない。でも、古ビルの魅力を単なるノスタルジーで片付けてほしくない。例えばこういったものが、古いビルには付いていることが多い。


郵便差入口

これは各階についている『郵便ポスト』である。今でこそたいていの用事は電子メールで済むようになったが、建設当時はきっと手紙のやり取りが今より頻繁にあったに違いない。現在、インターネットがライフラインの1つであるように、当時は郵便が重要なライフラインだったのだ。

古いビルになじみがない人には郵便局員が各階を回るなんて大変だろう、と思うかもしれない。ところが集荷は一箇所で良い。なぜならここに投函された郵便物は、ビル内の筒を抜け、一階に落ちるからだ。


一階エレベーター前

郵便物はこのように筒を抜けて落ちてくる。極めて原始的な装置ではある。ただ、郵便物が各階をすり抜けて一箇所に集まる様子にどことなくロマンを感じるのは僕だけだろうか。

少し不安になってきたので分かりやすい魅力も紹介しておこう。


最上階から螺旋階段をのぞく。高所恐怖症の人は注意

これは最上階の階段の踊り場から下を見つめた様子である。カメラでは一階までは写せないが、肉眼では一階を歩いている人も確認できる。バリアフリーじゃないし、さして便利でもない。住んでしまえばそんなところかもしれないが、そういうことではなく、ただただこうやって下を覗き込むのが楽しいのだ。今のビルはこうやって下を覗き込むことはできない。古いビルならではの魅力である。


美術の時間に習った消失点が感じられる長い廊下。

戦後すぐに古い建物はまた、廊下が一直線に長い、という特徴がある。

今のビルは曲がり角が多かったり、行き止まりが多かったりするが、プライバシーを重視したいのだろうか。


エレベーターの乗り心地が独特で良い。到着するときの、『ガコン』っていう感じが味わい深い
そんなエレベーターには注意書き。こういった、注意書きの独特のフォントを見るのも古ビル探訪の楽しみのひとつだ。

 

ビルのオーナーに話を聞いた

ビルは私有地なので、許可無く撮影することは許されない。そこで撮影許可をいただくべくオーナーに話をしたら、このビルの歴史や完成当時の様子を教えてくれた。

・完成当時は日本初の高層不燃化店舗併用アパートだった

『不燃化』とはつまり、ビル全体が燃えない作りになっている、ということだ。ビルがまだ燃えるとか、燃えないとかの次元で語られていた頃の話である。11階建ての建物は、当時渋谷はおろか日本中探してもここにしかなかったそうだ。

・完成当時はエレベーターホールに、エレベーターガールが居た

朝8時半から夕6時半まで手動で動いていたエレベーター。運転するのはエレガさんだ。『エレガ』という言葉も死語になりつつあるが、当時最先端の設備が備え付けられていたこのビルには、利用者向けに案内する人が必要だったわけだ。エレベーターに乗ったことのない人が戸惑わないように代わりに運転する人が。50年ってそんなに昔のことなのか。今では想像もつかない。


 

 
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